

掲載日:2013年12月24日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/MOTOCOM 衣装協力/HYOD
見た目はスクーターというよりはモーターサイクルのよう。走りを予感させるアグレッシブなデザイン、ブラックアウトされた車体はまるでステルス戦闘機のようにも見える。なんといっても圧巻は、スーパーバイクチャンピオンマシン「RSV4」とそっくりの顔。バックミラー越しにはきっと勘違いされるに違いない。
まずは大きさに圧倒される。スクーター界では世界最大級の排気量という先入観があるからかもしれないが、仮想ライバルとなる他のメガスクーター勢に比べて、ひと回り大きく見える。実際のデータでは車格はBMW C600&650GTやスカイウェイブ650などと同等レベルなのだが。
跨ってみると、やはり大きい。シート高は780mmなのだが車幅があるので、足着きはまあまあといったところ。スクーターとしてはやや低めのハンドルバー、低いスクリーンがスポーティだ。
マーナ850譲りの水冷90度Vツインエンジンは、ソリッドな鼓動感があり、歯切れのいいサウンドを楽しませてくれる。自動遠心クラッチのつながりもダイレクト感があり、スクーターにありがちなスタートでのタイムラグもほとんどなく、オートマチック機構による加速もスムーズだ。
驚きはパワー。76psというスペックもさることながら、スロットル全開時の加速感たるやスクーターの常識を覆す強烈さ。構えていないと後ろにのけ反るほどだ。これがスクーターと呼べるなら、明らかに世界最速。その点では異論を挟む余地はない。高速道路などはまさにSRV850の独壇場で、その気になればスロットルひとつでクルマの列を縫っていける。高速域でのスタビリティも素晴らしく、レーンチェンジでのもたつきやスクーターにありがちなネック付近のヨレもない。サスペンションもダンパーが効いていて、路面のギャップに屈することなく270kgの車体をしっかり支えてくれる。
ハンドリングは重厚でヒラヒラ感はないのだが、それがかえって安心。もしこれが、小径ホイールのスクーターのように変に軽快だったとするとかえって怖いはずだ。SRV850はフロント16インチ(リヤは15インチ)を採用しているため、路面の影響を受けにくく安定している。つまり、通常のモーターサイクルに近い感覚でコーナリングできるのだ。
ブレンボ製ダブルディスクも強力でタッチも分かりやすく、コーナー進入での速度コントロールもしやすい。リヤブレーキは強くかけるとロックしやすいが、ロック直前にレバーから伝わる微振動があるのでそれが目安になるはずだ。
シート下のラゲッジスペースは、フルフェイスだとギリギリ1個積めるかどうかといったところ。電子ロックやルームライト、電源ソケットなどの装備は充実しているが、積載性に関しては標準的と言っていい。また、ハンドル切れ角とオートマの利点を生かして、意外にもUターンなどの小回りは効くのだが、街乗りメインで使うにはその巨体とパワーを持て余し気味かも。あくまでも、走り優先のスポーツモデルなのだ。
SRV850をひと口に表現するならば、スクーター界のハヤブサや14Rといったところ。つまりは“メガスポーツ”だ。ただ、ここまでくると正直、ABSやトラコンも欲しい気もする。来年以降にABS-ATC仕様も入荷する予定もあるそうなので、こちらにも期待したいところだ。
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