【スペックから読み解くバイク基礎知識】「総排気量と内径×行程からエンジン特性を読む」

掲載日:2023年08月02日 購入基礎知識バイク購入基礎知識    

取材・文/伊井 覚

【スペックから読み解くバイク基礎知識】「総排気量と内径×行程からエンジン特性を読む」 main画像

バイクを選ぶときにスペックを見ただけである程度そのバイクの性能や乗り味などが想像できるように、バイクに関する基礎知識を身につけていこうという本企画。連載第二回目となる今回は、エンジンの排気量と内径×行程について掘り下げて考えていきます。

【この記事の目次】
●排気量とは?
●内径×行程でエンジン特性がわかる

排気量はシリンダーサイズの合計

バイクのエンジンの大きさを示す排気量は50ccから1000ccを超えるものまであります。所有する免許によって乗ることができるバイクの排気量が決まってくるため、排気量ありきで購入するバイクを選ぶという人も多いでしょう。

基本的には排気量が大きいほどエンジンパワーは高くなりますが、その前にエンジンには4ストロークと2ストローク、2種類の形式があることを説明しましょう。4ストロークは「吸気→圧縮→爆発→排気」という4つの行程(ストローク)を1サイクルとするエンジンで、パワーをタイヤに伝えるためにピストンが2回上下運動を行います。ところが、2ストロークは「吸気・圧縮→爆発・排気」の2段階を1サイクルとするエンジンで、1度の爆発に必要なピストンの上下運動は1回のみ、つまり同じ回転数であれば4ストロークよりも単純に2倍パワーが出る構造になっているのです。ならば4ストロークよりも2ストロークの方が優れているのか、というと、話はそう単純ではありません。2ストロークはガソリンにオイルを混ぜて燃やすためマフラーから白煙が出てしまい、燃費効率も悪く、排気音も4ストロークに比べて大きくなってしまいます。

2ストロークは4ストロークに比べて排気ガスを多く排出するため、1998年から始まった二輪車の排気ガス規制に対応できず減少の一途を辿っており、現在新車で購入できるバイクはほぼ全てが4ストローク車となっています。ただし今でもオフロードレースで使用するバイクの中には2ストロークの新車が生産・販売されており、一部はナンバーを取得して公道を走ることもできます。また、排気ガス規制以前に生産された2ストローク車は今でも稼働していますし、中古市場にも多数出回っています。

さて、話を排気量に戻します。

この記事の冒頭で、排気量をエンジンの大きさと表現しましたが、実はこれは正確ではありません。より詳しく言うと、排気量はシリンダーの体積の合計です。つまり「シリンダーの体積×シリンダーの数」で導くことができます。

【スペックから読み解くバイク基礎知識】「総排気量と内径×行程からエンジン特性を読む」 01画像

シリンダーとは、空気とガソリンを取り込み圧縮して爆発させる、エンジンの核となる部分です。スペック表では「内径×行程(ボア×ストローク)」という項目がシリンダーのサイズを表しています。また、エンジン種類のところに単気筒、2気筒、4気筒といった表記があると思いますが、これがシリンダーの数を表しており、単気筒はシリンダーが1つ、2気筒は2つ、4気筒は4つあることを示しています。それほど多くはありませんが、3気筒や6気筒のバイクも存在します。

【スペックから読み解くバイク基礎知識】「総排気量と内径×行程からエンジン特性を読む」 02画像

【スペックから読み解くバイク基礎知識】「総排気量と内径×行程からエンジン特性を読む」 03画像

例えばカワサキの最新モデルNinja ZX-4R SEのエンジンを見てみましょう。スペックを見ると水冷4ストローク並列4気筒399ccで内径×行程は57.0mm×39.1mmとなっています。シリンダーは筒状をしており、内径はその筒の直径を、行程はその筒の中をピストンが移動する距離を表しています。つまり筒の体積は、
半径(内径÷2)×半径(内径÷2)×3.14(円周率)×ピストンの移動距離(行程)
で求めることができます。

実際にNinja ZX-4R SEの内径と行程の値を上の式に代入して計算すると……
99,723.1815
になります。これが1気筒あたりの排気量です。そしてNinja ZX-4R SEは4気筒なので、総排気量は4倍になり、
99,723.1815×4=398,892.726≒399cc
となるわけです。

なお、日本の免許制度では400cc以上になってしまうと大型免許が必要ですから、ギリギリ400cc未満の399ccになるように調整している、というわけですね。

内径×行程でエンジン特性がわかる

また、シリンダーの形状によってそのエンジンが持つ出力特性が変わってきます。内径が行程よりも大きいシリンダーを持つエンジンをショートストロークと呼び、反対に内径よりも行程が長いシリンダーを持つエンジンをロングストロークと呼びます。また、内径と行程が同じ大きさの場合はスクエアストロークとなります。

【スペックから読み解くバイク基礎知識】「総排気量と内径×行程からエンジン特性を読む」 04画像

一概には言い切れませんが、ショートストローク型のエンジンは回転数が上がりやすく、最高出力(馬力)も大きくなる傾向にあります。ただし低回転時のトルクが薄くなりがちで、スタート時や、高いギヤのままゆっくり走ったりする時にエンストしやすくなります。また、ハイパワーな分、燃費も悪化する傾向にあります。代表的な車種としては先にも挙げたNinja ZX-4R SEや、CBR1000RR-R FIREBLADE、KATANAなど、スポーツタイプのバイクに多く採用されています。

反対にロングストロークのエンジンは回転数が上がりにくく、最高出力も抑え気味、最高速度よりも低回転時のトルクを楽しむ特性であることが多いと言えるでしょう。ショートストロークに比べて燃費はよくなる傾向にあります。代表的な車種としてはGB350やW800などストリートモデルが多いです。ただし、実際にはロングストロークのエンジンはあまり作られておらず、ロングとショートの中間となるスクエアストロークが使われることが多いです。

このように、スペックに記載されているエンジンの情報から、ある程度そのバイクの乗り味を想像することができます。しかし、各メーカーは吸排気系の構造やギヤレシオなどを工夫することで上記のデメリットを克服し、スペックだけでは判断できないような乗り味のニューモデルを開発しています。気になる車種が見つかったらまず、バイクブロスに掲載されている車種別インプレッションをご一読ください。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索