『バイク乗りの勘所』

オートバイの、左と右

掲載日:2011年05月30日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

オートバイもクルマも、多くの動物と同じく、外観的には左右対称に近い形をしている。もしも極端に左右非対称なら、オートバイの場合、コーナリングがとても難儀なものになるんじゃないか…と、想像すると笑えてくる。ところが、対称なのはあくまで大まかな外観であって、中身はそうではない。右手でフロントブレーキ、左手でクラッチを操作するし、ドライブチェーンは片側(左が主流)にある。サイドスタンドは、ほぼ例外なく左で、乗り降りは普通、左側からする。

クルマの右ハンドルは、前後2頭だての馬車の御者が、右手に持った鞭が1列の馬の右側を通るように右寄りに座ったなごりで、左ハンドルは、前後左右4頭だて馬車の御者が、右手に持った鞭が2列の馬の間を通るように左寄りに座ったなごり。狭い道の多かった島国イギリスでは2頭だて、広い大陸では4頭だてが多く、すれ違いの安全性を考えて2頭だては互いに相手を右に見る左側通行、4頭だては互いに相手を左に見る右側通行につながったという説がある。

とどのつまりは、右利きの人間が多いということだ。では、オートバイのサイドスタンドは? と聞かれると、左手や左足を軸に右手や右足を大きく動かして乗り降りし、押して歩くときも右手で向こう側に力を入れる…という、右利き由来の左立ちにより、車体左側にサイドスタンドを設けるようになったとか。右側通行の国でもサイドスタンドは左だから、使い勝手は変わらないが、道路中央に向かって傾いたバイクに中央寄りから乗り降りするのは、慣れないと少々コワい。

で、サイドスタンドによって車体が左に傾くから、湿式クラッチは右にしたくなる。停めているあいだじゅう、エンジンオイルに浸かりっぱなしになるのを防ぐためだ。そして、ミッションをコンパクトにまとめるためには、クラッチの反対側にスプロケットを取りつけるのが好都合なので左チェーンというわけだ。ハーレーがこれと逆配置なのはなぜか? ハーレー乗りの方には、経験上、おわかりだと思うのだが、いかがだろうか。

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