掲載日:2026年05月29日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之

SUZUKI V-Strom 250SX


Vストロームシリーズはスズキのアドベンチャーモデルに冠されたネーミングで、軽2輪クラスからリッターオーバーまで多彩な排気量で展開されている。最小排気量となる250ccクラスには、2017年に発売されたVストローム250と、今回試乗した2023年発売のVストローム250SXがラインアップされている。

先発のVストローム250はGSR250系の水冷2気筒エンジンを搭載し、タイヤサイズは前後17インチでオンロード寄りであり、安定感や快適性を重視したツーリングマシンとしての性格が強かった。それに対してVストローム250SXはジクサー250系の油冷単気筒エンジンを搭載し、フロント19インチ、リア17インチのセミブロックパターンタイヤを採用するなど、身軽さとオフロード走行も視野に入れたキャラクターとなっている。

車名についているSXとは「スポーツクロスオーバー」を意味しており、舗装路でのスポーツ性と未舗装路での走行性やタフさを兼ね備えたマシンであることを主張。外観も、Vストロームシリーズ共通の「クチバシ」デザインを継承して冒険心をくすぐりながら、街中にも溶け込む機能的で洗練されたイメージも盛り込んでいる。
搭載されるエンジンは単気筒SOHC4バルブ249ccで、冷却方式にはスズキ独自の油冷システムを採用。最高出力は19kW(26PS)で、これは2気筒のVストローム250よりも1kW(2PS)高い値となっている。装備重量は2気筒版より27kgも軽い164kgとなっており、数値だけ見てもかなり軽快な走りが期待できそうだ。

林道で枝などから手を守ってくれるナックルカバーやエンジンをガードするアンダーカウル、トップケースの装着に対応し荷物の積載にも便利なリアキャリア、スマホの充電に便利なUSBソケットなど、実用性の高いアイテムを標準で備えている点もうれしいポイントだ。

テスターの身長は170cmで足は短め。Vストローム250SXのシート高は835mmで、両足だとつま先がツンツン。片足でも少しお尻をずらして母指球まで接地、という程度だ。車体が軽めなので立ちゴケの心配はなかったが、不安な場合は25mm低くなるローシートもオプションで用意されている。
Vストローム250SXはフロントからフューエルタンク、シュラウドまわりなど、一見するとボリュームがあるように見えるが、実際はとてもスリムだ。それでいてVストロームシリーズ共通のクチバシデザインが効いていて、しっかりとアドベンチャーマシンであることを主張している。
またがって車両を起こすと、想像していたよりかなり軽い印象だ。ハンドルバーの幅は広めで上半身の前傾はほぼなく、ポジションとしてはオフ車に近い。シート高も835mmとこちらもオフ車並みだ。

一般道を走り出して最初の印象は「エンジン、意外とおとなしいな?」というもの。2気筒のVストローム250より加速感は力強いが、スロットルをガバと開けてもグイッと前に出るというより、あくまでジェントル。
だからといって決して遅いというわけではなく、いつの間にかスルスルっとスピードに乗る感じで、気が付けば交通の流れをリードしていることもしばしば。立ち気味のポジションは遠くまで見渡せるし、車体が軽めで素直なハンドリングもあって、渋滞気味の道路でも泳ぐように軽快に走れるのが気持ちいい。

郊外のちょっとしたワインディングを流してみると、ますますその身軽さが際立つ。勾配のきつい登りではパワー不足を感じる場面もあるものの、コーナー手前でペタリと車体を寝かし、リアサスの沈みと踏ん張りを感じながらヒラリヒラリと曲がっていくのがかなり楽しい。
フロントサスがオフ車のようにやわらか過ぎないので、ちょっとモタードマシンに近い乗り味にも思える。フロント19インチでセミブロックパターンのタイヤなので「違うだろ!?」という声も聞こえてきそうだが、オンとオフのクロスオーバーという意味では、それほど的外れでもない気がするのだ。

こうなるとオフロードでの走行フィールが気になるところだ。
そこで河原のフラットダートに乗り入れてみると、「これはかなり行けるぞ」という印象だった。もちろん純粋なオフ車よりも重めだしサスペンションはそこまでしなやかではないから、飛んだり跳ねたりガレガレやヌタヌタの道まで楽勝、というわけにはいかないが、フラットダートはもちろん、少々石が多めの路面でも意外とタイヤの食いつきがよく、楽しく走れてしまう。
車体バランスはほぼオフ車、最低地上高も205mmで2気筒のVストローム250より45mmも余裕があり、ABSの介入も遅めなため、ダートでもしっかり遊べる仕様になっている。

最後に付け加えると、高速道路での安定性の高さにも驚いた。強風の首都高速湾岸線を何度か走ったが、姿勢を乱されることはほぼなくとても安心して走ることができた。
このマシンを所有したら、「普段は日常の足として気楽に、休日は山に向かってワインディングからちょっとした林道へ。時には荷物を積んでキャンプツーリングもいいな」なんて、1台でマルチに楽しめるバイクライフが想像できる。パワーやスピード以外で、ここまで万能感にあふれたマシンは貴重な存在だ。

Vストロームシリーズ共通のクチバシを持つフロントビュー。スクリーンは小型で角度は固定だが、立ちが強く防風効果はそれなりにある。ヘッドライトは3列8個のLEDを採用。ウインカーはオレンジの白熱球タイプだ。

メーターはモノクロの反転液晶を採用。時計やタコメーターのほか、平均燃費や瞬間燃費、電圧なども表示できる多機能タイプだ。

ハンドル左側のスイッチボックスはきわめてスタンダードな配置だ。フロント側に少し見えている黄色いものはパッシングスイッチ。

ハンドル右側はスターターとキルスイッチのみのシンプルな構成。できればハザードを装備してもらいたい。

メーターの左側にはUSBタイプAのソケットを備えている。定格は5V2Aで、ハンドルバーにも近くスマホの充電には便利だ。

ナックルカバーを標準で装備。薄型だが長時間走行での快適性を高め、林道では小枝などから手先をガードしてくれる。

ジクサー250と同じ油冷の単気筒249ccエンジンは、軽くてスリムだが最高出力19kW(26PS)を発揮する。部分的にブロンズ色が配されており、高級感も漂う。

リアサスペンションは7段階のプリロード調整が可能。2人乗りや荷物の大小、ダートに入る際など状況によって調整できるのはありがたい。

エンジンを飛び石などから守るアンダーカウル(アンダーガード)を標準で装備する。小ぶりなのはエンジン自体がスリムなためだ。

シートはセパレートタイプでクッション性は悪くない。体格にもよるが、ポジションが直立気味のためお尻に体重が乗る印象だ。純正アクセサリーのトップケースに対応するリアキャリアは標準装備。

車載工具はタンデムシートの裏に収納されている。内容は緊急用としては必要十分なものだ。

リアシートはキーを使ってワンタッチで外せる仕組みで、オプションのETC車載器などを入れるスペースがある。フロントシートは車載工具でボルトを緩めて脱着が可能。

ステップには振動を軽減し、滑りを防止するラバーが装着されている。ペダル類はスチール製で、ブレーキ側にはガードも装備。

サイドスタンドの中ほどには長めの突起が設けられている。これの効果は絶大で、スタンドの出し入れがかなり楽だった。

バイブレ製のフロントブレーキは片押し2ポットで、ディスク径は310mmだ。タイヤサイズはオフロード走行も想定し、100/90-19M/C 57Sとなっている。

リアブレーキのディスク径は240mm。タイヤサイズは140/70-17M/C 66Sで、銘柄はMAXXISのMAXXPLORE。ブロックはそこそこ深いのでダートでの食いつきも悪くない印象だ。

テールセクションはスリムでスッキリしたデザイン。三角のテールランプはLEDを採用し、小ぶりながら被視認性は良好だ。







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