

掲載日:2009年04月02日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
シルバーウイングGTにまたがって最初に感心することは、足着き性の良さだ。見た目は大柄でボリュームのあるシートだが、ステップボードの形状が工夫されているため不安は少なく、「大きすぎて乗るだけで大変かも」と尻込みする必要はないだろう。いざ走り出してみると、フットワークは意外なほど軽快。「ビッグスクーターはあまり走らない」という先入観を払拭してくれるほど、並列2気筒エンジンが生み出すパワーは力強く、排気音も迫力がある。特に中速域が扱いやすくパワフルなため、右手の軽いアクションで加速が行え交通の流れの中でもストレスを感じない。ブレーキはシングルディスクだが、制動力はパワーに見合ったものとなっており、効きやコントロール性は十分なレベル。個人的にはレバーの引きしろが少ないように感じたが、これは慣れで対応できるだろう。むしろスポーツバイクからの乗り換えの場合、少ない引き込みで素早く立ち上がるブレーキは好印象を受けるのではないだろうか。
車幅が770mmと広いために、街中でのせわしない動きは苦手に感じることもあるが、郊外の道や高速道路など、ツーリングシーンでの安定感と快適性は素晴らしいレベルだ。今回のインプレッションでは首都高速をはじめ、常磐道、東関東道、京葉道路を走行したが、強風にあおられるようなシチュエーションでも車体はピタリと定まっており、まるで大型スポーツのような安定感だ。ヘルメットに当たる風がきついように感じた時も、アゴを少し引いてやれば空力を追求されたスクリーンの恩恵にあずかれる。風の影響を受けにくいボディ形状と、振動の少ないエンジン特性によって、ロングクルージングはすこぶる快適だ。包み込むような座り心地のシートに身体を預け、6500回転前後をキープして走る心地良さは、まさに「走るソファ」に乗っているかのよう。残念ながらタンデムでの試乗は行えなかったが、パッセンジャーにもこの快適さが伝わるのか、機会があればぜひ一度試してみたいところだ。「快適な居住性を持つ400cc」とカテゴライズした場合、シルバーウイングGTは文句無しでトップクラスの実力を持っていると言える。
シルバーウイングGTはビッグスクーターにカテゴライズされるバイクだが、走りの本質としてはツアラーに近い乗り物。週末には旅の荷物を満載して、パートナーと高速道路を駆け抜ける…そんなバイクライフを送りたいなら、最適な選択肢の一つだ。シート下収納スペースを使えば荷物を濡らすこともないし、高い防風性能と余裕あるエンジンパワーは疲労の少ない走行を約束してくれる。マニュアルミッション車が持つ走りの楽しさも捨てがたいが、この快適性を見過ごしてしまうのはもったいない。ツーリングバイクの新しいカタチとして、心地良い旅を求めるタンデムツアラーにおすすめしたい1台だ。
最近大排気量スクーターを何度かインプレッションして感じたのは、単純に「スクーター」という言葉で捉えてしまってはいけないということだ。一昔前に比べて、操縦安定性やエンジンパワーなども含めて、ますますスポーツバイクの領域に近づきつつある。今回のシルバーウイングGTにもそれが顕著に現れており、ツアラーとしての実力はスポーツバイクに劣らないものがある。より快適に長距離を走るバイクとして、ビッグスクーターは今や十分な水準に達している。今回のインプレッションにおいても「これが試乗でなかったらもっと遠くまで行けるのに」と思うことが何度もあった。このバイクなら、面倒に感じるパッキングの悩みもなく、カウルレスのバイクで味わう風の抵抗も気にする必要が無い。シフトチェンジに煩わされることなく、ただ走り続けることに集中できるのは、大きな利点。シルバーウイングGTは、ビッグスクーターではなく「オートマチックツアラー」というカテゴリを新たに提示しているかのように思える、というのは少し言い過ぎだろうか。右手だけで操るコンフォートな「ツーリングマシン」として、シルバーウイングGTは出色の完成度を持っている。
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