カワサキ GPX250R(1987)

掲載日:2016年08月05日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

KAWASAKI GPX250R(1987)
カワサキには大型バイクのイメージが強いが、250クラスに手堅い
定番を持ち続けている。今に続く250人気の原点が、GPXなのだ。

いわゆる定番を新構築

日本のバイク界では、4ストローク250ccの2気筒エンジンを搭載したモデルに、多くの名車が生まれてきた。その歴史で主役を務めてきたのは1960年代からずっとホンダだったが、カワサキもそれに迫るものがあった。

近年、とりわけこの10年近くを振り返ってみると、消えかかっていたそのマーケットを開拓し直し復活させたのは、2008年登場のニンジャ250Rであり、2013年の後継機、ニンジャ250だろう。ニンジャ250Rは元々は1990年のZZR250がベースで、そのエンジンや車体を活用したが、そのZZRは遡れば1987年のGPX250R。さらにその前身はカワサキ初の水冷4スト2気筒250、この欄でも紹介した1985年のGPZ250Rだった。

それ以前の空冷時代も、直4旗艦、GPz1100の流れるボディラインを持つ1983年の2気筒車、GPz250。さらにその前身にはZ1000MkⅡ譲りのスクエアデザインを持った、1979年のZ250FTがあった。そう、カワサキの4スト2気筒はFTがルーツで、これ以前は2ストのKHだった。

1970年代末にちょうどバイクブームが訪れて初心者もベテランも選ぶという手堅いクラスになった、250ccの4スト2気筒。この流れを改めて見ると、カワサキは、その都度の旗艦モデルのイメージも投影しながらユーザーが選びやすく、実用度も高いという手堅さを、このクラスのモデル群にしっかりと込め続けてきたと分かる。

これら250ツインは、初代のZ250FTから現在のニンジャ250までシリンダー並列、クランクは180度。360度クランクでは味わえない“ドルルルーン”とくるパルス感がアイドリング回転から高回転まで、不変なのだ。

“鳩サブレ”とも形容されるほどの先代、GPZ250Rの独創的なスタイルに対して、オーソドックスなフルカウルスタイルで登場したGPX250R(上)は、登場の翌年の1988年にマイナーチェンジしてGPX250R-Ⅱに。エンジン面の変更はないがフロントディスクブレーキをシングル→ダブル化。マフラーもブラックめっきに変更。250という排気量を表す文字を外し、アンダーカウルにNinjaのロゴを追加投入した。こうしてGPX250R-ⅡはGPX750R/400Rの4気筒兄貴分よりも高い人気を得た

今回焦点を当てたGPX250Rは、この歴史では水冷の2代目。ただ、前述のエンジン同様に、カワサキが堅実路線を改めて歩んだ点に特徴がある。GPZ250R時代には遊び心が強めに出ていたところを、質実方向へと修正したのだ。

他社が4スト250ccも4気筒、レプリカとするところを、2気筒のままで行く。バランサーを装備して4気筒に迫る快適性を確保していたし、スタイルは兄貴分の4気筒車GPX750Rを踏襲、レプリカスタイルではないけれど、スポーツ感のある路線。高い防風性を確保してレーシーな走りも意識はしつつ、ツーリングシーンでしっかりと活躍する。流行ではない、あるべき姿の具体化。

実際に乗ると、ほど良いハンドルの高さと幅を持ち、優れた防風性と相まって、どのライバルよりもツーリングシーンで快適だった。レプリカ系の4気筒であれば高回転まで回せば刺激的なパワーが取り出せる。でもツーリングの大半ではそこまでエンジンを回さないし、ギリギリのバンク角で走ったりもしない。低回転からの優れたドライバビリティがあればこそ、優れたツーリングバイクになる。2気筒を選んだゆえんだ。

タイヤは先代GPZ250Rから継続採用した前後16インチ。これにしても臨界点に達するといきなり滑り出すというフロント16インチの気難しい点は解消され、どのバンク角でもステア操作は終始軽く、高い接地感も味わえた。

こんな快適さと使い勝手の良さを作り込み、新たな250ccの定番手法を構築したGPX250Rだったが、レプリカ全盛という時代の勢いには逆らえなかった。出力自主規制でレプリカと同じ上限の45馬力を確保していてもスタイルがレーシーでなければ目立たなかった。バイク専門誌でない一般誌もバイクを取り上げるほどの当時、4ストなら250ccでも4気筒でなければならなかったという訳だ。

それでもZZR250にバトンを渡し、それが今のニンジャ250系の元になったのだから、GPXの志は間違ってはいなかった。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

GPZ250Rの高回転型並列2気筒水冷エンジンをベースに、より扱いやすい特性としたGPX250R。新設計鋼管ダイヤモンドフレームで、車体もさらにスリム軽量コンパクトに。スタイルも奇抜さやレーシーさを追わずに、ライバルを圧倒する重厚かつシャープなイメージのフルカウルを装備しカワサキ得意の好空力を求めた。ツーリングの必需品となるバンジーフック、グラブバー、センタースタンドも装備

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