掲載日:2014年06月06日 絶版原付
文/櫻井 伸樹
刀、ガンマ、GSX-R、ハヤブサなどこれまで独創的な名車を数多く生んできたスズキ。しかしその一方でチョイノリ、SW-1、RE-5、B-KINGのような大衆には受け入れられず「迷車」と呼ばれつつも、一部のコアなファンからは熱烈な支持を得るバイクが多いのも事実。
ご紹介するこのギャグも、まさにそんな不人気ながらも一部のファン層を熱狂させた原付だ。
ギャグは1986年に発売された原付レジャーバイク。50の原付としては初のフルカウルを装備したミニレーサーレプリカといったルックスが特徴だ。
車体は高剛性ダブルバックボーンフレームをベースに、シングルダンパーサスペンション、フロントシングルディスクブレーキ、クリップオンハンドルなど、小さなボディの中にけっこう豪華なパーツがおごられていた。
しかしエンジンは2スト全盛にもかかわらず「バーディ」の4ストを流用。車体に剛性感がある一方で、5.2馬力を7000回転で発生する非力なエンジンはけっして「よく走る」とは言えず、スポーツするよりはのんびりテケテケ走るのを楽しむといった風情だった。
さらにスズキとしては新しいユーザー層を取り込むためにパロディ的な販売方法を取り入れ「遊びゴコロをフルカウル」というキャッチコピーを元に、カタログにはキングコングからバニーガール、ドラキュラ、恐竜、ゾンビ、パイロットなどさまざまなキャラクターを登場させるという、おふざけ感満載の手法をつかった。
カラーリングもそんなイメージを狙ったのかGSX-R風の「レプリカ」、米軍機風の「バトルプレーン」、赤地に白文字のロゴをあしらった「ポップアート」、淡いピンクで全身統一した「ピンクス」とパロディ感ある4色のボディカラーを用意。
この手法やネーミングが受けなかったのかは定かではないが販売台数はなかなか伸びず、在庫が残った店舗では18万3000円だった販売価格を最終的には半額近くまで下げ、たたき売りしていたという。
しかし、このミニレプリカというカテゴリーの存在にホンダやヤマハが着目しNSR50やYSR50が生まれるきっかけにもなった。そしてそれらは後にしっかりと名車に育つことになる。
ギャグには当時のGSX-R750をそまま縮小したようなチョロQ的なかっこよさとオモチャ的な楽しさがあっただっただけに、マーケティングやネーミングをうまく行なえばもっと台数は伸びたのではないかと思われる。
このバイクはバブルな時代のスズキがまさにギャグで作ったような、時代を象徴する迷絶版原付といえるだろう。
全長×全幅×全高 | 1540×610×870mm |
軸距 | 1080mm |
最低地上高 | 115mm |
車両重量 | 70kg |
乗車定員 | 1人 |
最小回転半径 | 2.5m |
総排気量 | 49cc |
内径×行程 | 39.0×41.8mm |
圧縮比 | 10.3 |
点火方式 | CDI式 |
最高出力 | 5.2PS/7000rpm |
最大トルク | 0.57kgm/6000rpm |
潤滑方式 | 圧送飛沫式 |
クラッチ形式 | 湿式・多板・コイルスプリング式 |
トランスミッション | 常時噛合式4段リターン |
燃料タンク容量 | 7.0リットル |
エンジンオイル容量 | 0.8リットル |
Fタイヤサイズ | 3.50-10-2PR |
Rタイヤサイズ | 3.50-10-2PR |
価格 | 18万3,000円(1986) |
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