掲載日:2019年06月25日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
HONDA BENLY CB125JX
栃木県のツインリンクもてぎ内にあるホンダコレクションホールでは、4月6日から「ドリーム CB750 FOUR 誕生50年特別展示」が行われている。一般公開に先立ち報道公開が行われたが、その際、1970年代の小型CBシリーズの試乗会が催された。ここではベンリィ CB125JX(1975年)のインプレッションをお届けしよう。
CB125JXは1975年に発売された単気筒ロードスポーツだ。4サイクル単気筒124ccエンジンは新設計で、クランクシャフトやピストン、シリンダーヘッド、カム、バルブまわりなど、主要なエンジン部品を新たに設計し、14馬力という当時としてはハイパワーで伸びのあるエンジンを実現。
また、吸気系のインレットパイプにアトマイザープレートという新機構を採用することで燃焼効率を高め、発進加速時の息つきを防止、24φの大型キャブレターとの相乗効果でなめらかな発進加速を可能とした。組み合わされるフレームは鋼管と鋼板を使った軽くて剛性の高いダイヤモンドタイプで、エンジンのパワーをしっかり受け止め、機敏な操縦性と安定した走りを可能としている。
外観デザインは現代のモデルに比べるとシンプルそのもの。いかにも昔ながらのバイクらしいルックスは、今見ても美しく、飽きない。細部を見ていくと、70年代初頭のモデルに比べて装備がだんだんと充実してきたのが見て取れる。
機械式のディスクブレーキを装備しているのをはじめ、ガソリンタンクのキャップには鍵付きのリッド(蓋)が設けられたほか、従来は右側だけだった標準装着のミラーが左側にも装備されたり、ヘルメットホルダーを装備するなど、80年代以降の“ゴージャス装備路線”へとつながるアイテムが続々と採用されているのだ。バイクという乗り物の存在が、実用品からレジャーや趣味の道具として認識されたという、時代の変化を感じさせてくれるモデルと言えそうだ。
始動はキックのみだが、ごく軽い踏力でいとも簡単にエンジンがかかる。跨って最初に感じたのは、まるでクッションに座ったかのようなシートの柔らかさだ。クラッチをつないで走り出すと、前後のサスペンションのジェントルな動きと相まって、とても乗り心地がいい。実はこのマシンと同時にベンリィCB90、ベンリィCB50という70年代の小型CBシリーズにも試乗したのだが、90と50はスーパースポーツ然としたハードな乗り心地だったのに対し、このベンリィCB125JXはふわふわとして乗り手に優しいイメージなのだ。
実際、カタログには「SUPER SPORTS」の文字があるものの、発売当時のリリースには「市街地走行からツーリングまで、幅広い用途に適した単気筒ロードスポーツ」とうたわれており、コアなバイクファンよりもすそ野を広げたモデルなのでは、と感じる。
アップタイプのハンドルは視界良好で自然なポジションを生み出し、スリムなタンクと軽い車体、それに素直でよく回るエンジンも加わって、とても軽快で快適なマシンに仕上がっている。フロントのディスクブレーキはワイヤー引きによる機械式で、現代のマシンのようにレバーを握った瞬間にカチッと利く、というタイプではない。そのため当初はコーナーを目の前に「あぁ止まらない!?」と少々焦ったが、もちろん利かないわけではなく、レバーを強く握り込んでいけばそれに応じて利きが増すので、操作に慣れれば大丈夫。当時は125ccクラスにディスクブレーキが装備されているだけでも先進的で、羨望の的だったはずだ。
アルバイトなどでお金を貯めて憧れのバイクを買い、休日は遠乗りに出かける。今度は意中の人を後ろに乗せて走ってみたい……そんな若者のライフスタイルを実現してくれる、夢と希望の詰まったマシン。ベンリィCB125JXは、そんなハッピーオーラを感じさせてくれる1台だった。