個性とユニークが最優先! リード工業の“提案型モノづくり”
取材協力/株式会社リード工業  取材・文/佐賀山敏行  写真/井上 演  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2017年5月12日

開閉式バブルシールドをあらかじめ装着したストリートジェット「MOUSSE(ムース)」をはじめ、ハーフタイプやフルフェイスに形を変える「X-AIR SOLDAD(ソルダード)」など、他にはないデザインやギミックを持つアイテムを数多くリリースするリード工業。その企業風土にあるのは定番を良しとしない、他社と同じを良しとしない「提案型モノづくり」にあった。

FEATURE

「10人に1人」その商品を
どうしても欲しい人がいればいい

リード工業最大の強みは、柔軟性とユニークな製品作りにある。時代に合わせて扱う商材を変え、ニーズに合ったデザインを取り込む。もちろん、譲れないコダワリも併せ持っている。それが独創性であり、同社が作り出す製品はどれもが個性に溢れ、他にはないデザインやギミックが大きな魅力となっているのだ。

同社企画開発部の瀬山隆明部長は言う。「たとえばヘルメットなら、空力が多少悪くなっても、ウチはかっこよさを選びます。ライダーが10人いたら、そのすべてに受け入れられようとは思いません。そのなかの1人が強烈に『この商品が欲しい!』と思えるものが作れるよう、常に企画しているのです」。

個性とユニークが最優先! リード工業の提案型モノづくり

1970年代後半から80年代にかけて、同社ではグローブやジャケット、さらにパニアケースやウインドスクリーンなど、バイクにまつわるさまざまな商品を製造・販売していた。なかでもチャンバーやハンドルも作っていたのには驚きだ!

リード工業が創業したのは昭和24年。はじめは埼玉県で瀬山商会としてスタート。その後すぐ「これからは自転車ではなく、バイクの時代が来る!」という初代社長の見立てによって、バイク部品の製造・販売をはじめたとのこと。その後、各メーカーのリプレイスパーツやアクセサリーパーツなど、機械パーツをメインにしていたが、70年代後半にはグローブやジャケット、革ツナギといったウェアの製造・販売も開始。その頃からヘルメットの生産もはじめたそうだ。その後もヘルメットの100%台湾生産やホームセンターへの進出など、現状に満足することなく、常に変化や挑戦を続けてきた。

個性とユニークが最優先! リード工業の提案型モノづくり

デザインは最も重視するポイントで、売れそうでも他社にありそうな案は「ウチがあえてやる必要はない」という瀬山部長の言葉通り、ボツになることが多い。デザイン会社とは毎週ミーティングをおこなっているそうだ。

そして約10年前、エクストリームヘルメット「X-AIR」シリーズの発売である。初代モデル・ハーフタイプの「X-AIR」の続編となるジェットタイプ「RAZZO」が、2年連続でグッドデザイン賞を受賞。さらにRAZZOをベースに開閉式シールドを装備した「RAZZO II」はシリーズ最大のヒットを記録。それまで「リード工業=ホームセンター向け」(※これもホームセンターの隆盛を見越して、同社が早々と進出を決めたためなのだが)という認識を覆すことに成功。瀬山部長曰く「ここからバイク用品店さんの反応も変わった」とのこと。その後も開閉式バブルシールドを装備したストリートジェット「BC-9」など、ヒット商品を連発し、いまに至る。

個性とユニークが最優先! リード工業の提案型モノづくり

同社の大きな転機となったのがエクストリームハーフヘルメット「X-AIR」。穴の空いた帽体やエッジを効かせたデザインが支持され、2004年度のグッドデザイン賞を受賞した。

リード工業の「いま」は、長い歴史を持つ企業風土のなかから生まれた結果といえるもの。これまでにないものを創り出す「提案型モノづくり」は、これからも多くの......いや、熱狂的な一部のライダーから支持を受け続けるだろう。

PRODUCTS

ヘルメットを中心に
精力的に新製品を開発

リード工業の製品は独自性の強さが魅力である。「たとえ売れそうなデザインでも、他社とカブってしまうならウチでやる意味がない。それでボツになるということは少なくないですよ」と瀬山部長。たしかに現在リリースされている製品はどれも、ひと癖もふた癖もあるデザインやギミックを持っている。また、同社はヘルメットがメインではあるが、決してヘルメットメーカーではなく「バイク用品メーカー」である。レインウェアもスマホケースもラインナップに加わっているし、「アイデアがあればなんでもやりたい」と瀬山部長は意気込みを語る。

たしかに固定観念を突き破るようなアイデアがあれば、それこそバイクにすらこだわらないのかもしれない......そんな勢いを同社からは感じることができる。実際に同社製品のデザインを担当するのは外部デザイン会社2社であり、そのうち1社はバイクにまったく関係のない分野を得意としているとのこと。あえて専門外を取り入れることで、常に独創性の高い製品を生み続けているのだ。

下に紹介するのは、そんなリード工業の新作や注目のアイテムである。そのこだわりを確認していただきたい。

個性とユニークが最優先! リード工業の提案型モノづくり

「パリオ」は5月発売予定の女性専用ヘルメット。もともとヨーロッパ向けに発売されていたものを日本人用としてアレンジしたもので、ブラックとアイボリー、ホワイトがラインナップされる。カラーごとにグラフィックが異なるのが面白い。

個性とユニークが最優先! リード工業の提案型モノづくり

よく見ると、帽体には微妙なエッジが施され、デザインアクセントとなっている。帽体自体のアールが変化するのは、他の製品ではあまり見られないものであり、このヘルメットの大きな個性となっている。

個性とユニークが最優先! リード工業の提案型モノづくり

定番のハートやピンクではなく、高級感あるグラフィックとすることで、普段着の女性ライダーが気軽に使えるように配慮されている。

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あらかじめバブルシールドが備え付けられた「ムース」は、ヒット商品「BC-10」の進化版。シールドラチェット部の質感を向上させている。また、複雑なグラフィックのストリートジェットが増えるなか、あえてシンプルにすることで存在感を高めている。

個性とユニークが最優先! リード工業の提案型モノづくり

歌舞伎の「隈取」をイメージしたカラーリング「KUMADORI」は、リード工業の遊び心の真骨頂というべきもの。一見しただけでは隈取と分からないようになっているのも、このグラフィックの面白いところだ。

個性とユニークが最優先! リード工業の提案型モノづくり

リリースされたばかりの「SLIM RAIN WEAR」は、カッパらしくないデザインをモチーフに開発された。スリムなシルエットは走行時のバタつきを防ぎ、また防寒着としても気兼ねなく羽織ることができる。

個性とユニークが最優先! リード工業の提案型モノづくり

フラップ部はベルクロではなく、ダブルファスナーを採用。羽織る時に袖のベルクロがフラップにくっつく......なんてことがないのは嬉しい限り。もちろん、ジャケットの高級感アップにも一役買っている。

個性とユニークが最優先! リード工業の提案型モノづくり

さまざまなアタッチメントを用意し、あらゆる車種に対応するスマホケース「冒険大陸」も人気の商品。使い勝手の良さに加えて、パッケージデザインにもこだわることで、高い評価を得ている。

BRAND INFORMATION

住所/東京都足立区宮城1-17-21
電話/03-3912-2751
FAX/03-3914-0028
ヘルメットを中心にバイク用品全般を取り扱う老舗メーカー。「STRAX」や「BREEZ」などさまざまなブランドを展開するが、リード工業のロゴを一新し、ブランドを「リード」へと一本化した。今後は海外進出も視野に入れている。その活躍に期待が膨らむ。