【ヒョースン GV300Sボバー 試乗記】クラシカルな雰囲気とスポーツ性能を併せ持つ韓国発の個性派Vツインクルーザー

掲載日:2022年08月08日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之

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HYOSUNG GV300S BOBBER

ヒョースンは韓国を代表するバイクメーカーの一つで、近年ではグローバル市場へと展開し、特に欧州で評価を高めている。そんなヒョースンが新たに日本市場に投入したのがGV300S BOBBER(GV300S ボバー)だ。これは2021年に先行して発売されたGV125S BOBBERと同じ車体を使い、295.9ccの水冷Vツインエンジンを搭載したモデル。その走りや魅力は一体どんなものなのか、実際に試乗して確かめてみた。

ヒョースン GV300Sボバー 特徴

無駄をそぎ落としたボバースタイルに
現代的なエッセンスをプラス

韓国の大手バイクメーカーであるヒョースンは、1978年にHyosung Machine Industry(暁星機械工業株式会社)の設立よりスタートした。その後日本のスズキと技術提携しOEM生産を行うなど生産能力を増大し、1987年に独自開発モデルの量産を開始。1994年にはヨーロッパへの輸出を始めるなど、着実な成長を続けてきた。日本には2002年からヒョースンモーター・ジャパンによる輸入販売が開始され、当初はネイキッドスポーツやスクーターなど多くの車種を販売展開していたが、現在ではクルーザーモデルに特化して販売を行っている。

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GV300S ボバーは先行して発売されていたGV125S ボバーと同時に開発が進められたモデルで、ほぼ同じ車体構成に排気量の大きなエンジンを搭載している。パワーユニットは水冷4ストロークSOHC8バルブ295.9ccのVツインで、最高出力は21.6kW(29.4PS)/8,500rpmを発生。日本仕様は排ガス規制ユーロ5に適合している。従来モデルでは75度だった前後シリンダーのバンク角を60度に狭め、DOHC4バルブだったものをコンパクトなSOHC4バルブに変更。シリンダーヘッドはダークシルバーに塗装し、あえて冷却フィンを設けることで見た目にも美しいものとなっている。

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フレームはセミダブルクレードルで、前方にはフレームラインに収まるようにラジエターが配され、水冷ながら違和感のないボディデザインだ。ちなみにエアクリーナーボックスやクラッチは排気量に合わせて125cc版よりも容量をアップ、トランスミッションも125の5速に対し、300では6速が採用されている。

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全体を見渡すと、ロー&ロングなボディにフラットなハンドルバー、ショートフェンダーにティアドロップタンクと、まさに無駄をそぎ落としたボバースタイルを実現している。表皮にダイヤカットを施し、クラシカルな雰囲気を持つシートやフォークブーツを装備した正立フロントフォーク、ブラックアウトされたリアのツインショックなども車体によくマッチしている印象だ。

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その一方で、単にクラシカルなだけでいなことにも注目したい。例えば今回お借りしたマットオレンジだと、ヘッドライトベゼルやフロントフェンダーにフューエルタンクと同じ色を使うなど、デザインに一工夫が見られる。またステアリングステム近くにUSB電源ソケットを備えていたり、メーターに液晶ディスプレイを併用するなど、現代的なエッセンスもうまく散りばめられているのだ。

ヒョースン GV300Sボバー 試乗インプレッション

外見からのイメージとは違い
スポーツライクな走りが楽しめる

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目の前で見るGV300S ボバーは、偏平率の低い太めのタイヤと低く長いボディ、その間には鈍く銀色に光るVツインエンジンと、どことなく“小さなスポーツスター”といったイメージが漂う。それでいてもちろんオリジナリティも感じさせる佇まいであり、実際にはタイヤサイズが前16、後15インチということもあって意外とコンパクト。跨って車体を起こしてみると、とてもスリムで軽く、初心者や小柄な人でも不安なく乗れそうなフレンドリーさがある。

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エンジンをかけると、太く低い音が響くが、そのリズムが「ドドッ、ドッ、ドドドッ」という不規則なもので、こちらもまた本家アメリカのクルーザーからのインスパイアとリスペクトを感じさせてくれる。

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クラッチをつないでゆっくりと走り出すと、低速の間はVツインらしい鼓動感を味わうことができる。ところがエンジンを3000~4000回転ぐらいまで回すと途端にエンジンフィールがモーターのように豹変し、サウンドも「グォー」という咆哮とも思える迫力あるものとなり、同時にかなりパンチのある加速を見せてくれる。車体がスリムで意外と小回りが得意なこともあり、混雑した街中であってもかなり機動的でメリハリの利いた走りが楽しめる。

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その後、郊外のちょっとしたワインディングに出向いてみた。乗り始める前はホイールベースの長さと太く偏平率の低いタイヤを装着していることから、コーナリングに関してそれほど期待はしていなかった。ところが、実際に峠を走るとクイックなハンドリングで回頭性が良く、中速域がパワフルなこともあって、かなりスポーティな走りを味わうことができるのに驚かされた。もともと無駄がそぎ落とされた軽量な車体に加え、低めで御しやすいハンドルとミッドコントロールのフットペダル位置もあり、ライダーが乗った状態での車体バランスがとても良く、ヒラヒラと車体を倒してキレのいいコーナリングを楽しめる印象だ。バンク角も深めでサスペンションの動きも良く、タイヤのエアボリュームもあるので乗り心地も悪くない。これらと野性味あふれるエンジンの吹け上がり方が組み合わさって、国産マシンともアメリカンクルーザーとも違う、独特で個性的なライディングフィールをもたらしてくれるのだ。

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普通二輪免許で乗れるVツインクルーザーとしても貴重な存在といえるヒョースンのGV300S ボバーは、クルーザー好きな初心者や女性はもちろん、個性的な乗り味を求めたり他人と被らないマシンを欲する人、ファッショナブルなマシンを求めるライダーにもお勧めできる、ユニークなポジションに立つ存在といえるだろう。

ヒョースン GV300Sボバー 詳細写真

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ヘッドライトベゼルはタンクと同色で、デザイン上のアクセントになっている。バルブは60/55wのハロゲンで、クラシカルな雰囲気に合った光を放つ。

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メーターはアナログの回転計に液晶パネルを組み合わせたタイプで燃料計と水温計は常時表示。ほかにギアポジションや時計機能もあるが、選択して一つしか表示できないのは残念だ。

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フラットなハンドルバーはアルミ製のテーパータイプを採用。ブラックカラーが引き締まった印象を強めている。

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左側ハンドルスイッチにはハザードを配している。前側にはパッシングスイッチも装備。

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ハンドル右側には四角いスターターボタンとレバー状のキルスイッチを備えている。グリップは中央が太くなっている樽型タイプだ。

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美しい形状のティアドロップ型タンクは容量12.5L。「Bobber」の立体エンブレムが付けられている。タンクキャップはキーを差し込んで回すとキャップごと外れる昔ながらのタイプ。

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ラジエターはフレームの前部にすっぽり収まる形で配置され、スリムな車体デザインを邪魔していない。

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エンジンはSOHC4バルブ、バンク角は60度だ。冷却フィンを持つダークシルバーのシリンダーヘッドは見た目にも美しい。

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幅広だが前方がスリムに絞られたシート。フロント部はダイヤカットが施されたスエード調の表皮を使用している。

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サイドカバー内に収納されている車載工具。最近のマシンにしてはかなりの充実ぶりだ。

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ラバー付きのステップやシフトレバー、ブレーキペダルはかなり重厚な造りとなっている。

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タンデムステップもラバー付き。ステーを含め、こちらもかなりガッチリとした造りとなっている。

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エアクリーナーボックスは排気量のアップに伴い、125cc版よりも容量が大きくなっている。

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タンクの前方左側、ステアリングステム近くにUSB電源ソケットを装備。ハンドル周りへの配線もしやすい位置だ。

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フロントブレーキは対向4ポットのキャリパー&ABSを備えたシングルディスク。ディスク径は270mmだ。タイヤサイズは120/80-16のティムソン製。

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リアのタイヤサイズは150/80-15で、フロント同様エアボリュームはたっぷり。ABS付きのブレーキはディスク径250mmで対向2ポットキャリパーを備える。マフラーは艶消しのストレートタイプだ。

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リアサスはツインタイプでプリロードを5段階に調整できる。周囲のボルト類を含めてブラックフィニッシュされており、高級感がある。

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ショートフェンダーに小さめのテールランプを組み合わせ、シャープな印象に仕上がっているリア周り。テール/ブレーキランプのみLEDとなっている。

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テスターは身長170cmで足は短め。GV300S ボバーのシート高は710mmと低く、両足でもしっかりと足の裏全体が地面に着くので安心だ。

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