レーサーレプリカブーム元祖のRG250ガンマ用、K2tec製ストリート向けチャンバーが登場

掲載日/2023年3月27日
取材協力、写真提供/株式会社ケイツーテック、箱崎大輔
文/箱崎大輔
構成/バイクブロス・マガジンズ
RG250ガンマ乗りの救世主、K2tecが3型/4型/5型用設計のチャンバーを開発した。フルカウルを装着しても干渉することなくしっかりとカウル内に収まり純正のスタイルを保ちつつ、アンダーカウルを外せば溶接や加工の美しさが目を引く。2ストローク車特有の味を残しつつ街乗りやツーリングにも使いやすい特性のK2tecチャンバーは、絶版モデルを現代に蘇らせてくれる。

純正フルカウルに対応する3型/4型/5型用チャンバーは
カスタムはもちろん修理やレストアにも対応可能

1980年代に訪れたバイクブームの中でも、ひときわ盛り上がったのがレーサーレプリカブームだった。その口火を切ったのが1983年に登場したスズキRG250ガンマだ。1970年代後半から82年まで世界グランプリGP500クラスで連覇を飾ったレーサー、RGガンマの技術を公道用モデルに注入したRG250ガンマは、量産市販車初のアルミ製ダブルクレードルフレームを採用。タコメーターには3000rpm以下の表示がなく、当時の自主規制値いっぱいの最高出力45馬力を発生する水冷2ストロークエンジンは、パワーバンドに入るや否や爆発的に加速するいかにも2ストという特性で、当時の若いライダーを刺激するに充分な魅力があった。

ヤマハTZR250やホンダNSR250Rといったライバルが登場する中、大幅な仕様変更が行われたのが1985年。3型と呼ばれるモデルで型式がGJ21Bとなり、外観デザインが一新されると同時に、ピーキーと言われたエンジンに排気デバイスを追加。SAECと呼ばれた機構はヤマハ車におけるYPVSと同様、エンジン回転数に応じて排気タイミングを変えることで高回転時のパワフルさは以前のまま、低回転での扱いやすさを改善することに成功した。

RG250ガンマはレーサーレプリカというカテゴリーを創出したエポックメイキングなモデルだったが、この頃になるとストリートでもサーキットでもNSRやTZRに押される場面が増え、並列2気筒を意味するパラレルのガンマ=パラガンの時代は1987年モデルで終焉を迎える。そして翌1988年には新設計のV型2気筒エンジンを搭載したRGV250ガンマがデビューし、再びライバルと火花を散らすこととなった。

こうした経緯があるため、アフターマーケットパーツに関しては1型/2型向けは種類も多くセールスも好調だったものの、3型/4型/5型用については当時から潤沢とはいえないのが実態で、それから35年以上を経た現在では市場でほぼ見る影がないというのが現実だ。

こうしたモデルにスポットを当てて、新たに排気デバイス付きの3型/4型/5型用チャンバーを開発したのがのがK2tec(ケイツー・テック)である。全日本ロードレース選手権に参戦し、世界グランプリの舞台も経験した国際ライダーの経歴を持つK2tecの久保和寛氏は2ストロークレーサーのエキスパートであり、その経験とキャリアを生かした製品開発には定評がある。

レース経験が豊富なコンストラクターが開発するチャンバーというと、ともすれば高回転で本領を発揮するサーキット寄りの味付けを想像するかも知れない。だがK2tecが作り出す製品は、蓄積されたノウハウを活かすことで多くのユーザーがストリートで扱いやすいよう開発されているのが特長である。

エンジン回転の上昇に伴って弾けるように吹け上がる2ストならではのフィーリングがスポイルされているようなことはないが、むやみに高回転型にしないことで普段の街乗りでも神経質さを感じさせず、キャブレターセッティング不要で中速のトルクアップが実感できる実用性の高さは、純正マフラーのリプレース用としても価値が高い。

ストリートで扱いやすいことに加えて、純正カウルが装着できるよう入念にレイアウトが検討されている点にも注目したい。3型/4型/5型用アフターマーケットチャンバーは選択肢が皆無と言っても過言ではなく、純正マフラーの中にも転倒やサビなどダメージを負っているものが少なくない。そうした車両のユーザーは、アフターマーケットパーツに対して純正互換のフィッティング性も期待する。ましてや昨今の絶版車界にはノーマルスタイルを尊重するトレンドがあり、フルカウル車であればアンダーカウルまですべて装着できるものが好まれる。

排気デバイスを装着する3型/4型/5型用シリンダーは、エキゾーストフランジ部分の寸法が1型/2型と異なるため、エキパイ部分が独自の形状となる。また純正アンダーカウルはエンジン下部からサイレンサー部分まですっぽりカバーするデザインで、後部はサイドカバーともつながっているため、膨張室のサイズやサイレンサーのレイアウトにも制約がある。そこでK2tecは純正アンダーカウル装着車で検討を重ね、目標とする性能をクリアしながらカウルに干渉しない新型チャンバーを完成させた。

素材や仕上げの違いによって4種類の製品が用意されている3型/4型/5型用チャンバーの中で、鏡面ステンレスを用いたタイプは見た目の美しさも特筆もので、それだけでバイク全体の魅力が格段にアップする。そんなチャンバーをアンダーカウルで隠してしまうのは惜しいが、必要に応じて着脱できるのはノーマル派、カスタム派の双方にとって望ましいはずだ。

現在もなおRG250ガンマを愛し続けるライダーは、同時期のレーサーレプリカを所有するユーザーの中でもこだわりの強さは随一と言えるだろう。2ストらしい胸のすく加速と扱いやすさを両立するK2tecのチャンバーによって、その魅力がいっそう際立つことだろう。



RG250ガンマ3型/4型/5型 ストレートチャンバーTYPE-1
6万2700円(税込)

中速域でのトルクアップやレスポンス向上といったK2tec製チャンバーの特性をスポイルすることなく、スチール素材を使用しエキパイ部分の製法を工夫することでリーズナブルな価格を実現した「ストレートチャンバーTYPE-1」。経年劣化や転倒によるダメージを負った純正マフラーの交換用としても魅力的な製品である。表面仕上げはクリアー塗装。



RG250ガンマ3型/4型/5型 K2チャンバー TYPE-2(スチール製クリアー塗装仕上げ)
13万900円(税込)

RG250ガンマ3型/4型/5型 STDステンレスチャンバー TYPE-2(ステンレス生地)
15万8400円(税込)

RG250ガンマ3型/4型/5型 鏡面ステンレスチャンバー TYPE-2(ステンレス鏡面仕上げ)
16万9400円(税込)

エキゾーストパイプ部分の溶接仕上げが美しい「TYPE-2」には、クリアー塗装仕上げのスチール製、ステンレス生地製、鏡面ステンレス製の3タイプがある。エンジン下部からサイレンサー前端までをカバーし、サイドカバーとつながるアンダーカウルが干渉しないよう、膨張室はフレームにぴったりと寄せられ端正なフォルムに仕上がっている。

INFORMATION

住所/大阪府羽曳野市野110
電話/072-952-2958
営業時間/9:00~17:00

かつて、ヤマハのテストライダーとして2ストレーサーTZ125の開発に携わり、世界グランプリにもワイルドカード出場を果たした久保和寛選手。久保選手がレース活動に区切りをつけた後に、チャンバー・マフラーのコンストラクターとして独立したときのブランド、それがK2-tec(ケーツーテック)です。自身がテストライダーだったという経歴は、マフラーの開発にも大いに活かされ、「ライダー兼コンストラクター」であることが多くのファンに支持されてもいます。ただし、市販マフラー・チャンバーは、レース用のそれとは異なるもの。かつてバイクブロスでは「市販品はユーザーの求める性能レベルと、彼らが手に取れるほどの価格をバランスさせて、製品にその価格以上の価値があることを認めてもらうことが大切」という話を取材させていただいたことがあります。なお、ヤマハ出身ながら、近年はNSR250R(MC28・21)用チャンバーでも話題を集めるなど、製品ラインアップはホンダなど他メーカー、汎用品にも及んでいます。