H2のハイパー化と友好化を昇華させたアドバンテージのEXACT2 Racing10(動画あり)

掲載日/2021年11月4日
取材協力、ホイール開発/アドバンテージ カスタム車制作:TK Factory 車両オーナー:レオさん
写真/海保研 取材、文/和歌山利宏
構成/バイクブロス・マガジンズ
アドバンテージがニンジャH2用に開発したアルミ鍛造ホイールEXACT2 Racing10。そして、そのホイールをTK Factoryによって全面的に手が入れられたH2に装着。250psを発揮し、ノーマルからおおよそ30kgも軽量化されたマシンは、EXACT2 Racing10によってハイパーぶりと友好性がさらに高次元化され、無類のスポーツ性とコントロール性を堪能させてくれたのであった。

跨ったときの友好的な第一印象は、終始、変わることはなかった

テストライダー:和歌山利宏

試乗当日の朝、目の前にしたTK FactoryのニンジャH2は、近寄りがたい威容を放っていた。外装類は全てカーボンファイバー製で、カウル左右にはウィングレットを設置、バックミラーやウィンカーにも空力チューンの手が及んでいる。前後サスペンションからブレーキ、排気系からエンジンのカバー類に至るまで手が入っていることに、度肝を抜かれたのだ。

跨ることさえもはばかれるが、意を決して跨ってみる。軽い! 一般的なノーマルアスピレーションのスーパースポーツであるかのようだ。聞けば30kgは軽量化されているというから納得である。しかも、前後のオーリンズは一般走行向けに絶妙にセッティングされていて、私の57kgの体重でも適度に沈み込んでくれるから、すんなり身体に馴染み、足着き性も悪くない。まずは一安心である。

とは言え、こうした超高性能車の場合、軽ければ必ずしも乗りやすいというものではない。挙動は鋭くなりかねないし、軽い車重がタイヤを地面に押し付けてくれるとは限らないからだ。そればかりか、ここでエンジンが250psを発揮するということを思い出し、ちょっとナーバスな気分にもなる。

でも、走り出すとエンジンはあくまでも従順そのもの。ハンドリングにも不穏な挙動はない。いくばくもなく、車体の軽さのおかげで、ノーマルよりも操りやすいことに気付かされることにもなった。

それだけではない。そのとき最初に受けた安心感は終日、裏切られることはなかった。しかも、ワインディングのコーナーを攻め込むほどに、信頼感が高まっていったのである。

車体の吸収性がコントロール性と安心感を高めてくれた

このマシンが素晴らしいのは、車体が適度にしなやかで、そのしなやかさが車体全体の中で隅々までバランスしていることである。おかげで、不安な挙動がなく安定しているだけでなく、しなやかさがマシンからのフィードバックとして伝わってくる。

その土台となるのがフレームであることは言うまでもない。しならせてコントロール性を高める狙いからH2にはトラスフレームが採用されているのだが、その良さを再認識する想いだ。高剛性のアルミツインスパーフレームだったら、こうはいくまい。また、オーナーによってセッティングされた前後オーリンズもいい仕事をしてくれている。ノーマルよりもソフト指向になっており、それがこのワインディングロードと私の体重にもぴったりだ。

そして、忘れてはならないが、アドバンテージのアルミ鍛造ホイールである。フレームのしなやかさが人体で言えば体幹から腰回り、サスペンションは股関節から膝の柔軟性に相当するとするなら、ホイールは足首に当たると言っていいだろうか。車体の動きがサスペンションを介してタイヤにうまく伝えられている感じである。

さらに言えば、ホイールのおかげで、靴底に相当するタイヤがすごくいい仕事をしてくれている。タイヤのしなやかさ、俗にいうツブレ感をホイールが昇華させていて、みずみずしく接地感が伝わってくる。

アルミ鍛造ホイールEXACT2 Racing10のしなやかさと腰の妙

実は今回、私は試乗中、H2のスイングアームが片持ちであることを、すっかり忘れていた。ホイール、それもリヤのしなやかさについては上述の通りだが、見るからに左右非対称なリヤホイールがそれだけしなやかなら、腰砕け感のような変形のネガがあるとか、コーナリング感覚が左右で異なっていて不思議ではないところである。でも、それは全くない。

これも剛性バランスに留意された設計のおかげなのであろう。非対称のスポーク形状も片持ちであることが考慮されているはずである。アドバンテージの中西さんによると、中央のハブ側を固めて周辺部に向かってしなやかさを出す方向だというから、ホイール内でも車体全体と同様の剛性バランスが行き届いていることになる。

さらに、リム部は鋳造ではありえない薄さで製造されており、軽量であること、それも外周部の軽量化は回転に伴う慣性モーメントの軽減に繋がるだけでなく、その柔軟性がタイヤの仕事を高次元化させていることにもなる。やはり、これらは鍛造製だからこそなせる技である。

フレームとサスペンション、そしてホイールの見事なコラボレーションを思い知らされた試乗であった。

ベースとなったニンジャH2は2016年型。しかし、TK Factoryによるカーボンファイバー製外装パーツによって見事に生まれ変わり、特徴的なフレームを見なければこれがH2だとはすぐには分からない。

アルミ鍛造ホイールEXACT2 Racing10のサイズは3.50-17で、タイヤはブリヂストンRS11の120/70ZR17。アクスルシャフトにはKOODの鈴鹿8耐スペシャルを使用。キャリパーはブレンボ484で、OVERの綾織カーボン製のダクトが装着される。フロントフォークはオーリンズのFGRT200である。

カウリング、可動式ウィングミラー、空力を考慮したデザインのウィンカーは、TK Factoryの綾織カーボン製。左右サイドのウィッグレットはガレージ414によるカーボン製である。

ECUのリセッティング、ダイノジェットサブコンによって、250psを発揮するエンジン。スプロケカバー、リバーマークはTK Factory製。インタークーラーキット、クリアのクラッチカバーはエクストリームクリエーションズによる。

EXACT2 Racing10は、ブリヂストンRS11とのマッチングを考慮し、サイズを6.00ではなく6.25とする。レース用以外ではEXACT2 Racing10初のサイズである。キャリパーは取り付けピッチ84㎜のブレンボレーシング。

EXACT2 Racing10のインプレッションを動画で見る

INFORMATION

住所/兵庫県尼崎市昭和通9-324
電話/06-6412-6145
営業時間/10:00~18:00

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