『バイク乗りの勘所』

リザーバータンクの中

掲載日:2012年04月16日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

油圧式のブレーキやクラッチには、マスターシリンダーと一体、またはその近くにリザーバータンクがある。日本語では “リザーバー” という表記が定着しているが、これは英語の “reserve” がルーツではなく、仏語由来の “reservoir” から来ている。貯水池や貯蔵所という意味だと知れば “な~るほど” である。で、そのリザーバータンクのフタの裏側には、タンク内の液面が上下しても、内部の圧力が変化しないように、ちょっとしたシカケがある。

ちなみに、リザーバータンクを密閉してしまうと、液面が下がったときには上部の空気が負圧になってフルードが吸い戻され、ブレーキが効かなくなるし、液面が上がったときには上部の空気が正圧になってフルードが押し込まれ、ブレーキが効きっぱなしになる。それを避けるために、フタに空気通路(溝)を開け、液面が下がったときは溝から空気が入り、液面が上がったときは溝から空気が出、常にタンク内の圧力が大気圧と同じになるようにしてある。

しかし、ただ溝を設けただけではブレーキフルードが漏れてしまうから、フタの下にダイアフラムと呼ばれるゴムの薄膜を設けて、漏れを防ぎつつ、タンク内のフルードに大気圧をかけているわけだ。当然、ダイアフラムは軟らかい材質が望ましい。ところが、軟らかいがために、フタを強く締めすぎると、ダイアフラムの “縁” の部分がパッキンのようになり、空気通路をふさいでしまうことがある。こうなると、タンク内を大気圧に保てなくなる。

ダイアフラムとフタの間に樹脂製のセパレーターを入れ、セパレーターの表面に溝(空気通路)を設けるなど、トラブル回避の対策が施されているとはいえ、この溝が錆(フタの裏面が錆びやすい)で埋まっていたりすると、空気抜きとして充分に機能しなくなる。リザーバータンクに限らず、ひつとひとつの部品は非常によく考えて作られているが、それを生かして安全・快適に走るためには、構造の理解と必要に応じた点検・整備が欠かせないのである。

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