一度かぶれば虜になるアドベンチャー向けヘルメット、リード工業のX-AIR「RAZZO-V」

掲載日/2023年12月15日
取材協力/株式会社リード工業
写真、取材、文/伊井覚
構成/バイクブロス・マガジンズ

日本を代表する老舗ヘルメットメーカーの一つであるリード工業から、アドベンチャーバイクに最適なジェットヘルメットRAZZO-Ⅴが発売された。2005年にグッドデザイン賞を受賞したスポーツジェットヘルメット・RAZZOの流れを汲む最新モデルであり、帽体に大型バイザーを装備したアドベンチャー向けヘルメットとなっている。

アドベンチャーバイクに乗る時に
バイザー付きジェットヘルメットを勧めるワケ

近年、日本のみでなく世界中のバイク業界で大きな流れを作っているのが、アドベンチャーバイクだ。BMWのGS、DUCATIのムルティストラーダ、ホンダのアフリカツイン、スズキのVストロームなど、今やアドベンチャーモデルを作っていないメーカーを探す方が困難であり(ハーレーですら例外ではない)、その多くが大ヒットモデルとなっている。

日本でも長年続くアウトドアブームの流れもあり、大自然の中を自由に旅できるアドベンチャーバイクは大きな支持を得ている。また、実際にはオフロードを走らずとも、アドベンチャーバイクのスタイルが好きで選ぶライダーも多い。

ツーリングをしていると、アドベンチャーバイクに乗っていてもオンロードのフルフェイスヘルメットを被っているライダーを多く見かける。もちろん、法的には何も問題ない。ではなぜアドベンチャーバイク乗りにバイザーが付いたジェットヘルメットを勧めるのか?

バイザーの主な役割は、泥除けである。アドベンチャーバイクでオフロードを走行すると、前走車の後輪が巻き上げた泥が前方から降ってくることがある。バイザーがないとその泥がシールドに当たり、前方が見えなくなってしまう。また、日差し避けとしても機能する。日差し避けが欲しいのは何もアドベンチャーバイクに限ったことではないが、例えばサーキットで200km/h以上で走るオンロードのヘルメットにバイザーが付いていたら、風圧をもろに受けて思うようにスピードを出せないだろう。

次にチンガードのないジェットタイプである理由だが、オフロード走行時はオンロード走行時よりもボディアクションが大きくなる傾向があるため、呼吸が荒くなる。口部分が密閉された状態に近いヘルメットで激しく呼吸をすると息が苦しくなるし、すぐにシールドが曇ってしまうため、RAZZO-Vは顎部分を露出させたジェットタイプを採用している。レースなど転倒を伴う可能性の高いオフロード走行の場合はチンガードの付いたフルフェイスタイプを選択するなど、状況によって選ぶといいだろう。

このように、アドベンチャーバイクでオフロードを走る際にバイザー付きジェットヘルメットをかぶるのにはちゃんと意味があるのだ。ただし、例えオフロードを走らないライダーであっても、やはりアドベンチャーバイクに乗っているのならバイザーの付いているヘルメットを被った方が圧倒的にスタイルがカッコよくなるという利点もある!

アドベンチャーツーリングでの
快適性を極めたRAZZO-V

このRAZZO-Vが素晴らしいと感じたのは、その開放感だ。アドベンチャーツーリングの目的の一つは、自然と触れ合うことにあると思う。緑に囲まれた舗装林道では新緑の匂いがするし、沢が流れる林道では水の音、さらに鳥の鳴き声や、猿が木々の枝を折る音、滝の音も聞こえてくる。RAZZO-Vをかぶっていると、ヘルメットをかぶっていることを忘れてしまうくらい、そんな自然の匂いや音を思い切り堪能することができる。

また、視界の広さも大きなメリットと言える。ジェットタイプのため前方だけでなく左右や足元の景色まで広く見渡すことができ、より安全な運転が可能だ。公道では歩行者や自転車が物陰から飛び出してくることもあるし、林道でも道端から鹿や猪が飛び出してくることがある。それらを回避するには、法定速度を守ることの他、早期発見が一番効果的なのだ。

さらにRAZZO-Vのもう一つの特徴は、バイザーにある。RAZZO-Vでは頭頂部の固定を省略しているため、走行風がバイザーとシェルの間をなんの抵抗もなく抜けていく。これにはバイザーの固定方法だけでなく、シェルに刻まれたプレスラインが風の流れを整えてくれていることも大きいだろう。そのため高速道路の走行時にもバイザーが風を受けて首が後ろに持っていかれるようなこともないし、汚れてしまった時のメンテナンスも楽ちんだ。

固定ヶ所が少ないからといって固定力が弱いかと言うとそんなことはない。RAZZO-Vでは左右それぞれ2つのボルトで固定しているため、ボルトが緩んでバイザーが不用意に動いてしまうことがない。代わりにバイザーの角度を変更できないというデメリットはあるが、そのおかげで常に一番スタイリッシュかつ快適な角度を維持することができる。

さらにシールドは用途に応じて取り外しが可能で、砂煙の激しい場所などでは代わりにゴーグルを装着することもできる。RAZZO-Vは1つで4種類のスタイルが楽しめるヘルメットなのだ。

RAZZO-Vの機能性を分析

LEAD
X-AIR RAZZO-V
価格:¥16,000(税別)
カラー:マットグリーン、マットブラック、マットデザート
サイズ:M(57-58cm未満)L(59-60cm未満)、XL(61-62cm未満)
規格:PSG、SG
重量:約1,290g(±30g)

バイザーは両サイドのみで固定し、頭頂部は風が抜けるように浮かせている。こうすることで高速道路の走行時でも首に負担がかからず、疲れづらい。

バイザーの隙間から抜ける風を利用したベンチレーションシステムを左右に備えている。プレスラインで作られた風の通り道に配置することで効率を向上させている。スモークカバーが上面を覆っているため、雨を防ぎ、風だけを取り入れることができる。樹脂製のノブで容易に開閉が可能。

通勤・通学やツーリングなど、ヘルメットを脱着する機会が多いと、ストラップの脱着が地味にストレスになることがある。RAZZO-Vはそんな時でも金具を差し込むだけのクイックリリース式ストラップになっているので、ストレスフリー。誤ってストラップが解除されてしまわないように解除ボタンは一段低くなっているので、安全にも配慮されている。

ヘルメットの快適さにとって重要な役割を占めるのが、内装だ。RAZZO-Vの内装は速乾性に優れたポリエステル素材を使用しており、汗をかいても蒸れにくい。さらに脱着も容易なため洗浄可能で清潔に保つことができる。

初心者やパートナーとのマスツーリングでは必需品とも言えるインカムのスピーカーを収納できるスペースも確保されている。

RAZZO-Vのベーシックスタイルはバイザーとシールドを装備したジェットタイプのアドベンチャーヘルメットだ。

バイザーを外すと通常のジェットヘルメットに早変わり。例えば原付やスクーターに乗る際はこの方がスタイルが引き立つし、シート下の収納にも収まりやすくなる。

原付などで街乗りする場合にはシールドを外して使用することも可能。

シールドを外した状態にゴーグルを装着することもでき、ゴーグルのバンドを固定するストラップも装備している。全色マットカラーということもあり、クラシックゴーグルがよく似合う。

INFORMATION

住所/東京都足立区宮城1丁目17番21号
電話/03-3912-2751
営業時間/9:00~17:00

戦後、一躍需要を増した自転車の部品製造会社を出発点とするリード工業(LEAD)。復興と経済発展が進むにつれて爆発的に増えたバイク部品の製造に取り組むようになったのは、自然な流れでした(昭和30年)。当時のバイクは、あくまでも実用品。会社の営業者であり、家庭の自家用車でしたから、動くために必要な部品の次は、役に立つ道具にするための用品が求められることもまた、自然なことだったのです。当時は、荷物を入れるためのボックスや快適に走るための風防(スクリーン)が主な商品だったのも頷けます。また、昭和40年代の終わりには、生産拠点を求めた海外進出が始まっています。必要なものを、より求めやすい価格で、大量に生産するためです。その後、国内のバイク人気を追い風に事業を拡大し、レザーウェアの製造を行っていた時期もありました。現在の主力商品はヘルメットと盗難防止用品、それからグローブとバイクカバーも。求めやすい価格と豊富なバリエーションで、昔と同じようにライダーの役に立つ道具を作り続けています。