『バイク乗りの勘所』

カフェにバイク、バイクでカフェ

掲載日:2011年05月23日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

カフェレーサーという言葉があった。過去形なのは、レプリカの登場以後、ほとんど使われなくなったから。かつては国産車のカタログにも書かれていたのに…。カフェレーサーとは、カフェにたむろする走り屋連中が好んだ、レーサーを真似たスタイルのバイクのことだと、何かの本で読んだことがある。発祥はイギリス。1960~70年代のことだそうだ。そんな彼らが集まるカフェとは、おそらく、イギリスの下町の、アウトローな雰囲気に満ちた場末のカフェバーだったのだろう。

幸か不幸か、日本には、その種のカフェバーもなければカフェレーサーの伝統もない。でも、ガッカリするには当たらない。オシャレなカフェは日本にもたくさんあるし、カフェレーサーよりカッコいいバイクもいっぱいある。カフェは時間的に、バイクは空間的に、どちらも非日常的な自由(あるいは束縛からの開放)を提供してくれる気晴らし(英語のスポーツの語源とも言われる)の道具と捉えれば、両者が結びつくのは洋の東西、時代の今昔を問わないはず。

ツーリングの集合場所や休憩施設といえば、今や道の駅、SA、PA、コンビニなどが主流。確かに、わかりやすく、便利でもあるけれど、せっかくの休日に自慢のバイクを駆って、立ち寄り先が加齢臭ぷんぷんの道の駅や生活臭の充満したコンビニだけでは興醒めだ。そういったところの駐車場に集まるのは、ツーリングに名を借りた集団示威行動中の御一行様にお任せして、気晴らし=スポーツを求めるライダーには、カフェこそふさわしい。

ソロ、または数台の気心知れた仲間とのツーリングには、ぜひ、カフェでのくつろぎのひとときを採り入れたいものだ。嬉しいことに、最近、行政(おそらく保健所あたり)の頭が柔らかくなってきたのか、都会だけでなく郊外にも、オープンエアのテラスが徐々に増えてきている。郊外なら、駐車スペースにも不自由しない。そんな気の効いたお店を、知らなければカフェ探し、知っていればカフェめぐりなんてのも、初夏にふさわしいツーリングの形態ではなかろうか。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索