掲載日:2018年11月20日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
SUZUKI SWISH LIMITED
2018年6月に発売されたスズキの新開発125ccスクーター『SWISH(スウィッシュ)』は、「上質なスタンダードスクーター」をコンセプトに掲げ、10インチホイールの採用やLEDの灯火類、USBソケットの装備など、取り回しの良さと便利な機能を兼ね備えたモデルとして人気となった。そのスウィッシュにグリップヒーターやシートヒーターなど、寒冷時に快適な装備を付け加えたのがスウィッシュリミテッドだ。スタンダードモデルとの違いやその実力を探ってみよう。
スウイッシュ・リミテッド(Swish Limited)は先に発売されたスタンダードモデルとエンジンや車体など基本構成は同じで、冬場のライディングをより快適にする装備をプラスしたデラックスバージョンという位置づけだ。リミテッド専用となる装備は、グリップの前方をカバーして防風効果を高めるナックルバイザーと手のひらを温めるグリップヒーター、そしてお尻を温めるシートヒーターだ。
デザインはスズキのスポーツバイク共通イメージの縦型2灯ヘッドランプを採用したスポーティなもの。LEDヘッドライト&テールランプを採用し、エッジの効いたデザインで先進的な外観となっている。リミテッドには無塗装ブラックのナックルバイザーが装着されるため、ハンドル周りが多少重たい印象だ。冬場の快適性とトレードオフとはいえ、これがボディ同色ならもう少しスッキリしたイメージになるだけに、少々残念なところだ。ちなみにリミテッドの車体幅はスタンダードよりプラス50mmの740mmとなっている。
パワーユニットは力強い加速と高い燃費性能を両立させたスズキ独自のSEP(SUZUKI Eco Performance)エンジンを搭載。コンパクトな車体に前後10インチのタイヤを装着することで取り回しの良さを実現し、リアサスにはアルミ製スイングアームとプログレッシブスプリングを採用した2本サスペンションを装備するなど、路面追従性と快適な乗り心地を追求している。
また、USBアクセサリーソケットやリアキャリアを標準で装備しているほか、シート下のラゲッジスペースもフルフェイスヘルメットが格納できる大きめの容量を確保するなど、ユーティリティに関しても手抜きのないモデルとなっている。
スウイッシュ・リミテッドのシート高は、シートヒーターを内蔵することでスタンダードより10mmプラスの770mmとなっているが、比較しても特に気にならなかった。もともとフロアボードの足元付近が絞り込んだ形状となっていることもあって足つき性は悪くないのだ。フロアボードが広く足を前に出せるスペースもあり、シートも大きめなのでライディングポジションの自由度は高い。
ゼロからの加速はガツンとくる速さはないものの、スズキによれば実はエンジンスペックが全く同じのアドレス125よりもこちらのほうが加速性能がいいのだという。実際、エンジン音も取り立ててうるさいわけでもないのに気付いたらスルスルっと周囲の流れをリードしているという、不思議な加速感を持っている。穏やかでまろやかな加速なのにいつの間にか速いというのは疲れない、というメリットがあり、これは通勤通学に使う人にとって大事なポイントになるだろう。
また、前後10インチのタイヤを採用することで、混雑した渋滞路でも小回りの利くキビキビとした走りをすることができ、なおかつ太めのタイヤとなっているので安定感も確保している。不等間隔で巻かれたプログレッシブスプリングを持つリアサスは3段階のスプリング調整が可能で、スピードの乗ったコーナーや荒れた路面でのねばりや追従性もかなり優秀だ。リミテッドは専用装備がプラスされたことで重量が1kg増となっているが、走りに影響は感じられなかった。
リミテッド専用となる装備だが、ナックルバイザーは正面から来る風をかなりガードしてくれるため、それだけでも寒い時期には有効だ。5段階調節のできるグリップヒーターは手元のスイッチで簡単に温度調節が可能で、最強にすると暑すぎるほど十分よく効く。晩秋の東京都内では最弱か2番目ぐらいの温度でも大丈夫だった。
シートヒーターに調節機能はないものの、サーモスタットで自動的に一定温度を保ってくれる仕様だ。これも一度慣れてしまうと手放せないもので、お尻がじわりと暖かいのはこんなにも有り難いのか、と幸せを感じる装備なのだ。冬でもガンガン走るという人なら迷わず“ウインターバージョン”といえるリミテッドをお勧めする。リミテッドとスタンダードモデルでは、冬場の快適性=幸せ度がかなり違うのである。
ヘッドライト&ポジションランプはLED、ウインカーはバルブタイプとなる。2段式のヘッドライトはスズキスポーツバイクと共通のアイコンだ。
リミテッドの専用装備であるナックルバイザーは黒の樹脂製。剛性感があり防風効果も高いがデザイン的には後付け感が強い。
メーターは液晶の多機能タイプだ。速度のほかタコメーターや時計、燃料計、トリップメーターなどを備える。ウインカーはリレーの音が小さくほぼ無音だが直射日光下ではインジケーターが見えにくい。写真は暗所で撮影したもの。
ハンドル左側にはリミテッドの専用装備であるグリップヒーターのスイッチが設置される。ヘッドライトの上下切り替えスイッチにはパッシング機能もあり。ウインカースイッチは親指からやや遠い印象だ。
グリップヒーターはボタン操作でオンオフと5段階に温度調節が可能だ。赤ランプの点灯状態で動作状況を表示する。ボタンはグローブをしたままでも押しやすい。
右のグリップ脇にはスタータースイッチとハザードのほか、リミテッド専用装備であるシートヒーターのスイッチを装備している。グリップから伸びるコードはグリップヒーターのもの。
レッグシールド内側には5V1AのUSBアクセサリーソケットを備える。インナーラックのすぐ上なのでスマホを充電する際など使い勝手はいいが、できれば出力は2A欲しかった。
メインキーにはイタズラ防止のシャッター機能と直結始動抑止回路を備えている。キーの操作で給油口とシートのロック解除も可能だ。
給油口はレッグシールド左側にある。比較的高い位置にあるため、腰をかがめずに給油が可能。ロックの解除はメインキーをひねるだけと簡単だ。
フロントインナーラックは500mlペットボトルを2本収納できるほか、ウエスなどを入れる程度のスペースがある。
レッグシールドの内側には折りたたみ式のかばんホルダーを装備する。荷物の落下を防ぐストッパー機能付きだ。
シート座面は大きめで立体的にシェイプされ、足つき性に配慮されている。シートヒーターを装備したためシート高はスタンダードモデルより10mmプラスの770mmだ。なおヒーターが効くのは前席のみとなっている。
シート下トランクスペースはフルフェイスが収納可能な形状で、容量は28L。レインウェアやグローブなども入る余裕がある。ヘルメットは横向きで入れるのがメーカー推奨だが、帽体が小さめなら頭頂部を上にしても収納可能だ。
標準装備のリアキャリアはグラブバーを兼ねている。がっちりとした剛性感があり安心だ。
フラットで広く、足を投げ出せるスペースもあるフロアボード。ポジションの自由度は高く、後方がカットされた形状のため足つき性もいい。
シート前端下にはU字ロックホルダーを装備する。純正アクセサリーのロックなどを常に持ち運べるのは便利で安心だ。
ワンタッチで出し入れができるアルミ製のタンデムステップ。軽量で靴底の泥などが溜まりにくいよう中抜きされた形状になっている。
サイドスタンドは標準装備となっている。買い物などちょっとした停車の際にはとても便利だ。
エンジンはスタンダードモデルと同じ空冷4サイクル単気筒SOHC2バルブの124cc。力強い加速と優れた燃費性能を両立したSEP(SUZUKI Eco Performance)エンジンを採用している。
マフラーカバーやヒートガードの形状は多角断面でボディと一体感のあるシャープなデザインとなっており、質感も高い。
タイヤサイズは前後共通で100/90-10 56J、太めとすることで安定性を高めている。銘柄はMAXXISのM6029だ。フロントブレーキは200mm径のディスクで、キャリパーは2ポットを採用する。
リアショックは2本タイプで、不等間隔で巻かれたプログレッシブスプリングは3段階の調整が可能。路面追従性としっとりとした乗り心地を両立している。リアブレーキはドラム式となっている。
リアのコンビネーションランプはエッジを効かせたデザインだ。テールランプは導光タイプのLEDを採用、ブレーキを掛けると中央に並んだLEDが点灯する。ウインカーはバルブタイプとなっている。
【足つき】
スターは身長170cmで足短め、体重72kg。シート高はシートヒーターを内蔵したためスタンダードモデルの10mmアップとなる770mmだ。しかし足つき性にほとんど変わりはなく、シート前端に座って足を下ろせばフロアボードがカットされた部分にちょうど足がくるので、両足ともべったりと地面につく。
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