掲載日:2022年09月09日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/伊井 覚
CAOFEN F80 STREET
カオフェンというメーカー名を初めて耳にした読者も多いと思う。それもそのはず、2021年に誕生し、2022年7月に日本代理店ができたばかりの新興メーカーだ。製造元のChongqing Huanghe Groupは中国で37年間にわたりバイク生産に携わり、2021年にカオフェンF80シリーズを開発。ヨーロッパ、アメリカ、ラテンアメリカ、オセアニア、アジア、中東、ロシアで一般発売され、一年間で15000台以上を販売している、まさに「次世代のオートバイメーカー」と言える存在なのだ。
今、最も電動バイクに求められている性能とはなんだろうか? 思うにそれは航続距離だ。特に公道走行可能なモデルは、電動バイクのためのインフラが整備されていない今の日本において、一回の充電で何km走れるのか、こそが購入の決め手になるポイントだろう。
このF80 STREETはロングレンジとスタンダードの2種類がラインナップされており、今回試乗したのはロングレンジモデル。その名の通り、大容量のバッテリーを搭載していることから、メーカーが謳う最長走行距離はなんと150km(スタンダードは100km)。でもそれは所詮メーカー発表の数字であって「実際に走ってみたらそんなに走らないんじゃないの?」とやや疑いながらテストしてみた。
するとどうだろう。今回はほぼ100%林道でのテストだったにも関わらず、32km走ってバッテリーは25%減っていた。と、いうことはつまり100%だと128km。これがパワーロスの少ないアスファルトならもっと伸びるだろうと考えると、これはそう悪い数字ではない。通勤・通学はもちろん余裕でカバーできるだろうし、100kmあればちょっとしたツーリングだって行ける。
それでは次に走行性能について触れていこう。前後ホイールサイズは19-18インチと、フルサイズに比べるとフロントが少し小さい。車両サイズもいわゆるフルサイズのオフロードバイクと比べると気持ちコンパクトなため、身長の低いライダーでも足つきに不安を覚えることはないだろう。それでいて身長173cmの僕が乗っても窮屈な感じはなく、リラックスして乗ることができた。フロントタイヤが19インチだと木の枝や小石、縁石など障害物などを越える際に苦労するのではないか? と思われるかもしれないが、そこは電動。リアが空転しづらい出力特性と車重の軽さのおかげで何事もなくクリアできる。
そう。軽さについて触れなくてはいけない。F80 STREETロングレンジは85kg(スタンダードは78kg)。ナンバーは原付2種に相当するので125cc相当と考えると、KLX125が112kgなので、やはりかなり軽い。そのおかげもあって、スピードもしっかり出る。ちょっとした登り斜面でもぐいぐい進んでいき、国道の法定速度である60km巡航は全く問題なく、余力も残していた。クローズドではテストしていないため最高速アタックはしていないが、メーカーの配布しているスペックシートによると最高速度は85km/hとなっている。
見た目でもわかる通り、車格の割に少しホイールベースが長く設計されている。マシンの全長が1950mmに対して1300mmある。そしてサスペンションが思いのほかしっかりしていて、フレームが高強度マグナリウムを溶接無しで造形したモノコックフレームを採用していることもあってか、軽いバイクによくある高速走行時のチャタリングは感じない。直進時の安定性が恐ろしく高いのだ。ではコーナリングは? と言うと、軽量のため、バイクをすっと寝かせることができ、ライン取りは自由自在だ。さらにブレーキは前後ディスクブレーキで、CBS(前後連動ブレーキシステム)を採用しているため、こちらも制動時の安定感がすごい。
また、今まで数種類の125cc相当の電動バイクに乗ってきたが、電動バイクではパワーの出方がアクセル操作と微妙に連動していないような気持ち悪い感覚を味わうことが多い。そこが食い違ってしまうと、はっきりと「電動のデメリット」を意識させられてしまい、せっかく楽しく乗っていたのに興醒めしてしまうことがあるのだ。しかし、はっきり言ってこのF80 STREETは今まで乗った電動バイクの中で、一番アクセルを開けた時の感触がリニアで、パワフルかつ出力特性が安定しているように感じた。
ロングレンジは94万8000円(スタンダードは76万8000円)と、比べてしまうと決して安くない価格設定だが、乗ってみればその価格の意味がよくわかる、ハイスペックモデルだったのだ。
当然ながらLEDを採用したヘッドライトとウインカー。ヘッドライトはハイビームとロービームの切り替えを左手スイッチボックスで行う一般的なタイプだ。
モーターの定格出力は1kW(最大8kW)、後輪トルクは260N•mとなっている。電源を入れるとメーカーロゴを含むオレンジ部分が発光し、夜の走行でも映えること間違いなし。
バッテリーは72V48Ahリチウムバッテリーを搭載(スタンダードは72V30Ah)。84V18Aの付属充電器を使って約3時間でフル充電が完了するという。
キーはスマートキーを装備。バッテリーを起動し、リモコンのボタンを押し、本体のボタンを押し、右手スイッチボックスでドライブモードに入れるという少し複雑な操作を経なければ走り出せないため、盗難やいたずら防止にも役立ちそうだ。
フレーム上部に装備されている本体の電源ボタン。なお、電源を切るときはバッテリーの電源をオフにするだけなので、ワンプッシュで完了する。
メーターには速度、バッテリー残量、走行距離が表示されている。なお、電気自動車によく見かける、ブレーキをかけることで充電する回生ブレーキ機能が標準装備されている。
フロントタイヤは19インチ。標準装備のタイヤはKENDA製のブロックタイヤだが、ブロックは低く間隔も狭いため、オンロードでも全く問題なく走ることができる。
リアタイヤは18インチ。フルサイズのトレールバイクと同じサイズだ。こちらもフロントと同じくKENDA製。スイングアームからステーが伸び、ナンバーやウインカーなどが装着されている。
ハンドルバーは純正からテーパー形状になっていて高剛性。ミラーは独特な形状の割に見易い。なお、スマホホルダーは後付けの市販品で、標準では装備されていない。
シートは柔らかく、細長い。原付2種とはいえタンデムステップがないためタンデムは不自由だが、このシート形状なら不可能ではないだろう。テールランプはシート後部に装備。
フロントサスペンションはストローク200mmの38Φ倒立フォークを採用。左にはプリロード、右にはリバウンドの調整機構が装備されている。
リアサスペンションはストローク85mmでリザーバータンク付き。一般的なオフロードモデルと比べると決して長くはないが、軽量な電動ならば問題はない。ストリートとフラット気味な林道だけなら、何も不足は感じなかった。
右手スイッチボックスには様々なボタンが並ぶ。回生ブレーキ、ニュートラル/ドライブ、エコモード/スポーツモードとなっている。なお、スポーツモードでは最高速度が変更できる。
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