『バイク乗りの勘所』

整備ミスをなくすために(その2)

掲載日:2013年12月02日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

前回の最後に“作業中の自分の姿を振り返る”と書いた。作業を振り返るのではなく、作業中の自分の姿を振り返る。ここがキモだ。使った工具や交換したパーツを頼りに、どんな作業を、どういう順序でしたかを思い出すのだ。ここで、まるで劇画の駒送りのように、すらすらと思い出せれば問題はない。思い出せないのは注意力が途切れた証拠。途切れる直前の駒に戻り、次にすべき(するはずの)作業ができているかどうかを“振り返り”ではなく、実際に“確認”すべし。

この“振り返り”による整備ミス(作業し忘れ)防止策を有効にするには、ひとつの作業を、決して途中でやめないことが肝要だ。ボルトを締めているシーンを思い出して“よし、あそこは締めた”と、O.K.を出すのだから、途中まで締めて(仮締めだけして)他の作業に移るなんてことをしてはいけない。どうしても仮締めと本締めに分けたければ、別の工具を使い、本締めだけ別作業として独立させればいい。あとで振り返るときに“別の工具”がタグになってくれるはずだ。

本末転倒かもしれないが、失敗を重ねるのも、整備ミスをなくす有効な方法のひとつ。過去の失敗ほど目立つタグはないからだ。自分の失敗を思い出すのは、だれしも気が進まないことだが、今回の整備の最後に全体を振り返るとき、ついでに過去の失敗を思い出し、同じ失敗をしていないかどうかを確かめるのだ。過去の失敗(多くは作業し忘れ)というのは、たいてい、忘れやすい作業だから忘れたのであり、同じことを繰り返している確率は高いという前提で振り返るべし。

こうした“振り返り”のあとは、もちろん、実車を前にした“確認”が必要だ。このとき、ただ漫然と各部をチェックするのではなく、作業のとき以上の注意力をもって確認に当たるべし。慣れたマシンで、つま先の感触がいつもと違うからミッションオイルの入れ忘れに気づくとか、水温計の針の動き具合が違うから冷却水の入れ忘れに気づくといった、間一髪で難を逃れたケースは、目だけでなく、身体中の感覚を研ぎ澄ませて“確認”に当たるべきことを物語っている。(続く)

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