掲載日:2021年03月12日 試乗インプレ・レビュー
取材・写真・文/伊井 覚
HUSQVARNA SVARTPILEN 125
先に言ってしまうと、僕はこのスヴァルトピレンというシリーズが大好きだ。特に401は上までよく回るエンジンと、それを支えるシャーシが完璧なバランスで、本当に素晴らしい。このスヴァルトピレン125はその125ccモデルということで、試乗前から期待値はかなり大きかった。原付二種免許で乗れて、価格も53万9千円と国内モデルとそう変わらない設定。保険もファミリーバイク特約が使えるため、敷居はとても低い。それでいて250や401といった兄弟モデルたちと同等の高級感溢れる仕上がりになっている。長距離ツーリング用に大型バイクを持っている人には究極のセカンドバイクに、通勤や通学で利用してたまに近距離ツーリングに使用するライダーには所有欲を満たしてくれる最高の一台になるのではないだろうか。
アップハンドルとブロックタイヤを装着しているところが、ハスクバーナのもう一つのロードモデルであるヴィットピレンとの大きな違いだ。このアップハンドルによってゆったりとしたライディングポジションで乗ることができるため、スピードを出すのが怖い入門者や、前傾姿勢がキツイ中年ライダーでもリラックスしてライディングが楽しめるだろう。
オフロードバイクに乗ったことのない人の中にはブロックタイヤに不安を覚える人がいるかもしれないが、安心してほしい。膝を擦るような寝かし方でもしない限り、オンロードでのグリップに全く支障はない。それどころか工事中の砂利道やキャンプ場の土路面などでも不安を感じることのないブロックタイヤは見た目だけでなくスヴァルトピレンの魅力の一つと言える。
また、125ccクラスにして401と同じサイズの大型ブレーキディスクを装備していたり、後輪ABSをオフにするモードを搭載していたり、スイングアームマウントのリアフェンダーだったりと、国産の同クラスモデルと比較すると圧倒的なスペックを誇っているのだ。
アップハンドルで、単気筒で、ブロックタイヤとくれば、ついついそれは低速トルクを楽しんで乗る系のバイクのように思ってしまうのだが、スヴァルトピレンは高回転まで回して乗るバイクだ。誤解を恐れずに言えば、低速トルクは完全に犠牲にしている。それはボア×ストロークが58×47.2mmというスペック上でも見て取れる。この特性は250や401と同じだ。しかも違うのは、排気量だけで、それを支えるフレーム、サスペンション、ブレーキは変わらない。
ギアをローに入れてアクセルを開けてクラッチをリリースしていく。低速がないのはわかっていたので、ちょっと大げさにアクセルを開けたのだが、すぐにメーターのてっぺんで何かが赤く点滅した。シフトアップインジケーターだ。促されるままに2速へ。またすぐに赤い点滅。3速へ。シフトアップでクラッチをリリースするたびに、ポンと前に押し出される感覚があるが、決して怖いものではなく、そこから加速に繋がるのがすこぶる気持ちいい。そのままさらに回転をあげて4速、5速。そこでふっと我に返り「おっと危ない。スピードが出すぎているかも」とメーターを見ると、一般国道の制限速度ピッタリ。そうだ。これは125ccなんだった、と思い出す。おそらく6速を使うことはほとんどないだろう。
とにかく、高回転が気持ちよくて、ついついアクセルを開けたくなってしまう。250や401と違うのは、開けた時の楽しさは同じなのに、速度だけは出すぎないので、恐怖感がないこと。さらに後続車がいないことを確認してわざと急ブレーキをかけてみると、320mmのフロントディスク+230mmのリアディスクという125クラスでは異例の大径ブレーキが、しっかりと減速してくれる。もちろん前後ABSがしっかり効いているので、ロックもしない。
もう一つ付け加えておきたいのは、サスペンションだ。特にフロント。最近の傾向なのか、フロントブレーキを握った時にガツンと効きすぎて大きくボトムするモデルが多い気がしていて、僕はそれがとても苦手なのだが、このスヴァルトピレンに装着されているWPサスペンションは、それが全くない。だから安心してフルブレーキングができるし、加速も楽しめるというわけだ。また、体重75kgの僕でもノーマルのリアサスペンションは少し硬い気がした。これはプリロード調整で解決するか、それでダメならWPのオプションで低いバネレートのスプリングがラインナップしているので、それに交換すれば解決できるだろう。
総括すると、ピンク色のナンバープレートを見るまではとても原付二種とは思えない、高級感のあるパーツで構成される車体。835mmと高いシート高ながら細身のスタイルのおかげで足つき性もよく、小柄で扱いやすいシャーシ。よく回る気持ちの良いエンジンと、それを支える高性能サスペンション&大径ブレーキ。見て美しく、乗って楽しく、さらに安全性まで折り紙つき。高速道路にこそ乗れないが、通勤・通学から200kmくらいまでの日帰りツーリング用途なら、最強のバイクと言っても過言ではないのだろうか。
ヘッドライトはLEDで、ロービームで上半分、ハイビームにすると下半分も点灯する。ウインカーもLEDで軽量化が考えられており、ハンドリングを重くするようなフロントまわりの重量感を感じられない。
メーターは液晶ディスプレイ。ニュートラルの左隣にある丸ランプがシフトアップインジケーターで、視線を下に動かさずとも視界に入ってアピールしてくる。また、ABSのモードは「ROAD」と「SUPERMOTO」の二種から選択でき、「SUPERMOTO」だとリアのABSがカットされる。
エンジンは水冷4ストローク単気筒。最高出力は11kW(15PS)/9500rpm。ボア×ストロークは58×47.2mmとショートストロークで高回転型のエンジン特性となっている。
シート高は835mmとやや高めの数値だが、跨ってみると膝のところがとてもスリムで足つき性は数値上より良く感じられる。テールランプ上部にはグラブバーも付いていて、ガレージや駐輪場内でリアを持ち上げて壁に寄せるなどの操作はとてもやりやすい。
アップハンドルもオフロードバイクほど幅広ではなく、やや絞り気味で前傾姿勢も取りやすい。テーパーハンドルバーで振動対策もされている。また、左手スイッチボックスにはパッシングスイッチも。ブレーキ・クラッチともにレバーには調整ダイヤルが付いている。
フロントサスペンションはWP APEX 43。43mmのオープンカートリッジ式でストローク長は142mm。リアサスペンションは同じくWPのモノショックで、リンクを介さず直接スイングアームに接続される。
ステップは細めでラバー付き。直立に近いライディングポジションにしてはペダルの位置が少し低めのように思える。シルバーのプレートが踵でのニーグリップを助けてくれるため膝を自由にしてもバイクをコントロールできる。
スチール製のトレリスフレームは軽量かつ剛性に優れていて、見た目の美しさもさることながら、スポークホイール、サスペンションと合わせてとても高い水準でバランスされているのがわかった。
250ではキャストホイールが採用されていたが、125は401同様にスポークホイールを採用。やはりブロックタイヤにはスポークホイールが良く似合う。
純正タイヤはピレリのSCORPION RALLY STRでタイヤサイズは前:110/70-17、後:150/60-17。わりとがっつりブロックタイヤだが、150サイズのおかげかロードでも問題なくグリップする。
個人的に最も特徴的と感じたブレーキディスクのサイズ。前320mm、後230mmは125ccクラスでは異例の大サイズ。ABSとセットで絶大な安心感を生み出し、高回転型のエンジンを心ゆくまで堪能できる。
エンジン前下部、エキパイの膨張室を保護するように付けられたガード。万が一高めの縁石や、ちょっとしたダートでフロントタイヤで弾いてしまった石が当たっても大丈夫だ。
燃料タンク容量は9.5L。都内で少し大げさに回して乗ったインプレ時の燃費は20km/Lよりちょっと良いくらいだった。また、タンク上に付いているステーを使って純正タンクバッグが装着可能。
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