掲載日:2015年04月30日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真/山家 健一 動画/倉田 昌幸 衣装協力/HYOD
スターシリーズの最高峰モデルであるXV1900CUに最近乗ったばかりだからなのか、目の前のXVS1300CUはだいぶ小ぶりでスリムに見える。跨ってみると一層そう感じる。スペック的な車両サイズは数センチしか変わらない。でもたとえばホイールベースで50mm、車重で40kg弱、シート高での25mmの違いはやはり大きい。実際のところ足着きでの安心感が違うし、1900だと降車して取り回すところを1300だと乗ったままバックしたりもできる。ハンドル幅も絞られているのですり抜けなども断然やりやすいのだ。試乗する前は、なんか中途半端な排気量だな、と思っていたのだがどっこい、機動性に優れた実用的な面を見せつけられた。
スタイリングもよくよく見ると個性的だ。大らかな車体とメッキパーツを多用した優雅な長兄モデルの1900と比べると、低く構えた面持ちやマットブラックを多用した装いもどこか気の強い次男坊といった感じ。走りの印象はというと、これも見た目どおりだ。
エンジンは排気量こそ3分の2程度しかないが、水冷SOHC4バルブでしかもショートストロークということもあり回転フィールはスムーズで滑らか。メカノイズも少なく出力特性の輪郭がよりクッキリしている感じだ。ひと口に言うと、より現代的なフィール。1900のいかにもロングストローカーらしいドコドコした味わいもいいが、シフトチェンジも駆使しながら小気味よく走りたい向きにはこちらもおすすめ。それでいて、回転数をコントロールすれば、不等間隔爆発の“らしさ”も十二分に堪能できる。兄弟だからもちろん似ているが、互いに独自のキャラクターがある。その意味で、きっちり棲み分けができているわけだ。
ハンドリングもシュアだ。1900に試乗したときにフルサイズのクルーザー随一の軽快なハンドリングと称したが、1300はそれを上回る。大きなフロントホイールやワイドで扁平したリアタイヤを見て、これはスタイル優先のモデルなのかと思いきや、走り出すとクセがないどころか素直そのもの。リラックスして体重移動するだけで、まさにオン・ザ・レール感覚で楽に曲がってくれる。最新スポーツモデルの車体作りも参考にしたというディメンションのおかげだろうか、ハンドリングにスポーツマインドが感じられるのだ。
1900でペースを上げると、その車格と重量によって多少なりともアンダーステア傾向が出てくるが、同じコーナーを曲がっていても1300ではそれを感じない。バンク角もかなり深く設定されていることからもスポーティな走りを想定していることが伺える。
クルーザーの本場、北米でも1300のユーザー層は“ちょっと若め”で、スポーツバイクからの乗り換え組も多いそうだ。街を流してもクールなチョッパースタイルは様になるし、ワインディングを気持ちよく走るのもいい。サイズ的にも日本人が日本の環境で乗るにはジャストサイズなクルーザーと言えるだろう。