

掲載日:2014年10月20日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/山家健一 衣装協力/HYOD
まずは見た目で圧倒される。低く長い車体と筋骨隆々としたボディデザインによるところも大きいとは思うが、この迫力とデカさは半端ではない。実際のところ、1705mmのホイールベースはゴールドウイングを若干上回り、あのCB1300シリーズより20cm近くも長いと聞けば、納得していただけるだろうか。
跨ってみようと思うだけで少し気合いが入る。シート高735mmと数値的には低めだが、実際にはシート幅も広く車重もあるため油断はできない。ただ、ライポジそのものは見た目によらずコンパクトで、ハンドルやステップもごく自然な位置にある。バイクを積極的に操作することを前提としたライポジだ。
F6Cの真骨頂は何といっても水平対向6気筒エンジンだろう。巨漢バイクは数多あれど、現行の2輪バイクでフラットシックス(F6)を採用しているのはゴールドウイングシリーズだけだ。4輪界ではスバルやポルシェなどの高性能スポーツカーにも採用されているレイアウトだが、クランク軸を挟んで左右方向に3本ずつのシリンダーを相対して並べることで、低重心化と振動面での完全バランスが図られるなどのメリットがある。その巨大なエンジンの構造が、これ見よがしに外から見えるようにデザインされているところも、F6ファンにとっては堪らないだろう。
メインキーをオンにすると、イルミネーションのように輝くメーターにまず感動。ホンダらしい精緻さで、セル一発で巨大なF6エンジンが目覚める。アイドリングだけでスルスルと走り出す滑らかさはまさに“シルキーシックス”。鼓動とは無縁のひたすらスムーズな世界だ。ただし、それはクルーズしているときの話。ひとたびアクセルを開けると、シャフトドライブ特有のトルクリアクションにより、シートを持ち上げながら猛然とダッシュする。ゴールドウイングより75kg軽い車体と8psアップされたエンジンにより、加速力は間違いなくシリーズ一。サウンドもひと際豪快だ。
ツインビームの高剛性アルミフレームを採用するなど車体の骨格がしっかりしているためか、クルーザーらしからぬ折り目正しい乗り味が印象的。それでいて、クッションの効いた厚盛シートとカートリッジ式フロントフォーク、プロリンクサスのおかげで乗り心地は快適だ。カウルやスクリーンは持たないが、巨大なラジエターカバーと傾斜したフロントマスクが風を跳ね除けてくれるし、余裕綽々のトルクとシルキーな回転フィールにより、高速クルーズも実に気持ちがいい。
コーナーでも巨体に似合わず機敏な動きをする。クランク軸が縦置きということもあるが、左右へのバンキングは軽やか。それでいて、低重心ならではの安定感があり、フロント19インチの大径ホイールにより常に前輪にどっしりとした接地感を感じられるのがいい。ABS装備のブレーキは制動力も十分で安心感が高い。特にリヤブレーキの効きがいいので、フットペダルだけで楽に速度コントロールできる点はメリットだ。重量があるので無理はできないが、節度をわきまえれば峠道でスポーティなコーナリングを楽しむこともできるだろう。また、極低速域でのバランスも良いので、車格と重量に慣れてくると都市部での渋滞路もそれほど苦にならなくなった。これもF6エンジンのメリットと言えるだろう。
かつて、ゴールドウイングベースのカスタムモデルで「ワルキューレ」というモデルが存在したが、F6Cはいわば現代版のそれに当たるかも。シンプルに気軽に、そして、より積極的にフラットシックスの走りを楽しみたい向きにおすすめしたい1台だ。
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