掲載日:2022年12月05日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
SUZUKI AVENIS 125
アヴェニス125の国内導入発表は2022年10月に、アドレス125と同時に行われた。この2台はともにインドで生産されるグローバルモデルで、エンジンやフレームなど基本となるプラットフォームは共通であり、兄弟車と言ってもいい。しかし、アドレス125は曲線が多く取り入れられたネオレトロ路線、対するアヴェニス125は直線的なデザインでスポーティなタイプと、明確なキャラクター分けがされている。
アヴェニス125の外観は、シェイプされ、エッジの効いたシャープなものだ。縦目2灯のLEDヘッドランプと相まって、ロボットのような近未来感もある。特に今回試乗したマットブラックはカッコ良さを超え、凄みすら感じさせる迫力がある。同時期に発売されたアドレス125が丸く柔らかなデザインとなったため、こちらの方がかつての通勤快速らしさを引き継いでいるのかもしれない。
装備で目を引くのがメーターだ。大きめのフル液晶タイプで速度表示が大きく、時刻やツイントリップ、平均燃費などを表示できる多機能でありながら、各項目が読み取りやすい。ハンドルカバー内で浮いているように見えるフローティングデザインも斬新だ。ちなみにインド国内仕様にはスマホ連携機能を備えたメーターを持つグレードが存在するが、日本仕様には設定されていない。
その他のユーティリティは深めのシート下トランクやUSBソケット付きのフロントポケット、メーター下とシート前端下の2カ所に荷掛けフックを備えるなど、必要にして十分に揃っている。その分ブレーキはABSではなく前後連動コンビタイプとなっているなど、コスト面でうまくバランスを取っている印象だ。
ちょっと珍しいのが、給油口の位置だ。車体後方、リアシート後ろにある。車体左にあるキー穴に鍵を差し込んで回すと開くタイプで少々手間はかかるが、シートを開けなくても給油できるのはメリットと捉えることもできるだろう。ちなみに純正アクセサリーにはトップケース&キャリアが用意されている。装着写真がないので想像になるが、給油時を考えるとかなり高め、あるいは後方にセットされることになりそうだ。
アヴェニス125のシートは少々硬めで、背筋を伸ばし、少し前寄りに座るというヨーロピアンスクーター的なポジションがしっくりする。シート高は780mmで原付二種のスクーターとしては少々高めだが、走り出すと広い視界が確保できるので、混雑した都市部では安全性が高いし、ツーリングでは景色もより楽しめるはずだ。
124ccの空冷単気筒SEP(SUZUKI ECO PERFORMANCE)エンジンは、最高出力6.4kW(8.7PS)を発生。低速からトルクフルで、ゼロ発進からの加速感はなかなかのもの。車両重量も107kgと軽いので、とにかくキビキビと俊敏な走りが可能だ。これなら通勤通学時でもストレスは少ないはずだ。アドレス125と同エンジンながら、アヴェニス125のほうは加速重視のセッティングに振ってあるとスズキは報道向け発表会で述べていたが、それもうなづけるすばしっこさだ。公式に通勤快速という言葉は使っていないものの、かつてのアドレスの称号を継承するのはこのアヴェニス125のほうかもしれない。
もう一つ素晴らしい仕上がりだなと感じたのがサスペンションだ。道路工事の跡やマンホールの盛り上がりなど、路面の段差を乗り越える際の衝撃が想像していたよりかなり少ないのだ。一般的に125ccクラスのスクーターでは、標準装着のサスペンションだと路面からのショックを吸収しきれないシーンがありがちで、多かれ少なかれバタつきを感じることが多いが、アヴェニス125は経験上「この段差はガツンとくるかな?」という路面でも、衝撃を軽くいなして難なく走り抜けてくれる事が多かった。そのため、ある程度スピードが乗る荒れ気味のコーナーでも不安なく進入することができ、コーナリング中も特にリアサスがよく動き、粘ってくれるのがきちんと伝わってくるので安心感がある。このしなやかな足周り、海外では住宅地などに車両を減速させるためのカマボコ状の段差が設けられることが多く、そこでの乗り心地や走破性を考慮したものだとか。足周りの良さは疲れにくさにも通じるので、ツーリングに使った際などにもありがたさを実感するはずだ。
ブレーキはABS非搭載で、左ブレーキを握ると前後のブレーキがかかるコンバイドブレーキを採用している。右レバーを握ってフロントブレーキだけをかけると、やんわりと優しく利く感じで、左レバーを握るとグッと制動力が増し、安定感も高まる。左右のレバーを引いた時の特性をよく知れば、さらに安全でスポーティな走りができるだろう。
クールでスタイリッシュな外観と実用性に加え、パワフルでキビキビとした走りも可能なアヴェニス125は、新たな通勤快速マシンとして人気モデルとなる可能性を秘めていると感じた。