スズキ GSX-R250(1987)

掲載日:2016年09月02日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

SUZUKI GSX-R250(1987)
レーサーイメージ最強のGSX-Rシリーズ。その末弟は兄貴分譲りの
技術を使って、最も従順なオールラウンド的性格に仕上がっていた。

レプリカ+乗りやすさ

1980年代のスズキを代表するレーサーレプリカ、GSX-R。1984年からの400、1985年からの750に続き、GSX-R250は1987年の3月にデビューした。「R」の血統をストリートで、サーキットで見せてやれ!という意味を込めてカタログコピーもここでは「BORN IN CIRCUIT」から「BATTLE IN CIRCUIT」になった。

250クラスでも中軸になってきた4スト直列4気筒は、ご存知のようにスズキが先鞭を付けていた。1983年のGS250FW(GJ71A/B)と、1985年にその後継として出されるGF250/S(GJ71C)だ。これらはレプリカでない質実で乗りやすいスポーツだったが、世のレプリカ熱に応えてのGSX-R250(GJ72A)登場となったのだ。

GSX-R250は前2車がベースではなく、エンジンも車体も別物。水冷DOHC直4の基本イアウトは同じだが、直打式のバルブを2→4本としてスズキ伝統の2渦流式燃焼室TSCCを採用し、出力は250ccクラスの自主規制上限の45馬力。

49×33mmのボア・ストロークは当時のライバルだったホンダCBR250RやヤマハFZR250よりもショートストロークタイプだが、低回転から高回転まで、初心者に扱いやすエンジンキャラクターだった。気筒ごとオーバーラップを調整して充填効率を高めるSPES・4in1マフラーも扱いやすさと高回転時のパワーに貢献した。GS/GF同様に1ボディに2個分の通路を持つ2バレル式キャブを使ったものの、ここにライバルとの差はなかった。

フルカバードの外観はGSX-Rスタイルそのもので、登場時の広告では750/400/250を並べてシリーズ感を強調した。ヘッドライトも丸目2灯。霧や大雨の中でも見えやすいイエローバルブを採用することで独自性を確保した。

実際に乗ると、足着きはライバルCBR250Rよりは劣るけれど、FZR250よりは良かった。エンジンは低速から粘り、レスポンスが過度でないため扱いやすく、Uターンでのスロットルやクラッチ操作がラフでもバランスが取りやすかった。

細部からも気を遣った作りが分かった。例えばアルミ鍛造のハンドル。セパレート式でトップブリッジよりも下にバーがセットされるが、実際のポジションは緩やかな前傾姿勢になり、疲れにくくされていた。

ペダルはリアブレーキ/シフトともアルミ鍛造だが、スズキの特徴は形状にあった。ステップバーを跨ぐように配し、転倒時の破損を最小限にするオーバーステップタイプ。

フロントサスは上部にエアバルブをセット。走行条件やライダーの体重などで好みに合わせられる装備だ。リアサスは7段階でプリロード調整可能。メインフレームはツインチューブタイプだが、鉄製ならではのしなやかな乗り味が楽しめた。

クォーター=250ccクラスのフレンドリーさからか、柔らかなテイストを放つフルカバードボディは兄貴分より空力を意識していた。回転抵抗と騒音低減を狙った翼断面中空3本スポーク17インチホイールにセットしたタイヤは、400クラス同等の扁平ワイドサイズ。ひとクラス上のボリュームのφ38mmフロントフォークもライバルを圧倒した

そのほかの特徴として、リアシート下にはレインウエアが収納できるこの時にメーターパネルを支えるインストゥルメンタルスポンジがグレーから黒へ。サイレンサーは艶なしからありへ。ラジエーターの表面を銀色へ。サイドスタンド戻し忘れによる事故防止のために、出したままだとエンジンがかからないインターロック式へ変更した。この時同時に、1/2/3速ミッションをクロス化したSP仕様も追加された。

操縦性は素直で、むしろビギナースペースを確保。レプリカのスタイルが好みでも、実用には使い勝手も欠かせないわけで、1989年の2度目のマイナーチェンジでは荷掛けフックが増設された。ほかにはシート高低下やスリム化などで熟成が進んだ。

順序が前後したが、1度目のマイナーチェンジは1988年1月。ウインカーをGSX-R750と同じスモークレンズ&ビルトインタイプとした。当時スズキはさまざまな機種のウインカーをスモークレンズにしたが、被視認性改善のためもあって、後に再び一般的な色のレンズに戻した。

この時にメーターパネルを支えるインストゥルメンタルスポンジがグレーから黒へ。サイレンサーは艶なしからありへ。ラジエーターの表面を銀色へ。サイドスタンド戻し忘れによる事故防止のために、出したままだとエンジンがかからないインターロック式へ変更した。この時同時に、1/2/3速ミッションをクロス化したSP仕様も追加された。

操縦性は素直で、むしろビギナーに受け入れられやすい設定だったのが印象的だった。一般的な走行ペースではライバルよりも落ち着いてストレスなく走れ、最もツーリングしやすいレーサーレプリカだった。結果的にはGS250FWやGF250/Sで築かれた乗りやすさを、レプリカスタイルで実現したことになった。GSX-R250は最もフレンドリーな作り込みのレプリカという、隠れ名車だったのだ。

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