掲載日:2018年05月24日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
同じ原付2種カテゴリーでのライバルと目されるスズキのGSX-S125がスポーティで戦闘的、言葉を変えれば若々しいイメージなのに対して、ホンダのCB125Rは都会的で上質、オトナの雰囲気を身にまとったマシンといえる。
上質といえば、用いられているパーツはクラスを越えたハイレベルなものばかりだ。たとえばフロントサスは直径が41mmの倒立タイプ。リアサスはより安定した減衰力を発揮する分離加圧式ユニットを採用。フロントブレーキには296mm径という大型ウェーブ形状フローティングディスクと対向4ポッドラジアルマウントキャリパーを採用。また、急制動時に後輪が浮き上がるのを効果的に抑制するIMU(車体姿勢推定システム)付ABSも装備している。タイヤサイズもフロントが110/70R17で250ccクラス並み、リアにいたっては150/60R17と、同じホンダのスポーツモデルであるCBR250RRよりもワンサイズ太いものを装着している。
ヘッドライト以外の灯火類もすべてLEDを採用、メーターも反転液晶を使ったフルデジタルタイプとするなど、すべてにおいて従来の125ccクラスのイメージを越えた、ゴージャスな装備を身にまとっている。パーツ以外でも、メッキ処理されたヘキサゴンボルトを多用するなど、あらゆる面で手を抜かない質感の高さには驚かされる。
CB125Rのシート高は815mmで、125ccクラスとしては決して低い方とは言えない。ただ、シート形状がシェイプされているため、足着き性はそれほど悪いわけではない。ボディはマッシブなイメージだが車両重量が127kgと軽いため、押し歩きなど取り回しも苦にならない。ちなみにスズキのGSX-S125のシート高は785mmだが、シートが薄くクッション性はあまり期待できないため、座り心地はCB125Rに軍配が上がる。
エンジンをかけると、マフラーが奏でる排気音は低めで迫力のあるもの。その場で軽くアクセルをスナッピングすると、もたつきもなくドルルルッと小気味よく回転が上がる。走り出すと、マシンの素性の良さがすぐにわかった。アクセルを開けるとその分だけフラットに、それでいて力強くパワーが出て、スムーズに加速していく。
一般的に小排気量車はある程度エンジン回転を上げないとパワーが出ないというイメージがあるため、信号待ちからのスタートなどではエンジンをふかし気味にしてクラッチを繋がないと元気な発進ができない。ところがCB125Rは、それほど高回転でのクラッチミートを意識せずとも、モリモリとパワーが湧き出て、いつの間にかスルスルっと加速してくれるのだ。もうちょっとだけエンジンにパンチ力があれば、250ccと言われてもわからないかもしれない。
足周りの出来も出色だ。ロードスポーツを名乗るマシンであっても、125ccクラスだとサスペンションなどにどうしても造りの甘さや安っぽい部分を感じてしまいがちだが、このCB125Rに関しては一切そんな気配がない。本格的な倒立フォークを備えるフロントはもちろん、リアサスは調整機構がないタイプだが、とても動きがスムーズで路面への追従性がいい。太いサイズのタイヤとコントローラブルで強力なストッピングパワーを持つ前後ブレーキのおかげもあって、コーナーリング途中に路面の凸凹に突っ込むようなシーンでも、安心して旋回を続けることができる。
フレーム自体の剛性感も高く、とにかくどっしりと安定した走りで、安心感がある。それでいて、その気になればシティランでの戦闘力は非常に高く、ストリートファイターに変身することもできるのだ。上質な乗り心地と運動性能は、もちろんツーリングでも威力を発揮するだろう。とてもありきたりな表現になってしまうが、まさに従来までの125ccの常識を覆す“クラスを越えた走り”を実感できるのだ。
日本では125ccクラスといえば、通勤通学の足か、あるいは若者の入門用バイクとしての役割が多く、それに適したマシンがあてがわれてきた。しかしCB125Rはそんな枠にはおさまらず、大人が所有する喜びと、満足できる走りを提供してくれる、上質な趣味の道具となり得る存在だ。448,200円というプライスもこのクラスにしては強気の設定だが、これは「125ccクラスは単なる移動手段ではなく、大人の趣味としても魅力的なんだぞ」という、ホンダからの提案であり、回答なのではないだろうか。
ポンと買うには勇気がいる価格だが、このマシンの意味と価値が多くのユーザーに評価され、街中で多く見かけるようになったら、日本のバイク文化が一歩、時代を進めたと言えるのかもしれない。今回の試乗を通じ、CB125Rはそれだけエポックメイクなマシンなのだ、と強く感じた。
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