『バイク乗りの勘所』

なにもないところには、なにがある?

掲載日:2011年05月16日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

何もないところには何があるか…という、まるで禅問答のようなのが今回のテーマである。種を明かせば、何もない“はず”のところには、じつはたいてい空気があるのだ…という、当たり前の話。われわれ地球上の人間は、常に空気(地球を取り巻く大気)の中で生活している。だが、その空気は目に見えないので、空気以外に何もないところには、本当に何もないと勘違いしているだけで、ほぼ間違いなく、ちゃんと、空気が“ある”のだ。

ライダーにとって空気は、しばしば風という現象として、その存在をアピールしてくれる。風防のないネイキッドバイクなら、 50km/h を超えるあたりから風を意識し、100km/h を超えると空気の層を感じ、200km/h に近づくと、それはまるで壁のように、ライダーとバイクの前に立ちはだかる。何もないと思っていた眼前の空間には、じつは空気があり、その中を移動するときは、常に“ライダー+バイク”分の体積の空気を押しのけているわけだ。

その逆に、何かがあるところには空気がない…とも言える。上の例でいくと、ライダー+バイクのある空間に空気はない。しかし、それが走り去ったあとの空間には、何もなくなるのではなく空気が満たされるのだ。つまり、もともと何かがあって、それがなくなった空間には、そこを満たそうとする空気がまわりから流れ込んでくる。何気なくバイクを走らせているあなたの後ろに、空気は、休みなく流れ込み続けているのである。

同じことは、空気中で物が動くすべての場合に当てはまる。ピストンが下降するとき、そこにあった空気はどうなるのか。ピストンが上昇するとき、ピストンがあったところにどうやって空気が流れ込むのか。燃料タンクにガソリンを入れるとき、そこにあった空気はどこに逃げるのか、ガソリンを消費すれば、減った分の空間にはどこから空気が入ってくるのか。そんなことを考えながらバイクを観察すると、新しい発見がいっぱいあって楽しめますよ。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索