『バイク乗りの勘所』

事故防止に加え、被害縮小の議論を

掲載日:2012年05月14日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

全国各地で、痛ましい交通事故が続発している。それらの報道に接して、他人事ではないと思ったのは、長距離ツアーのバスが高速道路の防音壁に突っ込んだあの事故だ。私自身、夜行バスをよく利用する…というだけでなく、あのテの防音壁や、あれと同様な凶器になり得る防護柵の類が、日本全国いたるところの道路脇に設置されているからだ。切れの悪い刃物で何かを切るとき、刃の速度を上げるのと同じで、速度が高くなれば幅 20cm の壁でも車体が切れる。

今のところ、バス会社の責任を問い、規制緩和によって登場したツアーバスの事業者に改善を指導するといったあたりがマスコミの論調である。それはそれで、事故をなくすために必要なことではあるが、それでも事故はなくならない。だから、事故をなくすのと合わせて、事故が起きたときの被害を小さくするべきである。もし、あそこに防音壁がなかったら、事故は防げなくても、何人も死者を出す惨事にはならなかったのではないか…と考えてみるべきだ。

バイクの場合、クルマよりも道路の端に近いところを走る機会が多いから、道端の構造物に接近・接触する可能性は高い。そして、中には、触れたとたんに転倒間違いなしといった引っかかりやすい建造物や、突っ込んだら最後、フロント回りの大破は避けられないだろうという構造物がある。いずれも、それを造った側は、バイクが接近したり接触したりすることなど、考えもしなかったのだろう。そうした想像力の欠如もまた、起きた事故の被害を拡大する遠因だ。

防音壁・防護壁の場合は、安上がりにいくなら、始点の脇に太めで曲がりやすいポールを1本立てておくだけで、あのバスは、あんなふうに裂けなかっただろうし、お金をかければもっといい方法はたくさんあるだろう。防護柵の場合は、アウトバーン風に、始点の端を徐々に低くして地中に埋めるのが良さそうだ。バイクの場合は、車体の不要な突起を減らす、クルマとの併走時間を短くする、なるべく見通しのよい先頭を走るなどの防護策・防衛運転に心がけたい。

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