ヤマハ XZ400(1982)

掲載日:2014年02月14日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

YAMAHA XZ400(1982)
’80年代初頭に生まれたXZ400は人気薄だったが、スタイルとメカニズムの独創性に溢れ、
ロングランの快適性では群を抜くものだった。

ヤマハ製ミドルBMWか!

販売台数的にはとても成功とは呼べなかったが、独創性という意味でヤマハXZ400は’80年代前期を飾る代表的なミドルスポーツだった。

デビューは1982年。まず’81年に同時開発のXZ550が輸出用として登場。横置き水冷70度DOHC Vツインをパイプバックボーンフレームに搭載。シャフト駆動と組み合わせて、リヤサスはカンチレバー(モノクロス)式を採用した。

552ccで64.4馬力を発生するこのXZ550は、直線的で力強いラインと明確な凹凸を取り入れた新しいデザイン手法のバイクで、既存のどのバイクにも当てはまらない新鮮なスタイルを特徴としていた。

そして翌’82年3月には、日本市場向けに排気量を398ccにスケールダウンしたXZ400がデビュー。同クラスのライバルと同じ45馬力を発生したが、このクラスのスポーツ車としては希なシャフト駆動を採用したこともあり、スポーツ車というよりスポーツ・ツアラーとして、ユーザーに認識された。

前後18インチホイールらしい穏やかな操縦特性と連動するように低回転では滑らかさとVツインらしい鼓動感を楽しませたが、ひとたびスロットルを開ければ水冷DOHCらしく高回転では胸の空く加速を見せつけた。

しかし、当時のミドルクラスは並列4気筒モデルの人気が他を圧倒しており、4気筒=ハイメカという図式の前で、XZの魅力は今ひとつアピールしきれなかった。

そのXZ400には、初代から約2カ月遅れでヤマハ専門店・YSP限定色仕様が追加され、ツートンカラーをまとうフルカウル仕様のXZ400Dがデビュー。Dはデラックスを意味するが、北米仕様ではXZ550Sあるいはビジョンという名前だった。ちなみにカウルなしモデルの輸出名はXZ550Rだった。

日本市場で販売されたネイキッドのXZ400は49.9万円だが、フルカウル装備のXZ400Dは57万円と価格的な差が約7万円と大きく、ただでさえレアなXZ400に対して、XZ400Dは一層レアな存在となった。

だが、今振り返れば、テイスティなV型2気筒エンジン、メンテナンスフリーで静粛性の高いシャフト駆動、高いウインドプロテクションのフルカウルで、しかも軽い前傾姿勢という図式の中型バイクは他に存在せず、あたかもBMW的思想に近いミドルクラスともいえたはずだ。

’83年3月にはXZ550Dが国内販売された。ナナハンというビッグバイクに対する強い憧れを持つ世の大半のライダーが大型二輪免許を取得して550ccという排気量を選択する例は希なことで、案の定、XZ550Dもきわめて少数の販売台数に終わった。

そんな先鋭志向のXZに搭載されたVツインエンジンはバルブ挟み角18度、ダウンドラフト吸気とスワール状の吸気となるYICS(ヤマハ・インダクション・コントロール・システム)併用とすることで吸気効率を高め、しかも一軸3ウエイトバランサーの装備で不快な振動を排除することに成功していた。カウル形状もヤマハワークスの空力ノウハウを導入し、前面投影面積の極小化と、車体の浮き上がり防止などを徹底追究しつつ、ラジエーター部分への積極的な冷却風導入ができるもの。

そしてフロントサスはセミエア式。前輪トレーリングアクスルとしてフルストローク時のラジエーターへの干渉を避けつつ、最適な操安バランスを確保。ハンドルバーだけではなくステップ、左右のチェンジペダルもジュラルミン鍛造を採用した。素材や機能を見ても大胆な意欲作だった。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

XZ400誕生当時はヤマハでもっとも多岐にわたるエンジン形式が混在した時代だったが、そのVツインエンジンのヘッド部の角を意識したデザインを筆頭に、ヘッドライト、メーターまわりやリヤまわりも含む、直線デザインと、大柄なタンクに見られるゆったりと立体感のある曲面の組み合わせは新鮮だった。このデザインは同時期販売のXS400/250にも採用されたが、主流になることはなかった

ヤマハワークスの空力技術を駆使した快適性とスポーツ性の両立を測ったフルカウルはFRP、ABS、ポプロピレンなどの複合品で、軽量・高強度を狙ったもの。水冷70度V ツインエンジンはこのXZシリーズのみ採用という結果に終わったが、バランサー装備の滑らかさと心地よい鼓動感、そして高回転の伸びというそれぞれで高いバランスを確保していた

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