掲載日:2023年05月08日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/小松 男
BRIXTON FELSBERG125XC
『BRIXTON MOTORCYCLES(以下ブリクストン)』。聞きなれないモーターサイクルブランドであるかもしれないが、そのブリクストンを世界各国のプレミアムモーターサイクルを日本へと上陸させてきたモータリストが取り扱いを開始した。ブリクストンが生み出すバイクはどれもデザイン性に富んでおり、東京モーターサイクルショー2023では多くのライダーから注目を浴び、SNSをはじめホットな話題となっていた。今回はそんなブリクストンのクロスカントリーモデル、FELSBERG125XC(フェルスベルク125XC)をいち早く取り上げてテストインプレッションを行っていこう。
ブリクストンというブランドについて簡単に触れることから話を始めよう。英国ロンドン郊外のサブカルチャー的なストリートムーブメントを意識しつつ、ランブレッタの復活などを手掛けたオーストリアのKSRグループが立ち上げたモーターサイクルブランドである。
125㏄シングル~1200㏄並列ツインエンジンまでワイドレンジなラインナップ展開をしており、どのモデルもデザイン性の高さから、バイク業界だけでなくアパレルやメディア業界からも注目されているブランドなのである。私自身も東京モーターサイクルショー2023の会場にてブリクストンの実車を初めて目の前にし、その素敵な佇まいに興味を抱いたものである。
そんなことから、一足先に試乗テストを行ってみたいという欲に駆られたのだが、話によると国内では11車種のモデル展開が予定されており、どのモデルをピックアップしようかとても悩んだ。そのような中、昨今国内外の各メーカーがこぞって125㏄クラスに参入、モデル拡充を推し進めているのは肌で感じていることもあり、あえてブリクストンの125㏄モデルのひとつであるフェルスベルク125XCにターゲットを絞ることにした。それでは実際に触れた感触をお伝えしてゆこう。
フェルスベルク125XCは東京モーターサイクルショーに展示されていなかったモデルだ。125ccクラスでありながらもほぼフルサイズと言えるボディワーク、クラシカルなテイストでありながらも、モダンな印象を受けるデザイン、そして何よりも目を惹きつけられたのは周囲の景色を写し込むクロームメッキタンク。そこに置いてあるだけでも存在感のあるモデルだ。
車両にまたがると、ハンドルの幅やシートの高さなどが程よいサイズで設定されており、傍から見て想像していた以上に、体にフィットすると感じた(私の身長体重は178cm、70kg)。セルスターターを押すと、小排気量シングル特有の軽やかなエキゾーストノートを奏でながらエンジンが目を覚ました。
ミッションを1速に入れて優しくクラッチを繋ぐ。排気量125㏄でありながらも低回転域からしっかりとトルクがある特性であること、低速重視気味のギア比であることから、ストレスの無い発進を行うことができる。クロスカントリーモデルということで、長めのストロークとされた前後サスペンションではあるが、ストリートで扱いやすい設定となっている。フロント18、リア17インチとされたタイヤサイズは独特のハンドリングではあるが、コーナーリング時の寝かしこみ、そしてきっかけはつかみやすく、シャープでもダルでもない。これはオフロードモデル的な感触に近いものではあるが、全体的にバランスが取れているので、オンロードでも手ごたえが良いのだ。
ストリートでは軽量コンパクトな車体、そして低中速域での扱いやすさを活かして、交通の流れをリードすることすらできてしまう。幹線道路で全開走行を続けるというロードスポーツモデル的な遊び方よりも、どちらかというと、程よい速度域でのクルージングを楽しむという方がキャラクターに合っている。
本格的なオフロードマシンと比べてしまえば、絶対的なオフロード走破性能は引けを取ると言わざるを得ないが、スキルがなくとも未舗装路へと誘うパッケージとなっているので、林道ツーリングやキャンプツーリングなども気負いなく楽しめるだろう。付け加えるならばタンデム走行も難なくこなしたので、デートスペシャルにも適している。つまり、バイクのあるライフスタイルに寄り添ったモデルなのである。
ブリクストンのようなこれまで日本に上陸していなかった新勢力の中には、新鮮な見た目や価格設定など魅力的に思えるものもあるのだが、やはり乗ってみるとちゃんと走らなかったりするファッションだけのモデルもある。そのような中で、フェルスベルグ125XCはデザイン性、作り込みのクオリティ、手ごろな価格であるうえに、”しっかり走る”。
私はこれまで数え切れないほどのバイクに乗ってきているが、その中でもブリクストンのフェルスベルク125XCはなかなかよいモデルであると思えたし、ブリクストンというメーカーが作り出す他のモデルにも乗ってみたくなった。販売網も全国的に拡大しているので、興味を持った方は、最寄りのディーラーを探して、実際に見て触れてほしい。
排気量124cc、空冷SOHCシングルエンジンを搭載している。最高出力は約11馬力、最大トルクは9.7Nm。低回転での粘りがあり、扱いやすい特性となっている。
100/90-18サイズのブロックタイヤをフロントにセット。未舗装路でも臆することなく入っていくことができた。サスペンションは長めに見えるが、思っていたほどストローク量はないようで、オンロードでの走りをメインとしているようだ。
後方高くにセットされたエキゾーストシステム。シングルエンジンならではの歯切れのよいサウンドを轟かせる。エキパイ部分にバンテージテープが巻かれているのも雰囲気があって良い。
オーソドックスな丸型ヘッドライトケースでありながらも、マットブラックとすることに加え、ブリクストンの”X”をあしらったLEDヘッドライトやライトガードなどで個性的なデザインとなっている。アップタイプのフェンダーもポイント。
ミッションは5速リターン式。ファイナルがローギアード気味なので出だしは快活、そしてギア比自体はロング気味なのでクルージングも楽。ライディングポジションも広めで快適。
ライディングシートはフラットであり、ポジションの自由度が高い。前後長が長く設定されているので、タンデムライドも具合がよく、荷物の積載も容易だった。シート高は820mm。
ノーマルでクロームメッキタンクを採用しているのはかなり攻めていると思う。輝きを維持するためのメンテや耐久性も気になるところではあるが、そんなことよりもまずカッコいい! これに尽きる。タンク容量は11.5リットル。
「えっ、嘘、16000回転も回るの!?」と一瞬思ってしまったタコメーターだが、実際は1万回転ちょっとのところでリミッターが作動する。私の体格ではバーパッドでメーターの下半分が見えないことがあったので、ハンドル角度の調整かパッドを外すなどしたい。
安楽なライディングポジションであり、スタンディングライドなどもしやすい、アップライトなバーハンドル。ワイドに見えるが、程よい幅であり、車体を扱いやすく、狭い道もスイスイ入っていける。
スマートフォンやアクションカムなどガジェット類の給電にも便利なUSB充電ソケットも標準装備。”ここにありますよ!”感が強いが、その分使いやすい位置だと言える。
テールセクションも昔ながらのクロスカントリーやスクランブラーモデルを彷彿させるデザインで纏められている。小型LEDウインカーの採用でモダンな雰囲気も追加されている。
リアサスペンションはプリロード調整機構式のツインショックを採用。テスト前に体重をかけて沈み込ませた際にダンパー性能が弱いかと思っていたが、実際に走らせてみるとバランスがよく驚かされた。
リアタイヤは120/80-17サイズ。前後タイヤが1インチの差を持たされていることが、道を選ばず、気持ちよく走ることができるポイントにもなっている。シンプルな構成なので、バイクメンテナンスを覚えるのにも適した素材となるだろう。
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