【ヤマハ Xフォース 試乗記 】万能ラブラブモビリティ

掲載日:2022年10月20日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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YAMAHA X FORCE

今夏ヤマハのミドルクラススクーター陣に、新たに加わったニューカマー「Xフォース」。VVA(可変バルブ機構)を備えた155cc単気筒エンジンをコンパクトなシャシーに組み込んだシティランナーだ。

原付二種クラスのシャシーに
155ccエンジンを搭載する

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日本の免許区分にジャストミートしていないこともあり、以前は珍しい存在だった排気量150~200ccのバイクは、いつしか一般的に受け入れられることとなった。中でもヤマハはマジェスティSやNMAX155、トリシティ155などこのクラスのスクーターに注力し、オピニオンリーダー的な存在として業界を牽引してきた。今期、そのグループのさらなる拡充を図るためX FORCE(Xフォース)が登場した。

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フレームには125ccスクーター界の老舗看板モデルであるシグナス125系最新モデル、シグナス グリファスの物をベースとしており、高燃費かつ環境性能を高めたブルーコアテクノロジーを用いた155ccシングルエンジンを搭載。コンパクトかつ余裕のある走りを楽しむことができるパッケージとなっているのだ。

ヤマハ Xフォース 特徴

”イマフウ”を上手く取り入れた
スマートなスタイリングが好印象

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Xフォースの生産国は台湾であり、実は日本よりも先駆けてフォース2.0という名称で販売開始されていた。台湾に訪れたことがある方ならご存知だと思うが、同国はコンパクトスクーター大国であり一つの生活文化としてしっかりと根付いている。

私の実体験から話をすると90年代初頭に訪れた際には、すでにスクーターが溢れかえっていたが、5、6人乗りが多くみられた上、道路整備もまだまだの状態だった。2000年代に入ると国民のスクーター熱は冷めぬまま、法整備や道路の舗装状態が進んでいった。そして昨今ではそれらが完璧に成熟し、世界のスクータートレンドを牽引するまでに発展を遂げたという印象がある。

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そんな台湾で作られているXフォースは、スポーツシティコミューター的な位置づけといえよう。メーター周りの仕上げ加工は乗用車のインパネを連想させるトレンドを取り入れたものとされていたり、ちょっとした買い物を置くなど、普段使いで嬉しいフラットステップボードなどを取り入れ、スクーターに求められる要素が随所にみられるのも好印象だ。

ただ気になるのは、ヤマハのラインナップには、すでにNMAX155やマジェスティS、トリシティ155などの同クラスモデルが存在する。トリシティ155はスリーホイーラーなので購買層は多少ズレるかと思えるが、その他は重なってくる部分もあるだろう。そこで今回は、最新モデルXフォースならではの長所を探っていきたいと考えている。

ヤマハ Xフォース 試乗インプレッション

通勤通学エクスプレスとしてだけでなく、
パートナーとのデートマシンとしても◎

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名称からして初出のブランニューモデルであるXフォース。低く構えたヘッドライトやその両脇に備わるウインカーのデザインなど、スポーティな印象を受けるスタイリングに一目惚れした。

センタースタンドをおろして車両に跨ってみると、まずはかなりシートが高いことに気づかされる。スペックシートを見てもNMAXが765mm、マジェスティSが795mmなのに対し、Xフォースは815mmとその差が大きいことが分かる。ただし車重が軽いために足つき性が心配だとしても不安はないだろう。

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ブレーキレバーを握りスタータースイッチを押すと、標準装備となっているSMG(スマートモータージェネレーター)のおかげですぐさまエンジンが目を覚ます。スロットルを開けて発進する。プーリーのミートタイミングが絶妙で、ラグ無く思った通りに車体は前へと進みだす。最高出力は15馬力とされており、同系エンジンを採用するマジェスティSと同数値ではあるが、それよりも俊敏な加速感を得られる印象だ。スロットルをワイドオープンすると、約6000回転あたりから作動する設定となっているVVAのランプがメーター内で点灯し、一気に時速80キロ付近まで引っ張ってくれる。

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シグナス グリファスをベースとするフレームを採用していることもあり、ホイールベースが短く非常に小回りが利く。よって交通量の多い渋滞路や狭い路地など車体の大きなモデルではストレスに感じるシーンでも、まったく苦になることが無い。実際にテスト期間中は、知らない道へとどんどん踏み入って走るような事を毎日のように楽しんだ。このような使い方こそ、真のシティアドベンチャーだと思う。

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エンジンの吹け上がりだけでなくハンドリングも秀逸であり、ワインディングなどでスポーティな走りをしてもしっかりとラインを捉えることができる。高速道路も使用してみたが、頑張るような走り方をせずとも時速100キロはすんなり出るし、13インチタイヤなので車格から想像していた以上に安定感もあった。これならば高速道路での走行も怖くはない。

一方で路面状態が悪いところではフロントフォークのバタつき感が少々気になったことや、ブレーキのタッチや作動は申し分ないがレバーの角度が私の好みの位置よりも開いていると感じる場面もあった。

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ただ総じて、良くできたスクーターであることには間違いない。フラットなステップボードはコンビニフックとセットでとても便利に使えるものであるし、通勤通学快速としてのポテンシャルも申し分ない。

さらに今回テストでXフォースの魅力に思えたのはタンデム時の性能だった。飛び出し式のタンデムステップは、車幅こそ多少気を付けなくてはならないが、パッセンジャーは足をしっかりとホールドできる上に、シートの座面がフラットであるためにライダーとの密着度も高い。これらはパッセンジャーが安心して後ろに乗ることができる大きなメリットとなっている。走行面に関しても、タンデムなりの走らせ方をすれば性能的には十分であり、パートナーなどとデートツーリングを楽しむことができる。

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車両本体価格は39万6000円で、これはNMAXよりも2万7500円、マジェスティSよりも1万6500円高い。どのモデルも良い出来なので思案のしどころではあるが、少なくともXフォースは、選択に失敗したと思うことはないほど、魅力的で使い勝手がよく、完成度の高い一台となっている。

ヤマハ Xフォース 詳細写真

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ロードスポーツモデルを連想させるデュアルヘッドライトを採用した精悍なフロントマスク。左右分割パネルとすることやメーターバイザーを兼ねる別体式スクリーンを装備するなど高級感が持たされている。

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軽快なハンドリングと安定感を両立するために、やや大径といえる13インチタイヤを採用。ホイールが隠れるほど大きいφ267mmのブレーキディスクもインパクトがある。標準装備のABSは前後独立式で、作動時はレバーに振動が伝わる。

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新世代ブルーコアテクノロジーを採用した155ccSOHC4バルブ水冷シングルエンジンを搭載。6000回転付近で吸気カムをロー/ハイに切り替えるVVA(可変バルブ機構)を採用している。エンジン音は静かだ。

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スクエアなディスプレイパネルは、各インフォメーションが伝わってきやすい印象を受けた。周囲には質感の高い仕上げ加工が施されたパネルが採用されている。「Yamaha Motorcycle Connect」アプリとの連動も可能。

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いたずら防止シャッター付きのイグニッションを採用。シートオープンが、キーオン/オフ、ロック時で可能なのは、日常的に使っていてとても便利に思えた。その脇にはUSB給電ソケットも用意されている。

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フラットなステップボードは乗り降りの際や、ちょっとした荷物を載せる際など非常に便利だ。ただ前方のフロントボードが直角に立っているため、足を投げ出すという姿勢は不向きと言える。

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シートは815mmと高め。ただ前方に向かって結構な角度でシェイプされていることや、車重が軽いこともあり、取り扱いを不安に思うことはないだろう。パッセンジャーパートまでフラットなため、自由度が高くタンデムライドも具合が良い。

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タンデムステップは飛び出し式を採用。ステップバーの形状や取り付け位置も良く考えられており、パッセンジャーは体を支持しやすい。

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遠心クラッチとVベルト式無段変速という、いたってオーソドックスな駆動方式ではあるが、セッティングが絶妙で、スロットル操作にしっかりと応えてくれることに好印象を持った。トラクションコントロールも標準装備されている。

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面発光LEDを採用したテールランプと、スモーククリアのカバーを備えたリアウインカーで、引き締まったテールセクションを演出している。シート後方のグラブバーも握りやすい位置にセットされている。

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ややバタつき感が気になったフロントフォークとは異なり、リアのツインショックは、しっかりと路面からの衝撃を吸収し、リアタイヤを押し付けてくれるセッティングとなっていた。タンデム時もしっかりとした剛性を得られた。

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フロントボードの中央部にはコンビニフックを、右側には500mlペットボトルサイズのポケットを備えている。日常的な道具として付き合える仕様と言える。

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フロントボード左側には燃料給油口が備わっている。ガソリンスタンドで車両に跨ったまま操作できるのは大きなメリットだった。なお、タンク容量は6.1リットルとなっている。

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ハンドルバーはフラットで、気持ち低めにセットされている。これにより車体を振り回すような乗り方が楽しめた。スイッチボックスはオーソドックスで操作感が良く、樽型のグリップは疲れにくい。

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シート下のトラックボックスは約23.2リットルの大容量。一般的な大きさ、形状のヘルメットなら収納可能。テスト期間中は、実際にフルフェイスヘルメットを格納していた。

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