取材協力/オーヴァーレーシング 取材・文/淺倉 恵介 撮影/木村 圭吾 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2013年11月27日


ホンダはミドルクラスのスポーツモデルとして、2013年4月に『CBR400R』を発売した。オーヴァーレーシングはそのパフォーマンスの高さに着目し、秘めたポテンシャルを引き出すためのカスタマイズパーツを一挙にリリースした。オーヴァーレーシングの手により、CBR400Rの走りが本格派スポーツモデルに生まれ変わる!

FEATURE

ホンダCBR400R用スペシャルパーツを
オーヴァーレーシングが大量リリース!

2013年4月にホンダがリリースしたCBR400Rは、400ccクラスでは久々となるスポーツモデルだ。フルカウルを身にまとったスパルタンなフォルムを持ちながら、誰にでも扱いやすいパワー特性と素直なハンドリングが好評な1台となっている。

しかし、CBR400Rは親しみやすいだけのバイクなのだろうか? スポーツバイクとして高いポテンシャルを秘めているに違いない! そう考えたオーヴァーレーシングが、CBR400R用パーツを大量にリリースした。同社はパフォーマンスパーツメーカーとしては勿論、マシンコンストラクターとしての技術力も高く評価されている実力派だ。

そのオーヴァーレーシングが本気でCBR400Rのスペシャルパーツを開発。今回はその魅力と可能性を同社の開発スタッフに聞くことができた。そこにはオーヴァーレーシングならではの、スポーツバイクに対する想いと、物造りのフィロソフィーがあった。オーヴァーレーシングが、CBR400Rの“その先”を切り拓く。

INTERVIEW

佐藤 順市 氏
オーヴァーレーシングに入社以来、パーツ開発に従事。主にマフラーの開発を担当し、同社製マフラーのほぼ全てに関わるオーヴァー管のキーマン。

コストと手間を惜しまない物造りにかける情熱
全てはライディングプレジャーのために

「最初に実車に触った時は、排気音も物足りないし、ポジションもアップライト過ぎると感じました。ルックスが凄くスポーティじゃないですか? だから、その分拍子抜けしましたよね。これは、スポーツバイクっぽいだけの実用車なのかな? と思ったほどです」

CBR400Rのファーストインプレッションをそのように語るのは、オーヴァーレーシングでパーツ開発を担当する佐藤順市さんだ。

「けれど、乗ってみるとなかなか面白いバイクなんですね。“走る・曲がる・止まる”のバランスが、かなり良いんです。“これはもっと面白いバイクになる”と思いましたね。マシンの素性が良くなければ、カスタムしてもなかなか効果が出ませんからね。その点でCBR400Rには、十分なポテンシャルがあることがすぐにわかりました。オーヴァーレーシングは様々な車種用のパーツを造っていますが、基本はスポーツバイク。自分自身もスポーツバイクが好きなものですから、CBR400Rのスポーティな部分を強調できるパーツを造りたいと考えました」

 

そうして最初に製作されたのがスリップオンマフラーだ。『TT-Formula フルチタン スリップオン』と名付けられたマフラーは、異径5角断面のスタイリッシュなサイレンサーを持つフルチタン製。ノーマルよりもテールアップスタイルとなり、アピアランスも大幅に向上している。大好評を得ている製品だが、そうなるとやはり次はフルエキゾーストという話になる。

 

「スリップオンの開発・製作後、すぐフルエキの開発に入りましたが、これが一筋縄でいかなかったんですよ。一般的な 2 in 1 構造のレイアウトで作ってみたらパワーが出ない。エキパイもサイレンサーも何度も作り直して、やっと辿り着いたのが中間パイプにサブサイレンサーを持たせた構造です。触媒もスマートに収めることができましたし、サブサイレンサーでかなり消音できるので、メインサイレンサーの形状の自由度が高くなる。実際のところ、サブサイレンサーはコストがかかるので、会社としての利益を考えるとあまり使いたくないんです。けれど、性能を出すためには仕方がない! と押し切りました(笑)。このマフラーでは他にも、ヘッドパイプの等長を出すために、ただの曲げパイプではなく溶接工程を増やしたりと、いろいろな工夫をしています。ですから相当な手間とコストがかかっているんですよ。ヘタな4気筒エンジン用マフラーより、よっぽど手間がかかりますね」

そこまでしても欲しかった性能、狙ったパワー特性とはどういったものだったのだろうか?

「CBR400Rは、元々低中回転域は悪くないのですが、高回転域が物足りない。高回転域でのパンチを出したかったんです。開発で苦労した甲斐があって、全域でパワーを上乗せできましたし、課題だった高回転のパワーアップも当然果たしています。あと、こだわったのは音です。走っていてライダーの気分が盛り上がるような、スポーツバイクらしい元気なサウンドに仕上げたつもりです。もちろん法律に適合する範囲内ですから、音量がそれほど大きくなっているわけではありません。変わったのは主に音質の部分ですね。車検対応品でも、気持ち良いサウンドを持つマフラーは造れるんです」

 

なるほど、かなりのこだわりを持って造られたことがわかる。また、オーヴァーレーシングのCBR400R用パーツは、マフラー以外のパーツも高精度な削り出しパーツが中心で、これまたクオリティが1クラス上のものばかりだ。なぜそれほどまでにこだわったパーツを造るのだろうか? その点についても訊ねてみた。

 

「ミドルクラスのバイクは、大きく分けて250ccクラスと400ccクラスに分けられますよね。250ccクラスは車体自体が安いし、車検が無いなどランニングコストも安い。そういう意味では400ccクラスには経済的なメリットは小さい。けれど、そこであえて400ccのマシンを選ぶライダーは、より趣味性を重視する方だと思うんです。ならば、そういったコアなユーザーが満足できるクオリティの製品を造りたい。そうなれば、手抜きは一切できません」

 

妥協を許さず、性能と品質を追求する。それこそがオーヴァーレーシングの物造りの真髄。生み出されるパーツがどれも魅力に溢れているのも、納得できるというものだ。

フルエキゾーストマフラーのサイレンサーは、モトGPマシンをイメージした『GPパフォーマンス』タイプを採用。小型のボディは実にスタイリッシュだ。エンジン下に設けられたサブサイレンサーは軽量なフルチタン製、内部にキャタライザーも装備する。ヘッドパイプは理想のカーブと等長エキパイを実現するために、曲げ加工を施した上で一旦切り離し、再度溶接されるという手の込んだもの。

IMPRESSION

OVER RACING製パーツでマシンはどう変わるのか?
カスタマイズドCBR400Rを実走インプレッション

マシンに跨ってまず感じるのが、ハンドルとステップの変更によってスポーティに変化したポジションだ。前傾が大きく強まり、下半身もコンパクトに収まる。バックステップはオーヴァーレーシングの定番商品。アルミ削り出し製で、剛性感に溢れた踏み応えが積極的にマシンをコントロールしようという気にさせてくれる。適度に後退したステップ位置も絶妙だ。

特筆すべきはハンドル。オーヴァーレーシング製のハンドルは、取り付け位置が前方に38.5mm移動し、高さが2段階、絞り角度は無段階の調整が可能。試乗車のハンドル位置は低い方にセットされ、絞り角度もキツめに調整されていたのだが、これがなんとも具合がいい。ノーマルハンドルの場合、アップライトなポジションで乗車姿勢が楽ではあるが、上体が立ち過ぎてライダーのボディアクションがワンテンポ遅れる感がある。それが解消されているのだ。

エンジンをかけると、音量は十分に抑えられていながら、歯切れ良いエキゾーストノートがサイレンサーからこぼれ出す。アイドリング状態では音量が極端に大きくなったとは感じられないが、音質の違いが気分を盛り上げる。

 

走ってみると、これがまた良い。低中速のトルクは損なわず、高回転の伸びは明らかに違う。レスポンスも向上しているし、何より音が良いのだ。低音が強調されて迫力が増した高回転型パラレルツインらしい連続音は、どんどんスロットルを開けたくなる。そうなると気になるのが音量。車検対応品とは言え、周囲が迷惑に感じないかが気になる。だがその心配は無用のようだ。同行した撮影スタッフに確認したところ、しっかりと耳障りでないレベルの音量に抑えられているとのこと。乗り手にのみ響くよう造られているようだ。これはなんとも素晴らしい。

 

そしてコーナーでは、スポーティなポジションが威力を発揮する。前傾姿勢が強くなったおかげで、フロントタイヤへの荷重もかけやすくなっていることが大きい。現代的なスポーツバイクはフロントタイヤへの依存度が高いのが一般的で、タイヤもその要求を満たすために著しい進化を遂げている。オーヴァーレーシングのステップとハンドルは、最新ハイグリップタイヤの性能を引き出しやすいポジションが構築できるのだ。積極的にマシンに荷重し、コーナリングフォースを引き出す。そんな走りができて、マシンを操りたくなるポジションなのだ。

 

ノーマルのCBR400Rからこのマシンに乗り換えたら、最初は前傾のキツさに違和感を覚えるかもしれない。それぐらいポジションの変化は大きいのだが、是非とも1度試してもらいたいパーツだ。CBR400Rとは、これほどコーナリングが楽しいマシンだったのか、と驚くはずだ。快適性は多少スポイルされるかもしれないが、それと引き換えに得られるライディングプレジャーは何物にも代えがたい。オーヴァーレーシングが目指したのは“よりスポーティなCBR400R”であり、その目標は見事に達成されている。ボルトオンパーツだけで、バイクがこれほど変えられる。新たな驚きを感じられた試乗だった。

試乗は一般道で行った。市街地からちょっとしたワインディングまで、一般ユーザーの使用条件に合わせたものだ。試乗中あらゆるシチュエーションで、オーヴァーレーシングのCBR400Rは優れた走行性能を見せてくれた。単純に、走るのが実に楽しかった。

オーヴァーレーシングのステップは4ポジション可変タイプで、好みのステップ位置が選択可能。ハンドルはホルダーからノーマルと交換するタイプで、ケーブル類やハーネスはノーマルがそのまま使用できる。

PICKUP PRODUCTS
※表示はすべて税込価格です(2013年11月現在)
  • GP-PERFORMANCE RSコンプリート 2-1(14万7,000円)
    フルチタン製のフルエキゾーストシステム。モトGPマシンを意識した、コンパクトなメガフォンサイレンサーがスパルタンな雰囲気を醸しだす。車検対応品で、音量は近接92db、加速82b。装着状態でオイル交換、オイルフィルター交換が可能。タンデムステップも装着可。

  • TT-FORMULA フルチタンスリップオン(7万3,500円)
    超軽量なフルチタン製スリップオンマフラー。重量はわずかに1.75kg(STDは4.2kg)。テールパイプはφ42.7mmからφ60.5mmに変化するコニカル形状を採用。車検対応品。タンデムステップ移設プレート付属。

  • アルミビレットマフラーステー(7,350円)
    アルミ削り出し製のハイクオリティなマフラーステー。シルバーアルマイト仕上げ。OVER製マフラーと、ノーマルマフラーに対応。ノーマルタンデムステップ使用不可。

  • BACK-STEP 4POSITION(6万900円/SILVER、6万3,000円/BLACK)
    4ポジション可変タイプのバックステップ。シルバーとブラックの2タイプ。ステップ位置は48mm BACK/28mm UP、48mm BACK/38mm UP、38mm BACK/38mm UP、38mm BACK/28mm UPから選択可能。ブレーキホース、ブレーキスイッチ、マスターシリンダーはノーマルが使用可能。正/逆チェンジ可能。ABS仕様車装着可能。

  • スポーツライディング ハンドルキット(3万1,500円)
    ノーマルハンドルからセンター位置で35mm前方に移動、ハンドル高さは-40mm/-50mmの2ポジションから選択可能。ハンドル垂れ角は5度で、絞り角は無段階で調整可能。ホース類とケーブル類、ハーネスはノーマルが使用可能。

  • レーシングスライダー(2万1,000円)
    万が一の転倒時に、車体へのダメージを最低限に留める。スライダー部はテーパー形状のジュラコン製、ステーはアルミ削り出しで製作。

  • フロントスライダー(1万500円)
    フロントフェンダーの取り付け部に装着するスライダー。転倒時に車体をガードする。スライダー部はジュラコン製。

  • リアスライダー(2万1,000円)
    リアホイールのアクスルシャフトと共締めで取り付けるスライダー。フックタイプのレーシングスタンドの、スタンドフックとしても使用できる。

  • リアスタンドフック(1万5,750円)
    レーシングマシンをイメージさせる、バータイプのレーシングスタンド用のスタンドフック。アルミ削り出し製。

株式会社 オーヴァーレーシングプロジェクツ

リッターバイクからミニバイクまで、バラエティに富んだ車種向けのパーツを製造・販売する、バイク用カスタムパーツの総合メーカー。マフラーをはじめ、バックステップやスイングアーム、ホイールといった豊富なジャンルのパーツをラインナップし、そのほとんどを自社で生産可能な高い技術力を誇る。フレーム製作も得意としており、シャシーコンストラクターとしても高い評価を得ている。

住所/三重県鈴鹿市国府町石丸7678-5
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