掲載日:2022年11月09日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
COSWHEEL MIRAI S
「COSWHEEL MIRAI」シリーズは次世代型商品を展開する株式会社Acalieと、共同運営しているMIRAIT JAPAN株式会社がリリースする電動バイクで、クラウドファンディングサイトMakuakeの電動バイク部門で応援金額1位に輝いたという次世代型の電動モビリティだ。1,000WモーターにABSシステムを搭載した原付二種「COSWHEEL MIRAI」と、500Wモーター搭載の原付一種「COSWHEEL MIRAI S」の2モデルを展開するが、今回は原付一種である「COSWHEEL MIRAI S」に試乗した(2機種の違いはABSの有無とモーターの出力のみ)。
その外観は一目見れば忘れないほど個性的だ。フラットなハンドルバーに円柱状の太いメインフレーム(内部にはバッテリーが収納されている)、太めのタイヤに別体式のマッドガードを装備するなど、まるでファットバイクのようでもあり、ユニークでスタイリッシュなものとなっている。車体カラーも今回試乗したマットブラックのほか、迷彩ネイビーやホワイト、グレーなどオシャレなラインナップが揃っている。
COSWHEEL MIRAI Sはペダルが付いているため、3通りの乗り方ができるのが特徴だ。一つ目は電動バイクモードで、スロットルをひねるだけでモーターの力で走ることが可能。二つ目はハイブリッドモードで、電動のパワーユニットとペダルを両方利用する乗り方。坂道などでパワー不足を感じた際には、足で漕ぐことで登坂力を補うことができる。三つ目は自転車モードで、モーターを回さずペダルを漕ぐ力のみで走るモードだ。シマノ製の7段変速ギアを搭載しており、自転車としての走行性能も考慮した造りとなっている。いずれのモードにおいても原付一種扱いとなるため、ナンバープレートの装着や自賠責保険への加入、免許証の携帯、ヘルメットの着用などが義務付けられるが、万一バッテリーが切れても自力で移動できるのは大きなメリットとなるだろう。
その他の装備、機能面も充実している。前後にサスペンションを備えているほか、標準装備の大容量48V/20Ahバッテリーでは最長航続距離約50~60kmを実現(オプションの27.5Ahバッテリーを使えば約70~80km)。灯火類は全てLEDで、多機能メーターは速度のほかバッテリーの状態や様々な情報を表示させることが可能。メーター脇にはUSB Type-Aの端子を搭載し、スマホの充電なども可能となっている。
COSWHEEL MIRAI Sはスマートキーを採用しており、メイン電源のオンオフは、鍵がわりのNFCタグをハンドルに設けられたセンサー部にタッチするだけ。その後メーターにある電源ボタンを押すことで走行スタンバイ状態になる。車両重量は約35kgとエンジンを積んだ普通の原付バイクよりも大幅に軽く、押し引きなど取り回しも楽に行える。車体はコンパクトでシート高は770mmと低めなこともあり、見た目はバイクというより自転車に近い感覚だ。
走行モードにあたる「パワーランク」は4段階あって、0は自転車モード、1は約25km/h、2は36km/h、3は約49km/h(以上全てカタログ上のスペック値)となっている。まずはパワーランクを1にセットしてスロットルをひねってみると、かなり力強く、しかもスムーズにグッと車体が前に押し出された。上限スピードは電動アシスト自転車とほぼ同じだが、自分でペダルを漕がずに走れる分、とても楽だ。続いて一気にパワーモードを3に上げてみた。押し出されるような力強い加速感はモード1と同じだが、スピードに伸びがあり、原付一種の制限速度である30km/hまではあっという間に到達する。エンジンの原付と違い、スロットルを開けてからスピードが乗るまでのタイムラグがほとんどなく、ロケットスタート気味にスパッと加速していくのは、乗っていてとても気持ちがいい。エンジン音がせず風の音だけが聞こえる走りも新鮮だ。
フレームは剛性や強度に優れたA6061アルミ合金を使用、20×4-1/4インチの極太のタイヤとも相まって、直進での安定性は非常に高く、安心感がある。乗り心地は硬めでシートの高さが固定式なのは少々不満なポイントだが、前後サスペンションと油圧式のディスクブレーキを採用しているため、緩やかに一定の弧を描くようなコーナーリングでは普通のバイクと遜色のない走りが楽しめる。その一方でハンドルバーが短めなためか、ステアリング操作に対する反応がクイックすぎる感もあり、曲がり角などのタイトコーナーでは少々慣れが必要な場面もあった。
上り坂での走りは、歩いても息が切れない程度のなだらかな勾配なら少々スピードは落ちるがある程度の速度をキープして普通に走れる印象だ。スマホアプリでの簡易測定だと7度ぐらいの坂道では、20km/h弱ぐらいまで徐々にスピードが落ちるものの、何とか電気の力だけで走ってくれる。しかしこのCOSWHEEL MIRAI Sにはペダルが付いているため、スピードが落ちてきたなと感じたら、足で漕いで人力アシストを加えてやれば、きつめの坂道でも意外とスイスイ走ることが可能だ。電気の力を使わずペダルだけの自転車モードではタイヤが太いこともあって、普通の自転車より漕ぐのが重いイメージだが、うまく変速機を使って走れば健康維持にもちょうどいいかもしれない。
キックスケータータイプと違い、タイヤ径も大きくサスペンションも備えていることで安定感のある走りを実現したCOSWHEEL MIRAI Sは、通勤通学で家から駅までの足として原付を使っている人なら十分その代替として考えられるマシンだ。ちょっとした近所のお散歩ツーリングにも使えるぐらいの実用性と航続距離も備えているので、休日のレジャー用途としてもアリだと思う。制限速度が気になるなら走行性能をグレードアップした原付二種扱いのCOSWHEEL MIRAIをチョイスするという選択肢もある。車名のとおり、未来をいち早く感じたい人にはおすすめの1台といえるだろう。
ヘッドライトはリング状のポジションライトを備えたLEDタイプ。写真はハイビーム状態だがロービームでも良く目立ち、被視認性は高い。ウインカーもLEDだ。
リング状のポジションライトはオレンジ色にもなり、霧の中などより目立たせたい場合には有効だ。
スマートキーとなるNFCタグ。予備も含めて複数枚が同梱される。青はマスターキーで、通常は赤を使用する。ハンドル右のセンサーにタッチすることでメイン電源のオン/オフが可能。
メーターはフル液晶の多機能ディスプレイとなっている。速度のほかパワーランクやバッテリー残量、平均速度など多彩な情報が表示できる。
ハンドル左側のスイッチボックスは通常のバイクと同様だ。その右側にはメーター電源のオン/オフやパワーランクの切り替え、ディスプレイ表示内容の変更などを行う操作ユニットが装着されている。
ハンドル右側のスイッチボックスにはライトスイッチとパーキングロックボタンがある。その左側にあるのは自転車モードの時のみに使用できるギアの変速レバーだ。
リアサスペンションはリンク式を採用。実際試してはいないが、スプリングの調整機構を備えている様子だ。
サイドスタンドは太めでがっちりしたものを装備。ステップ代わりにもなるペダルは自転車用のものだ。
シートというよりサドルと呼んだ方がしっくりする。座面は硬めでフレームに直接固定されており、高さの調整はできない。
極太のフレーム内部には大きなバッテリーが収納されている。標準装備の大容量20Ahタイプのほか、オプションで27.5Ahの超大容量バッテリーが用意されている。
充電は家庭用のAC100Vコンセントにつなぐだけと簡単。車体をバッテリーに装着したままのほか、バッテリーを取り外して屋内に持ち込んで充電もできる。満充電までは約6時間。
ディスプレイの脇にはUSBの出力端子を備える。スマホやナビなどの使用、充電に便利だ。
テールランプはウインカーと一体で、ナンバープレートとともに別体式のマッドガードに装着される。
フロントの油圧ディスクブレーキはコントローラブルで制動力も十分。タイヤサイズは20×4-1/4 インチのファットバイク用だ。
リアには自転車モード用にシマノ製の7段変速ギアを備える。油圧ディスクと武骨なスイングアーム、マッドガードなど、ヘビーデューティーな雰囲気が格好いい。
テスターの身長は170cmで足は短め。COSWHEEL MIRAI Sのシート高は770mmで、両足、片足ともにかかとまでしっかりと接地する。重量も軽いので不安は全くない。
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