掲載日:2023年10月11日 プロが造るカスタム
取材協力/BITE 取材・写真・文/ガスグラフィックス
ラメが入ったような煌びやかさと、鮮やかなグリーンの発色。東京都八王子にあるBITE(ホンダドリーム八王子)が当時製作した08フォルツァには、あの時代に注目されていたエキショウカラーが施されていた。このペイントは、オリジナルカスタムカラーの企画、開発、販売などを手掛けるSHOW UP(ショウアップ)が製品化したもの。テレビのモニターなどに使われる液晶は、液体なのに個体のような物質で、光に対して屈折の仕方が異なるという特性を持つ。この特徴を利用して、液晶の粉体をベースカラーの上に塗装することで、光の加減で様々な表情を見せるという、数ある塗料の中のひとつの製品なのだ。4輪の世界では、スポーツコンパクトやアメリカンラグジュアリーなど、派手さを主張するジャンルに好まれた塗装で、BITEではその最新トレンドをいち早くビッグスクーターに踏襲したのだ。この写真を見るだけでも、光の陰影でだいぶ印象が変わってみえるはずだ。光が強く当たる部分は、蛍光色のような輝きに。正反対に、影の部分ではグリーンにも見えてくる。グラフィックは施さず、色味だけで愛車を目立たせたいというユーザーにとっては、このエキショウカラーは最善の手法だった。
この08フォルツァにエキショウカラーが映える理由は、BITEの車両作りにも理由がある。当時もホンダディーラーであり、現在はドリーム店へと進化したように、BITEは基本的にバイク販売店であってカスタムショップではない。つまり、過激なビジュアル重視のスタイルではなく、バイクとして正しい方向性に進化させたカスタムが、BITE流だった。ヘッドライトやウインカーを隠さない自社エアロ。低くし過ぎない車高。パワーフィールの追求や、安全に走るためのブレーキ性能の向上など、ドレスアップ的観点に、ディーラーならではの正しいバイクの在り方としての方向性を必ず注入してきたのだ。現在は、こうした一般的なバイク販売店が、大掛かりなビッグスクーターカスタムを手掛けることは無い。だからこそ、同業で生き残るカスタム専門のプロショップであったり、実際に車両に乗るユーザー側が、安心安全という観点でもカスタムを考える必要性がある、ということを認識してほしい。