掲載日:2019年12月12日 フォトTOPICS
写真/増井 貴光 取材・文/小松 男
第五回 ディテールと補正編
【この記事の目次】
■LESSON 01 バイクの特徴的な部分をディテールカットとして切り取る!
■LESSON 02 ヘルメットなどのライディングギアを写す!
■まとめ
これまでiPhone使い、SNS映えするようなカッコいいバイク写真を目指して行ってきたレクチャーですが、前回までで、基本的な撮影テクニックはほとんどご紹介することができました。そこで今回は、これまでのテクニックを応用しつつ、バイクのディテールやヘルメットをはじめとした周辺用品に近づいて撮るイメージカットをご説明していきたいと思います。
ここで知っておいて欲しいのは、“イメージカット”という写真なのですが、例えば、カタログや雑誌などでバイクそのものを紹介するものは、バイクがどのようなものなのかをしっかり見せなければならないもので、“説明カット”と呼ばれることが多いものです。バイクの左右からしっかりと撮影したり、前後7:3の比率から撮影したもの、あとはブレーキやシートなどのディテールも説明するための写真となります。
一方でイメージカットというのはどのようなものなのかと言いますと、そのバイクに似合うシーンに置いて撮影することや、その背景を活かして魅力を引き立てるような撮影を行います。スポーツバイクならサーキットのパドック、ツーリングモデルなら広々とした地平線、オフロードバイクならダートセクションなど、そのバイクの魅力をイメージさせるようなシチュエーションを作り出して撮影しているのです。
左の写真がイメージカットで、右の写真は説明カットです。お伝えしたいことのニュアンスはなんとなくご理解いただけますでしょうか。
これまでロケーション編などでお伝えしてきたものも、基本的にはイメージカット撮影の一環です。ただ、それはツーリング最中で出会う素晴らしい景色をはじめ、実際にバイクに乗ってそこに行かなければ見ることのできないシーンを使うものです。ここで紹介するディテールカットなどは、たとえばガレージの中であったり家の近所などでも、簡単に撮影することができるものです。つまり、日々の生活に追われていて、なかなかバイクに乗る機会が無くても、ちょっとした工夫をするだけでSNS映えするような写真を作ることができるのです。
それでは今回も、iPhoneを使った素敵なバイク写真を撮るための指南役として、数々のバイク媒体で活躍する増井貴光カメラマンを講師とし、レクチャーを行っていきます。
バイクにはそれぞれ特徴的な部分があります。それはタンクやヘッドライトの形状であったり、またはエンジンなのかもしれません。そういった部分をフィーチャーしつつ、イメージカットとして仕立て上げれば、それもひとつの作品となるのです。
例えば今回撮影のために用意したホンダ・CT110の場合、荒れ地などの走行も想定しているため、段差や岩などでトラブルにならないよう、アップマフラーが標準装備となっています。その部分にフォーカスを当てながら、撮影しました。単純にマフラーの紹介カットというよりも、どことなくオフロードを連想させるようなカットになっています。
こちらのカットではメーターを、イメージカット風に撮影しています。シンプルなシングルメーターで、基本的にはスピードメーターとして作動しているのですが、文字盤を見ると、1速から4速まで、おおよその使用速度域も表示されていることが分かります。さらにはメーター前方にキャリアも少し画角に写り込ませることで、CT110の特徴的な部分を切り取るようなイメージカットとなっています。
もちろんディテールによった部分だけでなく、自分が好きなポイントであれば、どこでも良いでしょう。ただ、まっすぐに見るだけでなく、ちょっと捻りを加えてみると、イメージカットとして面白い作品になるかもしれません。例えば上の写真は、そのスタイリングからして特徴的なCT110を、そのまま撮影するのではなく、地面に伸びた影を写すことで、どのようなバイクなのかを表現しています。このように、ちょっとした工夫で、出来上がる写真の印象は変わってくるのです。
バイクとウエアのコーディネートは、普段から気にしておきたいところです。どのようなバイクに、どのようなスタイルで乗るのか、ここ10年程でライダーの意識はずいぶん変化したことと、ライディングウエアブランドやヘルメットメーカーも、安全性を追求しつつ、一方でファッションとしてのライディングギア開発を進めてきているので、おのずとライダーの装具がスタイリッシュなものになってきました。お気に入りのギア、新調したアイテムなど、記念としてやSNSアップのために、イメージカットとして収めておくのも良いものです。
ヘルメットを写す際に、画面後方にハーレーを取り込みました。ハーレーとの距離を遠くすることで、ヘルメットに描かれたピンストライプをしっかりと見せながら、ハーレーをボケさせるという手法を用いています。その撮影風景のカットから、ある程度の距離感が掴めると思います。
ただし、今回用意したヘルメットは艶消しカラーであること、シールドレスなことから、一般的なヘルメットと比べて、映り込みが少ないということもあります。撮影している自分が、どうしても写り込んでしまう場合には、むしろその映り込みを活かした写真を撮ってみるのも良いかもしれませんね。
燃料タンクの上にグローブを置いて撮影。バイクに似合ったグローブであることや、走り出すことを予感させるイメージを表現できています。
撮影時、太陽光の射し方が綺麗だったので、サイド光から逆光の間くらいのライティングを使い、撮影しました。このようにディテールやライディングギアの撮影の場合には、ライティングも重要なポイントとなります。そもそもiPhoneでは自動的に明暗差を認識し、HDR撮影などを行ってくれるので、暗い部分がつぶれにくいですし、その他にも例えば懐中電灯などを使って、色々な角度から光を当てて、どのように印象が変わるのかを探ってみるのも良いでしょう。
メッキパーツに人物や風景を映しこんで撮影するのも、ひとつのテクニックでしょう。自撮りもインカメラで撮るのではなく、このようにすることで、ほかの写真とは印象が変わると思います。これらディテールやライディングギアの撮影は、本当にどこでも撮影できるものですので、ちょっとした時間を作って、色々とチャレンジングな撮影を楽しんでください。
iPhoneをはじめスマートフォンでは、撮影後の写真を補正加工することができます。つい20年ほど前までのフィルムカメラ時代には、現像時などに細かい調整をしていたものですが、デジタル技術が進んだ今となっては、指一本で、様々な補正が可能となりました。そこで最初からiPhoneに入っている機能を使い、どのような加工ができるのかを見てゆきましょう。
まずは、加工するベースとなる写真を選びます。
写真で表示されているアイコンは、「自動補正」のアイコンです。これをオンにすると、露出、コントラスト、彩度などが自動で補正されます。これひとつでかなり引き締まった写真になります。
自動補正の隣のアイコンでは、「露出」調整を行うことが可能です。ここでポイントとなるのは、白飛びしたものはデータに残っていないので、あとから露出を引き下げても出てきません。それなのであらかじめ、標準露出か、ややアンダートーン気味で撮影しておき、あとから露出を引き上げるというのがベターでしょう。
「ブリリアンス」も露出加工のひとつなのですが、全体的に自然にハイキー、ローキーを調整することが可能です。パラメーターを過度に動かすと、インパクトの強い写真に仕上げられます。
先に紹介した「露出」が光の量を調整するものなのに対し、「明るさ」は写真全体の明暗を調整できるアイコンです。明るい写真、暗い写真、自分のイメージに合わせて調整してみましょう。
「ブラックポイント」は一番暗い場所を基準に、写真全体の陰影の濃さを調整することができます。参考作品の場合、黒いバイクに黒いヘルメットということもあり、より一層引き締まった印象を出すのに有効です。
「彩度」と「自然な彩度」があります。そもそも彩度というのは鮮やかさを調整するものであり、通常では彩度は全体の色に対して同じ量だけ鮮やかさを調整し、自然な彩度では、主に鮮やかさが足りない部分の色を調整することでバランスが取れるようになっています。なので、全体的に派手目、地味目という調整をするなら、「彩度」で調整。自然な雰囲気を保ちつつ、鮮やかさの調整を行うなら「自然な彩度」を用いれば良いでしょう。
「暖かみ」と「色合い」は、大きく写真の印象を変えるポイントとなってきます。暖かみを選び、プラス方向に調整すると全体的にオレンジっぽい暖色傾向の写真となり、逆にマイナスに動かしてゆくと、青っぽく冷たい感じに仕上げることができます。色合いを調整する際、プラス方向に移動させると紫っぽくなり、マイナスに向けると緑がかった写真となります。これらのしきい値を上手く調整して、イメージに近い色に仕上げてゆきます。
「シャープネス」と「精細度」は近しい機能です。どちらも引き上げると、画像はくっきりと鮮明なものになってゆきますが、一方でノイズも出てきます。逆に数値を引き下げると柔らかみのある写真に仕立てることができます。バイクなどの機械ものの写真の場合、素材感を出すために鮮明な写真にすることが多いですが、ツーリング先での風景写真などでは、逆に柔らかな写真とするために引き下げる場合もあります。
レタッチして仕上がった写真です。ここで紹介した加工のほかにもトリミングや角度調整をはじめ、様々なレタッチを行うことが可能です。加工アプリはたくさんありますが、iPhone標準アプリだけでもかなり手の込んだレタッチを行うことができます。それに、SNSのほとんどは、アップロード時に画像加工を行うことができるので、色々と楽しんでください。
最後に、この写真は講師役を行っていただいた増井カメラマンが、アメリカのドラッグレースで撮ったもの。これiPhoneで撮影しているのですよ。こんな迫力のある写真を撮れるカメラを皆さんは持ち歩いていることをお忘れなく。
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