総合カスタムパーツメーカーとして、マフラーからステップなどの削り出しパーツ、スイングアーム、ホイールまで、幅広く手がけるオーヴァーレーシング。4ミニバイクのパーツも豊富なラインナップを誇っており、なかでもGROMとZ125PROはとくに力を入れている機種。その最新パーツと開発フィロソフィーに迫る。
オーヴァーレーシング製パーツを装着した、フルカスタムのGROMとZ125PRO。スタイリング自体はノーマルのままだが、質感の高さは驚くばかりだ。
いま、4ミニカスタムの世界で大注目のGROMとZ125PROに、古くから4ミニ用パーツを手がけるオーヴァーレーシングも当然のように着目し、どこよりも早く専用パーツを大量にラインナップしている。同社でパーツ開発を統括する山本裕之さんに、パーツ開発のポイントについて話を伺った。
「最近の4ミニは、よりスタイリッシュになっていますよね。かつては“小さくてカワイイ”というイメージが強かったと思いますが、近年のモデルは“小さくて安いけどカッコイイ”というキャラクターに変化してきている。GROMとZ125PROは、その最右翼だと思います」
右の人物がオーヴァーレーシングでパーツ開発部門トップの山本裕之さん。4ミニから大排気量車まで、バイク全般に通じるエンジニア。左はテストライドを担当したジャーナリストの淺倉恵介。カスタムバイクに精通し、試乗経験も豊富。
そう切り出した山本さん。また、この2モデルについては、今までにない可能性も感じていると言う。
「バイクに興味を持たなかったユーザーさんを、惹きつけていると感じます。ですから、エントリーユーザーさんが気軽にカスタマイズを楽しめるようにと考えていて、可能な限りボルトオン装着が可能な設計を採用しています。以前から、オーヴァーレーシングのパーツは基本的にボルトオン装着が可能な設計ですが、GROMとZ125PROに関しては、もっと交換作業が簡単になるよう配慮しています。それこそ工具さえあれば誰でも出来るレベルを目指しています」
装着が容易なのはユーザーにとって有難い話。自分で作業を行えばマシンへの愛着もより深まるもの。だがオーヴァーレーシング製のパーツの真価は、走りの良さこそが最大のポイント。オーヴァーレーシングがGROMとZ125PROというバイクをどう評価し、何を目指してパーツ開発を行ったかを聞いてみた。
「新型GROMはバイクとしての完成度が高められていますね。カスタムの素材としても魅力的です。マフラーも自信作ですが、ステップと5cmロングのスイングアームは是非試してもらいたいパーツです。格段に乗りやすく感じていただけるはずですから。特にスピードレンジが上がった場合、操作性が向上した分、扱いやすさが変わってきます。長距離を走った時の疲れ方も違いが出ますよ。
Z125PROは荒削りに感じる部分もありますが、その分パーツを変えるとダイレクトに効果を体感出来て面白い。ステップはノーマルから大きく位置を変えていますが、自然にマシンをコントロールできるポジションに仕上げました。ノーマルでもエンジンにパンチがありますが、マフラーを交換することで、走りのキャラクターが変わることを楽しんでもらいたいですね」
そうと聞けば、その走りに期待が膨らまないわけがない。早速、オーヴァーレーシングが手を加えた、GROMとZ125PROのテストライドに挑んだ。
まずはGROM。マシンに跨って最初に視界に入るハンドル周りには、総削り出しで作られたセパレートタイプのハンドル。ノーマルとは段違いに質感が高い。もちろん見た目だけでなく、ポジション設定が絶妙。手を伸ばすと自然にグリップがそこにある。ステップはかなり戦闘的なポジションで、気分を盛り上げる。ハンドルとステップは、ノーマルと比較にならないくらい剛性が高く、操作時のダイレクト感が実に気持ち良い。
オーヴァーレーシング製パーツをフル装備したGROM。マフラーは新発売のツインカーボンマフラーを装着。高剛性なスイングアームと、軽量かつ高剛性なホイールは、スタビリティ向上と軽快な走りを両立する。
走り出すと、マフラーの効果がすぐに体感できる。高回転型でパワーバンドは5,000回転から上だが、低中速が犠牲にされていないので乗りやすく、速い。直線的にパワーが盛り上がっていくのはなんとも快感だ。ブレーキは、前後ともオーヴァーレーシング製のキャリパーサポートを介して、ブレンボ製キャリパーを装着している。制動力が増したのはもちろん、実にコントローラブルで扱いやすかった。これは効果大のパーツだ。
次に試したのはZ125PRO、これがまた痛快だ。とにかくマフラーが良い。全体的にトルクが厚みを増しており、クラッチを繋いだ瞬間から速い。レッドゾーンが1万回転を超える高回転エンジンなのに、3,000回転も回っていれば十分に加速するところも素晴らしい。街中なら2速ホールドで走りきってしまうほどだ。
異形六角断面形状サイレンサーのTT-Formula RSマフラーは、パワフルかつフラットなパワー特性がポイント。どこからでもスロットルを開けられるスムーズさは、どんなシチュエーションでも扱いやすく速い。
今回はTT-Formula RSとGP-PERFORMANCE XLの2本のフルエキゾーストを試すことが出来たのだが、両者のキャラクターの違いも面白い。TT-Formula RSは全域でスムーズな上質な乗り味が特徴。対してGP-PERFORMANCE XLは、鋭いピックアップのダイレクト感あるレスポンスがスポーティ。通勤通学メインならTT-Formula RS、サーキットなどスポーツ走行メインならばGP-PERFORMANCE XLがお薦めだ。2本のマフラーのパワーは互角とのことなので、好みに合わせて選べるのはうれしい限り。
レーシーなメガフォンルックのGP-PERFORMANCE LXマフラー。鋭いレスポンスは”GP”の名に恥じない、スパルタンな乗り味が特徴。スロットルを開けるのが楽しくなる、エキサイティングなマフラーだ。
また、ステップのポジション設定も素晴らしい。ステップバーの位置は、ノーマルから100mmも後退しているというのだが、なんの違和感もなく自然にライディング出来た。剛性と操作性が上げられていることで、シフト操作の確実性が向上しているところも好感触だ。
GROMとZ125PROが、オーヴァーレーシングのボルトオンパーツを装着するだけで、これほど乗り味が変わるのは驚きだった。もちろん良い方向に、しかも劇的に変化していることは言うまでもない。オーヴァーレーシングでは、今後もこの2モデルのパーツを開発予定とのこと。実に楽しみだ。
オーヴァーレーシングの実力は、単なるパーツメーカーに留まらない。バイクをチューニングするだけでなく、バイクそのものを作り上げる能力を持った、コンストラクターと呼ばれる数少ない存在なのだ。日本国内のトップカテゴリーのレースで活躍し、また海外のレース活動でも実績を残しており世界的にも評価が高い。オーヴァーレーシングのカスタムパーツには、同社の持つ高い技術力が惜しみなく注ぎ込まれている。また、パーツラインナップの広さは、他の追随を許さない。マフラーからステップなどの削り出しパーツ、スイングアームやホイールといった車体パーツまで、自社内で生産可能としているのだ。
※表示はすべて税込価格です(2016年10月現在)