『カスタムの真面目な話』

アドバンテージ流 Z系改造論 #04(クラッチ編)

掲載日:2014年03月05日 タメになるショートコラム集カスタムの真面目な話    

Text/Noboru NAKANISHI ( ADVANTAGE )

今回は、Z750FX-1、Z I/II 、Z1-R、MK-II 系のクラッチ周辺のお話です。

初期のZ系のクラッチは、非常に大容量だと言えるものです。さすが川崎重工業さんと言うべき安全率です。発売当時は、ホンダCB750が売れに売れまくっていた頃で、そのライバル車として真剣にぶつけてきたのが、Zの始まりです。

ご存じの様に、エンジンはDOHCのハイパワーモデルです。そういうところを見ても、現在のカワサキが“最速”と言う称号に、当時から拘りを持っていたことがわかりますね。そのため、エンジンも相当に強度を持たせたというところでしょうか。

当時はさほど参考にできるようなライバル車もなく、情報もかなり少なかったと言えます。結果的にオーバークオリティーに出来上がってしまった様で、アメリカでは今でもドラッグレースに使われているタフネスぶりには、本当に驚かされます。当時はそれほど安全率に掛けていたんですね。現在では徹底的なコストダウンと、過剰な品質や無駄な肉はそぎ落とされてしまう傾向にあるので、とても羨ましい時代だったとも言えます。

現在、消耗品は結構手に入るのですが、ハブやプレッシャープレート、クラッチハウジングなどは殆ど手に入りません。アメリカなどでは非分解の所までバラした状態から、リビルトと言う手法で組み直してしまいますが、クラッチハウジングなどは大きなプライマリードリブンギアがついているので、これらをバラして組み直す場合、国内メーカーでもセンター出しは相当に大変な作業です。正確な治具、及び工作ラインが必要になる事から、まともに組めるとは思えません。

そこでメーカーは、後続機種のZ1000JやZ1000Rのクラッチ一式をZ1系に組み込むよう、提案をした訳ですね。Z1000J/R系のクラッチは、Z1系のクラッチよりコンパクトで軽量です。クラッチ板の外周は、なんと直径で約5mmもコンパクトになっています。コンパクトになれば、フリクションの接地面積も小さくなるのですが、全く滑る形跡はありません。それほど以前の容量自体が、過剰に安全率を与えられていたということですね。非常に優れた物です。

このように、メーカーが違う機種の部品を移植するという事は通常考えられないことですが、これを可能にしてしまうのも、カワサキの設計思想が新しい車種に脈々と受け継がれているからに他なりません。正常進化している、と言えるでしょう。

このJ系のクラッチに交換すれば、レスポンスは良くなり、油温上昇も幾分か抑えられるなど、良い事だらけです。これをカワサキが全て公開して行なっているのだから、本当に素晴らしいと思いました。

近年のパーツ廃盤時期は短くなったと言われています。確かな事は分かりませんが、車両の生産終了後、7年は部品の保持義務があると思います。共通のパーツは何十年も残るものもあります。しかしZ系などは次々と40年に突入している訳ですから、さすがにもう、手に入らない物だらけですね。

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