上質かつスポーティに生まれ変わったアドバンテージZ900RS

掲載日/2022年12月28日
取材協力、ホイール開発/アドバンテージK's PRO
写真/海保研 取材、文/和歌山利宏
構成/バイクブロス・マガジンズ
兵庫県尼崎市に居を構えるフットワークパーツのプロショップ「アドバンテージ」がZ900RSをカスタマイズ。特にサスペンションにはワールドスーパーバイク(WSBK)でも使われるSHOWAのバランスフリーを採用している。そんなZ900RSを和歌山利宏がインプレッション!

スポーティさに支配された第一印象

テストライダー:和歌山利宏

このアドバンテージによるZ900RSには、前後サスペンションにSHOWAのバランスフリータイプが装着され、サスペンション性能が現時点における最高水準に引き上げられている。しかし、このZ900RSが素晴らしいのは、それだけではない。マグネシウム鍛造ホイールやダイレクトドライブ式のブレーキディスクの良さが、高水準化されたサスペンションによってさらに昇華され、無類の完成度を見せ付けていたのである。

さりげなく走り始めれば、このZ900RSがZ900RS以外の何物でもないと分かる。乗り慣れた乗り味そのもので、扱いやすくもいい意味での存在感が伝わる。でも、軽く車線変更したり、目の前のコーナーに沿って楽しむ気持ちが芽生えると、ノーマルにはないスポーティさが感じられるではないか。

フロントにはスーパースポーツを思わせるダイレクト感があって、意志通りに向きを変えてくれる。断わっておくが、スポーティさを強調した一部のカスタムバイクのようにシャープな回頭性が鼻についたり、ゆったりとした安定感が損なわれているわけでない。正直に言うと、ステアリングがわずかに遅れて反応してくれるような大らかさがあって、こうしたトラディショナル指向のバイクなら悪くないと思えないでもない。このことには、ブリヂストンのRS11というサーキット指向のタイヤが装着されていることが大きく影響していようか。前作のRS10よりもクイックな回頭性が実現されていることを再認識させられるが、ツーリング指向のタイヤでも悪くないのでは、とも思ってしまう。

また、フロントフォーク径がノーマルのφ41㎜に対しφ43㎜に大径化されていることがクイックなダイレクト感に貢献していようし、リヤのリム幅が5.50から6.00に大きくなっていることもフロントの舵角の入りやすさに影響しているかもしれない。しかし、それはともかく、そうした第一印象はノーマルとの比較で感じたことに過ぎないのかもしれない。ワインディングに踏み入れて数分もすれば、そのことを忘れてしまう。それはスポーツネイキッドとしてのマッチング形であることに他ないからだ。

パッと見はZ900RSそのものだが、細部に目をやるとメカニカルな上質さが濃厚に伝わってくる。それは実際に走っての印象にも通じることである。

世界最高峰のサスペンション性能を実感

このZ900RSに装着されたバランスフリーサスは、いくつかのスーパースポーツに純正採用され、カワサキのWSBKワークスマシンにも投入されている。私もこれまでスーパースポーツのサーキット主体の試乗で、その良さを実感してきたが、公道において市販車のネイキッドスポーツでじっくり味わうのは今回が初めてだ。それは、まるでサスペンションの秀逸さを意識させないようなフィーリングなのである。

いいサスであると聞けば、連想するのは、路面からのショックをうまくいなしてくれるとか、しっかり踏ん張りながらも固さがないといったことだろうか。あるいは、姿勢変化が絶妙にコントロールされ、ハンドリングが素晴らしく、車体も安定しているといった走りの良さを思い描く方も多いだろう。確かにそのことは、このZ900RSに全て当て嵌まっている。でも、そうしたことを乗り手に気付かせないし、スーパースポーツに使われているからと言って、レーシーというわけではない。

バランスフリーサスの特徴は、減衰力発生の応答性が抜群に優れていることである。もし、応答性が悪ければ減衰力不足の症状が出るだろうし、それを補うために減衰力を高めると他方で減衰力過多の症状が出かねない。サスの踏ん張りが良いと思ったとしよう。でも、それは減衰力がしっかり効いていることを感じた結果に過ぎないのかもしれない。バランスフリーサスは、必要な減衰力を必要なだけ発生してくれる。そのことを実感させられる想いである。

フロントフォークはSHOWAのBFF(Balance Free front Fork)。インナーチューブ径はノーマルのφ41㎜に対しφ43㎜。もちろん、フルアジャスタブルだ。アクスルホルダーは総削り出し品である。

リヤショックユニットは、SHOWAのBFRC-lite(Balance Free Rear Cushion lite)。一般的なダンパー構造だと、減衰力はピストン部とボトム部、2カ所のバルブによって発生され、ピストンで仕切られたオイル室の圧力差が発生。減衰力発生の応答性に悪影響を及ぼしがちである。だが、前後のバランスフリー構造では、ピストン、減衰バルブ、サブタンクを独立させ、圧側と伸び側のバルブをコンパクトなユニットにまとめて配置することで圧力差を抑えている。これによって、ダンパーが動き始めの極低速域から、必要な減衰力を必要なだけ遅延なく発生させることができる。

手が入れられた部分全ての見事なコラボレーション

サスペンションの秀逸さは、それ単体に留まらない。前後のダイレクトドライブ式ブレーキディスクや軽量のマグネシウム鍛造ホイールの良さを昇華させているのだ。

ダイレクトドライブ式ディスクはフローティング部を点ではなく面で受けるというもので、ブレーキ力がダイレクトに伝わり、コントロール性に長けるという利点がある。そこで、わずかなブレーキ力の立ち上がりにも、減衰力は応答性よく発生。コントロール性がさらに高まっているというわけだ。

フロントディスクはφ300㎜からφ320㎜に大径化されている。当然、ブレーキも強化されているわけだが、そのことを感じさせない。高いサスペンション性能によって姿勢変化も制御されているのだが、高められたブレーキ力がこのZ900RSに溶け込んでいるのである。

そして、マグネシウムホイールは軽量で路面追従性も向上しているが、より繊細になったバネ下の動きにも、サスの応答性がしっかりフォローしてくれる。ホイールのしなやかさも加わり、路面追従性も抜群だ。さらに、クラッチはプレートが1枚増やされており、トラクションのダイレクト感が高められている。

「走り」「曲がり」「止まる」の全てが上質に高水準化され、それらが調和しているアドバンテージZ900RSだったのである。

前後ホイールはEXACT Racing10 MAGNESIUM鍛造製で、フロントサイズは3.50-17。前後タイヤはRIDGESTON BATTLAX RACING STREET RS11で、フロントは120/70ZR17 M/C (58W) TL。ブレーキディスクはAdvantage DIRECT DRIVE DISCφ320(ノーマルはφ300)。

リヤのホイールサイズは6.00-17で、ノーマルの5.50よりもワイド。リヤタイヤは190/55ZR17 M/C (75W) TL(ノーマルは180/55ZR17)。DIRECT DRIVE DISCはφ250㎜径。

エンジンは、Advantage FCC トラクションコントロールクラッチを装備。クラッチプレート、フリクションプレートともに1枚多くしている。エンジンオイルは推奨のMOTUL 300V FACTORY LINE ROAD RACING 10W40。

Z900RSのインプレッションを動画で見る

INFORMATION

住所/兵庫県尼崎市昭和通9-324
電話/06-6412-6145
営業時間/10:00~18:00

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