
ダンロップが2020年から発売を開始した新世代スポーツ&ツーリングタイヤのロードスマート4は、“4つの続く性能”をコンセプトとしている。具体的な話をするなら、①ハンドリングの最適化で興奮が続く、②抜群の衝撃吸収性と接地感によってロングランで気持ちが続く、③摩耗が進んでも本来の性能が続く、④天気や路面状況に左右されることなく走りが続く、という4つの要素を徹底的に追及。実際の開発時には、長距離走行でのストレスと疲労の軽減が重要なテーマになったそうだ。
もっとも先代の3でも、ダンロップは同様のテーマを掲げていたのである。ただし新世代の4を生み出すにあたって、開発陣は横浜国立大学の名誉教授である小泉淳一氏に協力を依頼。ロードスマート3と4の比較テストでは、ストレスと疲労度を数値として可視化するべく、ライダーの身体に心拍数センサーを装着したうえで、交感神経/副交感神経のバランス解析を実施している。二輪タイヤメーカーでこういった科学的な実証を行っているのは、おそらく、ダンロップだけではないだろうか。
もちろん先代以前と同様に、スポーツ&ツーリングタイヤとしての理想を実現するべく、ロードスマート4は数多くの新技術を導入している。中でも最も注目するべき要素は、ウェット性能とライフを大幅に高める新作コンパウンドのハイシリカXだが、偏摩耗抑制と排水性向上を念頭に置いて刷新したトレッドパターンや、リアの深層に発熱コンパウンドを配置するPCL構造、ダンロップ独自のプロファイル技術であるキャンバースラストチューニングなども、ロードスマート4を語るうえでは欠かせない要素だ。また、サイズ設定が超豊富で、重量車用のGTスペックや、一昔前の旧車に適合する18インチが存在することも、このシリーズならではの美点である。
ありゃ、1290スーパーデュークGTなのか……。撮影日の朝、試乗車と対面した僕は、何となく微妙な気持ちになってしまった。と言っても、このバイクが嫌いなわけではない。でも1290スーパーデュークGTに対する僕の印象は、GT的な資質を備えるスポーツバイク、あるいは、アグレッシブなGTで、一般的なスポーツツアラーとは趣が異なる。こういう特殊で個性的なモデルは、タイヤのインプレには向かないんじゃないか、と僕は感じていたのだ。
ところが、実際の1290スーパーデュークGTとロードスマート4の相性は抜群だった。中でも僕が感心したのは、KTMならではの軽快感とスポーツ性がまったく阻害されていないこと。逆に言うなら、運動性に優れるモデルにスポーツ&ツーリングタイヤを履くと、穏やかで安定指向のハンドリングにガッカリすることがあるのだけれど、ロードスマート4にそういった気配は皆無。ワインディングロードでは極上の接地感と旋回性を頼りにしながら、思いっ切りスポーツライディングが堪能できるのである。
もっともそういう使い方、ワインディングロードでの性能を重視するなら、同じダンロップのα-14やQ4、ロードスポーツ2のほうが、さらに走りに没頭できるだろう。とはいえ、ツーリング中に遭遇する事情を把握していないワインディングロードなら、ロードスマート4の運動性は十分以上なのだ。と言うより、高い荷重や積極的な荷重移動を要求して来ないぶん、スポーツライディングの充実感は、ロードスマート4のほうが得やすいのかもしれない。
それに加えて良好な乗り心地も、ロードスマート4の特筆したくなる要素である。実は僕は過去に1290スーパーデュークGTを体験した際に、低中速域における凹凸の吸収性に不満を抱き、前後ショックをいろいろといじってみたのだが、今回の試乗ではセッティングの必然性を感じなかった。と言うより、あまりに吸収性が素晴らしいので、ある程度までの凹凸なら回避という手法を選択せず、そのまま突っ込んで普通に走って行けたのである。そしてそういう走り方をしても、車体の挙動はまったく乱れなかったし、もちろん、身体にイヤな衝撃を感じることもなかった。
ちなみに、今回は丸一日晴天だったものの、過去の試乗で僕はロードスマート4の環境適応能力の高さ、雨天走行時の安心感や冷間時からの暖まりの早さを認識している。いずれにしてもロードスマート4は、状況に応じた気遣いをほとんど必要としない、イージーでフレンドリーなタイヤなのだ。
もっともスポーツ&ツーリングタイヤの真価は、1日の試乗だけではわからないものである。とはいえ、今回のテストにおける心身の疲労の少なさを考えると、ロードスマート4で出かけるロングツーリングは相当に楽しいに違いない。事実、試乗中の僕は、このまま北海道か九州までも出かけたい! という気持ちを抑えるのに必死だったのだ。