『バイク乗りの勘所』

下道+フェリーの旅

掲載日:2012年05月07日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

ゴールデンウィークの前週、仕事で箱根に行ってきた。京都府最南端、奈良に近いところに住んでいるから、東に向かうときは、よく伊勢湾フェリーを使う。鳥羽まで走ってフェリーに乗り、伊良湖で降りて渥美半島を東に走れば、静岡県はすぐそこだ。わずか55分の船旅に、4,000円の航送料金(751cc以上のバイク+1名分。750cc までなら3,500円)は少々高い気がしないでもないが、京都~浜松間あたりの通常の高速料金と比べて、ベラボーに高いわけではない。

私にとって、高速道路は、ただの移動手段にすぎない。だから、どこかに急いで行くときに、他に方法がなければ仕方なく使うだけで、好んで走ることはない。もっぱら下道派である。先の出張も、伊良湖から先は国道42号~浜名バイパス~浜松バイパス~150号~1号をつないで、ずっと下道だった。好きなところで止まったり、気が向けば脇道に入ったりしながら、ゆっくり1日がかりで春の遠州~駿河路のソロツーリングを楽しんできた。

このルートでの個人的ハイライトは、もちろん、鳥羽~伊良湖フェリーと、船を降りたところにある伊良湖岬である。鳥羽のフェリーターミナルは、わずか55分とはいえ、これから船旅に臨むんだぞ…という旅情をかきたててくれ、船から眺める伊勢湾口の景色は変化に富んでおり、映画 “潮騒” のロケ地となった神島の前を通過すれば、ほどなく伊良湖に着く。ここは島崎藤村の詩に謡われた “椰子の実” が流れ着いた、太平洋に臨む温暖な地である。

海を見下ろす高台に、サザエの壷焼き、椰子の実ジュース、大アサリの網焼きなどを売る店があり、少し歩けば、伊良湖岬の白い灯台、恋路ヶ浜、日の出石門などの景勝が楽しめる。どうです? 行きたくなってきたでしょ? 関西から静岡~関東へ、関東から三重~関西へのツーリングに、あるいは中京地方のどこかからの伊勢湾周回ツーリングのルートに、旅情あふれるフェリーと伊良湖岬を加えてみては? 一時は廃止のうわさもあったが、今年も航行している。

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