【ホンダ XL750トランザルプ E-Clutch 試乗記】左手を休ませても冒険心は失わない 万能アドベンチャーにEクラッチという最適解!!

掲載日:2026年06月03日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男
衣装協力/Alpinestars Japan

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HONDA XL750 TRANSALP E-Clutch

2023年、多くのファンの期待を背負いながらXL750トランザルプが帰ってきた。名機の名に恥じない完成度で、多くのライダーから支持を集めてきた。そして2026年春、そのトランザルプがさらなる進化を遂げる。搭載されたのは、クラッチレバー操作を不要とするホンダ独自の電子制御クラッチシステム「Honda E-Clutch」。果たして、この最新デバイスは人気アドベンチャーモデルにどんな価値をもたらしたのか。その実力を徹底検証した。

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過度ではなく、もちろん不足さもない
絶妙なバランスがもっとも贅沢に思える

1978年に第1回大会が開催されたパリ・ダカールラリー。フランス・パリをスタートし、西アフリカのセネガル・ダカールを目指すという驚くほどの行程で開催されるそのレースは、「地球上で最も過酷なモータースポーツ」と呼ばれ、多くの人々を魅了してきた。

この舞台で勝利を収めることは、ライダーやドライバーにとっての栄誉であると同時に、市販車開発における高い技術力の証明でもあった。そして今回試乗したXL750トランザルプE-Clutch(以下、XL750トランザルプE)のルーツも、そんなパリダカにある。

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その源流となったのは、1986年と1987年のパリ・ダカールラリーで圧倒的な強さを見せたホンダのワークスマシンNXR750だ。そのイメージを受け継ぎながら誕生した初代トランザルプ600Vは1987年に登場。「アルプス(ALP)」と「越える(TRANS)」を組み合わせた“トランザルプ”の名の通り、舗装路から未舗装路までを快適に走破できる万能性で、多くのライダーの支持を集めた。

現在ではアドベンチャーやデュアルパーパスというカテゴリーが定着しているが、トランザルプはその先駆けともいえる存在だ。欧州を中心に進化を続けてきた一方で、一時はその名がラインアップから姿を消したこともあった。

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しかし2023年、世界中のファンの声に応えるかのように、新生XL750トランザルプとして復活。扱いやすさと快適性、そして冒険心を刺激する走破性を高い次元で融合させたそのキャラクターは、多くのライダーを再び魅了することとなった。

そして2026年、その万能アドベンチャーにホンダ独自の電子制御クラッチシステム「Honda E-Clutch」が与えられた。果たして、その進化はトランザルプの魅力をどう変えたのか。改めてその実力を確かめてみたい。

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ホンダ XL750トランザルプ E-Clutch 特徴

もはや選ばせることすらさせない
これぞホンダが出した答え

2023年に登場したXL750トランザルプは、2025年に早くもマイナーチェンジを受けている。

主な変更点は前後サスペンションのセッティング見直しに加え、ヘッドライトやウインドスクリーンの形状変更などだ。一見すると小変更にも思えるが、実際に走らせてみると、その効果は想像以上に大きかった。

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なかでも印象的だったのが足まわりの熟成である。オンロードでは、ブレーキング時の初期ストロークからコーナリング中の踏ん張りまで、タイヤの接地感がより伝わりやすくなったことで安心感が向上。結果として、ワインディングではタイヤの端まで自然に使える懐の深さを獲得していた。

一方のオフロードでも、サスペンションの応答性向上によって路面状況を把握しやすくなり、トラクションコントロール任せではない、自ら積極的にマシンを操る楽しさが増していた。試乗時には「よくぞここまで仕上げてきたものだ」と感心させられたことを覚えている。

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それから約1年が経ち登場したのが、今回試乗するXL750トランザルプEである。

最大のトピックは、もちろんホンダ独自の電子制御クラッチシステム「Honda E-Clutch」の搭載だ。私自身、CB650R/CBR650Rをはじめ、レブル250 E-ClutchやCBR400R E-Clutchなど、これまで多くの搭載モデルに試乗してきた。そのたびに感じてきたのは、「E-Clutchは単なる便利装備ではなく、新たなスタンダードになり得る技術である」ということだった。

そして今回のXL750トランザルプEを見て、さらに興味深く感じた点がある。それは、“E-Clutch搭載モデルのみ”をラインアップしたことだ。

従来であれば、マニュアルミッション仕様と並行販売するという選択肢もあったはずだ。しかしホンダはそうしなかった。ライダーに選択を委ねるのではなく、「トランザルプにはE-Clutchが最適である」という答えを提示してきたのである。

もちろん、その判断が正しかったのかどうかは実際に乗ってみなければ分からない。だが、少なくともこのモデルからは、Honda E-Clutchを次世代のスタンダードとして普及させようとするホンダの強い意思を感じずにはいられない。

果たしてE-Clutchは、もともと高い完成度を誇っていたトランザルプをさらに魅力的な存在へと進化させたのだろうか。その答えを探るべく、改めて走り出してみることにした。

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ホンダ XL750トランザルプ E-Clutch 試乗インプレッション

見たことのない景色まで導く
3段階で用意されたドラマ

XL750トランザルプEの実車を目の前にして思うのは、やはり車格は大柄だということだ。スペックシートを確認するとシート高は850mmとなっており、アドベンチャーカテゴリーとして考えると一般的ではあるが、それでも高い数値であるには違いない。

しかし、実際に跨ってみると体重によって前後サスペンションがしっかりと沈みこむため、足つき性は意外にも悪くないと感じる。

セルスターターを押し、エンジンに火を入れる。私も少々古い人間になってきたのかもしれないが、トランザルプといえばVツインを思い浮かべる世代のひとりとしては、今でも少し不思議な感覚がある。しかし現行モデルに搭載される755cc並列2気筒エンジンは、その違和感をすぐに忘れさせるだけの魅力を持っている。

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E-Clutchを搭載しているため、クラッチレバーを握ることなく、シフトレバーを下げて1速に入れる。そしてスロットルを優しく開けば、するすると、まるで自分でクラッチレバーをコントロールしているかのように自然に走り出す。

今回初めてバイワイヤとE-Clutchが組み合わされているのだが、これがとても効いている。

例えば、スロットルを大きく開きながらシフトアップをしてみたり、不意にシフトダウンを行うなど意地悪な扱いをしてみても、しっかりと回転数をそろえてシフトチェンジを済ませてくれるのだ。

ワイヤー式スロットルの車両でも、違和感はほぼないと言えるほど熟成度の高いE-Clutchだが、その制御が一段引き上げられたといえる感触である。

そんなE-Clutchではあるが、テスト車両を借用した当日に一回はやってしまうのが停止時に、ついクラッチレバーを握ることだ。30年以上クラッチレバーを操作し続けてきたことによる無意識的な反応だと自認しているが、これからの世代は、クラッチレバーの操作に対してどのように感じていくことだろう。などと考えながら、XL750トランザルプEを走らせていく。

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体躯は大柄ではあるが、アップライトなライディングポジションで、視界が広く、ハンドルの切れ角も広いため、市街地を走らせることも気持ちが良い。こういっては何だが、そこいらのクルーザーモデルで流すよりも快適である。

高速道路に乗り、エンジンのフィーリングをチェックする。XL750トランザルプEに搭載される並列2気筒エンジンは270度位相クランクとされておりVツインエンジンのようなトラクションを得ることができる。これは低回転でも効いており、一般道では3000~4000回転程度で十分なトルクを得られる。

ただしこのエンジンは、その上にドラマがある。まず6000回転を超えたところでサウンドが変わりより元気な特性を垣間見せ、さらにその上の8000回転から先は、突き抜けるような爽快感をもたらしてくれる。

E-Clutchシステム自体は、ストップ&ゴー中心の評価となることが多いと思うが、クイックシフター機能として捉えても、XL750トランザルプEのドラマチックなエンジンとの組み合わせは非常にマッチしていると思える。

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ワインディングロードへと進路を変える。

XL750トランザルプEの魅力は、決してスポーツバイクのような鋭さではない。ストローク量に余裕を持たせたサスペンションが路面のうねりを優しく受け止めながらも、コーナリング中にはしっかりと車体を支えてくれる。そのためライダーは余計な緊張感を抱くことなく、自然体のまま走りに集中できるのだ。

車格から想像する以上に旋回性は軽快で、フロントタイヤへ穏やかに荷重を乗せていけば、大柄なアドベンチャーモデルであることを忘れさせるようにコーナーを駆け抜けていく。

そして、その気持ち良さは未舗装路でも変わらない。

荒れた路面に進入してもサスペンションは落ち着きを失わず、加減速によるピッチングや路面からのインフォメーションを自然な形でライダーへ伝えてくれる。決して神経質ではなく、かといって曖昧でもない。その絶妙なバランスこそがトランザルプ最大の魅力だろう。

特筆すべきは、その万能性である。

高速道路では快適なツアラーとして機能し、市街地では扱いやすいコミューターとなる。そしてワインディングではスポーツモデルの一面を見せ、未舗装路へ進めばアドベンチャーモデルらしい走破性を発揮する。

どれかひとつが突出しているわけではない。しかし、どのシーンでも高い満足感を得られる。この懐の深さこそ、トランザルプが世界中で支持され続ける理由なのだ。

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E-ClutchによってXL750トランザルプは、左手の仕事量を減らした。しかし、それは操る楽しさを失うことを意味しない。必要であれば自らクラッチを操作し、積極的にマシンと対話することもできる。

つまりE-Clutchがもたらしたのは「省力化」ではなく、「自由度の拡大」なのである。

ホンダは今回、あえて通常のマニュアルミッション仕様を用意しなかった。それはE-Clutchこそがトランザルプに最適な答えであるという自信の表れなのだろう。

試乗を終えた今、その判断に異論はない。

元々のパッケージングに優れていた万能アドベンチャーは、E-Clutchという新たな武器を得ることで、さらに遠く、さらに自由な世界へとライダーを導く存在へ進化していた。

ホンダ XL750トランザルプ E-Clutch 詳細写真

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754cc並列2気筒ユニカムエンジンは、低回転域の扱いやすさと高回転域の爽快な伸びを両立したユニット。270度位相クランクによる力強いトラクションフィールも特徴だ。最高出力91PSを発揮しながら扱いやすさも兼ね備えており、今回のモデルではアルミ製スキッドプレートが標準装備され、オフロードでの安心感も高められている。

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フロントにはショーワ製43mm倒立フォークを採用。ホイールサイズは21インチとし、オンロードでの安定感とオフロードでの走破性を高次元で両立している。ブレーキはデュアルディスク+ラジアルマウントキャリパー仕様。2025年モデルで熟成された足まわりは、今回も高い完成度を誇っていた。

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2025年モデルでフェイスリフトを受けたフロントマスク。二眼LEDヘッドライトのイメージを継承しながら、よりシャープな印象へと進化した。ウインドスクリーンも形状変更が行われており、高速巡航時の防風性能は非常に優秀。長距離ツーリングでの疲労軽減にも大きく貢献している。

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スリムにまとめられたテールセクション。LEDテールランプとコンパクトなターンシグナルにより、現代的なスタイリングを実現している。左右に設けられた大型グラブバーは積載時にも重宝する装備で、タンデムライダーの安心感向上にもひと役買っている。

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リアには18インチスポークホイールを採用。オンロードとオフロード双方を視野に入れたサイズ設定となっている。アルミハイブリッドスイングアームとロングストロークサスペンションとの組み合わせにより、高速道路から未舗装路まで幅広いシチュエーションで安定した走りを実現している。

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クランクケース右側に追加されたHonda E-Clutchユニット。見慣れない張り出し部分こそが本システムの中核を担う装置だ。クラッチ操作を電子制御でサポートしながらも、ライダーによるマニュアル操作を許容することで、快適性と操る楽しさを高次元で両立している。

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視認性に優れる5インチフルカラーTFTディスプレイを採用。速度や回転数、燃料残量に加え、ライディングモードやHonda E-Clutchの状態なども分かりやすく表示する。Honda RoadSyncにも対応しており、スマートフォンと接続することでナビゲーションや通話機能なども利用可能だ。

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シート高は850mmとアドベンチャーモデルらしい設定。しかしシート前方を絞り込んだ形状とサスペンションの沈み込みによって、数値ほど足つき性は悪くない。前後方向の自由度も高く、長距離ツーリングからオフロード走行まで幅広いライディングスタイルに対応している。

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ラバーパッド付きのステップを採用。ゴム部分は取り外し可能となっており、オフロードブーツ着用時でも確実なグリップ力を確保できる。E-Clutch搭載車であってもシフトペダルは通常モデル同様に装備されており、マニュアルミッション車としての楽しさもしっかり残されている。

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リアサスペンションはホンダ伝統のプロリンク式モノショックを採用。ストローク量に余裕を持たせながらも、オンロードでの安定感とコーナリング性能を高いレベルで両立している。前後サスペンションのバランスは秀逸で、トランザルプの乗りやすさを支える重要な要素のひとつだ。

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左側スイッチボックスには、ホンダ現行モデルで広く採用される十字キータイプのマルチセレクターを装備。メーター表示の切り替えやライディングモードの変更などを直感的に操作できる。グローブを装着した状態でも扱いやすく、完成度の高いインターフェースとなっている。

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燃料タンク容量は16L。優れた燃費性能と組み合わせることで高い航続距離を実現している。カラーリングは精悍な印象を与えるマットバリスティックブラックメタリックのみの設定。シンプルながらもアドベンチャーモデルらしい存在感を放っている。

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シート下にはETC車載器や車載工具を効率よく配置。さらに多少の空きスペースも確保されており、車検証ケースや小物類程度であれば収納することができる。大容量とはいえないものの、ツーリング先で必要となる最低限の携行品を収めるには十分な実用性を備えている。

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