

掲載日:2017年03月09日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/山家 健一 衣装協力/HYOD
ベスパに「アドベンチャー」というネームはおよそ似合わない感じがするかもしれない。だが、実は1980年の第2回パリ・ダカールラリーにおいて4台の ベスパP200Eが参戦し、何とそのうちの2台が完走するという快挙を成し遂げている。パリダカと言えば、世界一過酷と言われる冒険ラリーの代名詞。ファクトリー体制でのバックアップがあったとは言え、荒涼たる砂漠やガレ場を超えてのスクーターでの長旅は想像を絶するものだ。そんな男のロマンに現実味をもって応えてくれそうなモデルが「スプリント150ABSアドベンチャー」である。
「アドベンチャー」は元々、ベスパの生産拠点があるベトナムからの要望により開発が進められたという。ベトナムに限らずだが、東南アジアの田舎に行くとまだまだ未舗装路が多く、バイクやスクーターは庶民の足であり荷物を運ぶ実用車でもある。このモデルに独特の雰囲気を与えている前後に装備されたキャリアーラックは、まさに“使える道具”を連想させるものだ。お洒落なベスパに剥き出しの荷台を無造作にくっ付けたミスマッチ感に最初はやや戸惑うが、見慣れるとこの無骨さがなんともカッコよく思えてくる。砂漠をイメージしたという淡い黄褐色のアースカラーと黒塗りの機能パーツ、そしてシンブルなスモークスクリーンがまた実によく似合っているのだ。
ベースとなったスプリント150ABSは2016年にモデルチェンジを行い、エンジンと足まわりが変わっている。アドベンチャーも同様で、新設計の「 i-Get 」エンジンは最高出力が1psほど増えてより元気になった。旧型と乗り比べたわけではないので明確なことは言えないが、加速にメリハリが出てきた気がする。
最近乗った同じくベスパのプリマベーラ(125cc)に比べても、やはり上乗せされた力強さを感じる。スロットルを開けたときの出足の良さや、中間加速からの伸び感などは排気量以上のものがある。150ccということで普通二輪免許になってしまうが、タンデムで高速道路にも乗れるというのが魅力。そのために高速巡行できる動力性能も備えているということだ。スクリーンも視界の邪魔にならない程よい大きさで、走行風から顔の下半分をプロテクトしてくれる。取り付けもしっかりしていて強度も十分だ。
乗り味に関しては、ベスパ独特のスチールモノコック構造が影響していると思うが、カッチリとした剛性感が印象的。新型ではホイールサイズが拡大され、前後12インチが採用されたおかげでコーナリングでの安定感も高まっている。加えてABSがフロントに装備されたことで、万が一の急ブレーキも安心してかけられるようになったし、リアブレーキもこれに合わせてロックしにくい設定になっている。
車体の前後に装備されたラックは耐荷重4kgということで、けっこうな荷物も詰めるはずだが、畳むためのバネが強いので柔らかいモノは向いていないだろう。雰囲気からいって林檎を詰めた木箱などを積んでお洒落に街を流すか、アタッシュケースを括り付けてビジネス街を疾走しても絵になるし、キャンプ道具を満載して冒険への旅立ちを演出してみるのもいいかも。
見栄えのする大柄な車体に存在感のあるシルエット。ベスパが本来持っているエレガントさの中にワイルドな冒険マインドを詰め込んだロマン溢れるスクーターである。渋い大人の男性にこそ是非乗ってもらいたい一台だ。
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