掲載日:2025年01月10日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
HONDA GB350C
先に発売されたスタンダードなGB350自体、とてもシンプルな外観であり、もともとクラシックな雰囲気を持ってはいた。そのバリエーションモデルとなるGB350Cは「The Standard Classical Motorcycle」という開発コンセプトのもとで、さらにクラシカルで重厚なたたずまいを強調したモデルとなっている。
スタンダードモデルと比較してまず目を引く違いは、大型化された前後フェンダーとカバーされたフロントフォーク、前後分割タイプとなったシート、水平基調のマフラー、リアフェンダー周りに配されたパイプ状のガードなどだ。さらによく見ると、タンクパッドを備えたフューエルタンクやヘッドライトカバー、FIカバー、タンデムステップホルダーなども新たに異なるデザインのものを採用しているほか、メーターの速度表示の文字もレトロなイメージのものに変更されているなど、大きなパーツだけでなく実に細かい部分まで、スタンダードモデルとは違っているのだ。
これら大小さまざまな変更によって、GB350Cはフロントからタンクを経てリアにいたるまで、なだらかに傾斜したプロポーションを持ち、ロー&ワイドなデザインと重厚でクラシカルな雰囲気が強調されたスタイリングとなっている。そのエレガントな姿はスタンダードなGB350とはイメージが一変したルックスとなっているが、それでいてGB350らしさもしっかり感じられるという、絶妙なさじ加減はさすがだ。
反面、前後のフェンダーやリアのガード類など、スチール製のパーツを多く使用しているため、車両重量はスタンダードモデルより7kg重い186kgとなっている。エンジンの最高出力は15kw(20PS)/5500rpm、最大トルクも29N・m(3.0kgf・m)/3000rpmと変わらないため、走りにどれくらいの影響があるのか、気になるところだ。
GB350Cの車両重量はスタンダードモデルよりも7kg増の186kgで、大型バイクほどではないにしろ、押し引きなどの取り回しは見た目よりも重量感がある。シート高は800mmで、スタンダードモデルと同じなので決して高いわけではないが、実際にまたがるとシートの幅とサイドカバーの張り出しのせいか、数値からくるイメージよりも若干だが高く感じる。ハンドル位置はすっと手を伸ばすと自然にグリップを握れるところにあり、ライディングポジションは殿様乗りになることもなく、ほんの少し前傾になる程度できわめてナチュラルだ。
エンジンをかけると、排気音はトルルルル……と軽く、スタンダードなGB350がスパパパッと威勢がよかったのに比べると控えめな印象だ。スロットルをあおってみても、マフラー形状の違いなのか、あくまで静かなイメージだ。加速感もジェントルで優しく、周囲を幅広く見渡せる立ち気味のポジションも手伝って、あくせく急がずにゆったりとした気分で乗るのがふさわしく思える。だからと言って決して街中で遅いわけではなく、一般道を3~4速で50~60km/hあたりで流すと、小気味よい動きとエンジンの鼓動も感じられて、最高に気持ちがいいのだ。車体が少し重いためなのか、スタンダードなGB350のようなヒラヒラした軽快さは抑えられているものの、振動の少ないエンジンとゆったり目の挙動は穏やかな海を行く船のようで、むしろ疲れにくく、どこまでも走りたくなる乗り心地となっている。これがこのマシンの魅力であり個性で、ロングツーリングならGB350Cのほうが向いているかもしれない。
少し気を付けたいのは停止状態からの発進時だ。低回転でクラッチをつなぐと意外にトルク感がなく、エンストしそうになる場面があった。大型バイクに乗り慣れているため、ついあまり深く考えずにクラッチミートをしてしまう筆者のせいでもあるので、これについては意識して少し高めの回転数で発進することに慣れれば問題ないだろう。
他にもある程度以上のギャップになるとガツンと突き上げがくるサスペンションなど、気になる点もあるし、スタンダードより10万円以上も高い価格も考えどころではある。しかし何よりも思わずうっとりしてしまうような美しいボディラインを持っていることと、総じてユーザーフレンドリーな乗りやすさが、小さなネガティブ要素をすべて帳消しにしてくれるのだ。排気量や馬力など関係なく、素直に「このマシンと暮らすと楽しいだろうな」と思わせてくれる魅力が、GB350Cにはあふれている。
アップめのハンドルバーやボディと同色のフロントフォークカバー、メッキ部分を増やしたヘッドライトカバーなどがクラシカルな雰囲気を演出している。
メーターパネルの速度表示はレトロな文字となっている。ギアポジションインジケーターや時計、燃料計などを備えた液晶部や右側のインジケーター類などの機能はスタンダードモデルと同じだ。
ハンドル左側はウインカーとホーン、パッシング機能付きのライト切り替えスイッチを備える。アシスト&スリッパークラッチの採用で、レバーは軽い力で引ける。
ハンドル右側にはスターター/キルスイッチとハザードスイッチを装備。グリップは樽型を採用している。
空冷単気筒OHC348ccエンジンは最高出力15kw(20PS)という値だが、ロングストロークで鼓動感が楽しく、十分実用的。しかも造形が美しい。
フューエルタンクにはタンクパッドを装備。タンク形状はGB350C専用のデザインで、容量はスタンダードと同じ15Lとなっている。
前後分割式でパイピングが施されたシートはGB350C専用のもので、座り心地もよく、クラシカルな雰囲気を盛り上げるデザインだ。グラブバーの形状もスタンダードモデルとは違う。
水平基調のキャブトン風マフラーや大型のスチール製リアフェンダー、専用設計のサイドカバーなども、クラシカルな車体デザインの大きな要となっている。
チェンジペダルはGB350シリーズ共通のシーソー式を採用。かかとでシフトアップできるため靴が傷まないメリットがある。
左側のタンデムシート下にはピン式のヘルメットホルダーを装備している。
ロック付きの左側サイドカバーを開けるとバッテリーにアクセスできる。交換や電源を取る作業は容易だ。
リアサスはプリロード調整が可能なタイプ。リアフェンダーの左右にはパイプ状のガードが配されている。
フロントフェンダーもリア同様にスチール製で大型のものを装備。ブレーキディスク径は310mmと大きく、シングルだが制動力は十分。フロントのタイヤサイズは100/90-19M/C 57H。
リアブレーキのディスク径は240mm。タイヤのサイズは130/70-18M/C 63Hで前後ともスタンダードモデルと同じだ。銘柄はダンロップのGT601を履く。
リアの灯火類。デザインはレトロだが、LEDを採用しているため被視認性も十分確保されている。
テスターの身長は170cmで足は短め。GB350Cのシート高は800mmで高くはないが、シートの幅とサイドカバーの膨らみのためか、数値の割に足つきはそれほど良くはない。しかし片足、両足ともに母指球までしっかり接地するため不安はなかった。
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