【ヤマハ XSR900 試乗記】現代のカフェレーサーここにあり

掲載日:2022年08月02日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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YAMAHA XSR900

ネオクラシックモデルでありながらも、見る者に対しモダンな印象を与えるヤマハXSRシリーズ。その上位モデルにあたるXSR900がフルモデルチェンジ。電子制御システムを受け性能が大幅にグレードアップした新型に迫る。

スタイリングからして大幅な刷新、
それに合わせ中身も進化した

昨年、日本に先立って、欧州、北米で発表されていた新型XSR900が、2022年6月に国内マーケットでも登場した。ヤマハスポーツネイキッドのフラッグシップとなるMT-09をベースに、レトロテイストをちりばめたネオクラシックモデルであるXSR900は、従来モデルでも独特なスタイリングと高い運動性能を持っており、根強いファンを持っていた。

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今回は昨年フルモデルチェンジが施されたMT-09に沿う形で、全体的に手が加えられたモデルチェンジとなっており、新型MT-09の感触がかなり良かったために、XSR900の出来栄えも大変興味があるところ。まずは新型と従来モデルを比べた際の変更点から探っていくことにする。

ヤマハ XSR900 特徴

従来モデルとの相違点が、
新たなジャンルを切り開く

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新たな形状とされたLEDヘッドライトから続く、新型MT-09と同様の新設計となる軽量アルミフレームに、XSR900専用新設計リアフレームを合わせたボディラインは、確かにXSR900だと通じるものだが従来モデルとは印象が大きく異なっている。タンクやシートの形状など、より一層レトロテイストが強くなった感じだろうか。

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パワートレーンは従来の845ccから888ccまで排気量が引き上げられた3気筒エンジンが搭載されており、6軸センサーを新たに採用したことで、トラクションコントロール、リフトコントロール、スライドコントロール、ブレーキコントロールなど多岐に渡り車体の制御が行われるようになった。

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基本的には新型MT-09を踏襲している点も多くみられるものだが、ハンドルやシート位置の変更、新たなセッティングとされたフルアジャスタブルフロント倒立フォークの採用、バーエンドミラー、ブレンボ製ラジアルマスターシリンダーなど、細かなディテールから新型XSR900に込められたこだわりが伝わってくる。

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昨年登場した新型MT-09はサーキット、ストリートのどちらでも良い感触だったこともあり、フルモデルチェンジとなったXSR900にも多いに期待しながらテストを始めることにした。

ヤマハ XSR900 試乗インプレッション

オジサンホイホイなスタイリングだが、
本質は相当なスパルタン

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新型XSR900は今年開催された東京・大阪のモーターサイクルショーで参考展示されており、多くの来場者から好評を博していた。ヒーローカラーとして取り上げられているブルーの車体は、いわゆる80年代のゴロワーズカラーを連想させるものとなっており、それが”オジサンホイホイ”となっていることも一つの要因だ。しかし果たして今の若者にゴロワーズカラーが通じるかは不明だと考えている。そもそもターゲットユーザーが40~50代だからあえてのことだろうが。

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エンジンを始動し発進する。ハンドルはナローな形状なのだがバーエンドミラーを採用していることで、車幅は広い感じがする。それにステアリングの切れ角が少い。良く言えばスポーティ、ただUターンをする際などに忘れていると、すぐにフルロック状態になり、おっとっととなってしまうことだろう。

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エンジンはパワフルだ。1(強)~4(弱)のライディングモードが備わっており、ストリートを流すだけならば3で十分。1や2だとスロットル操作に対する反応が良すぎてかえってギクシャク感が目立ってしまう。ただ高速道路でちょっと気持ちを入れて走ると言うような場面では1、2のポジションは非常に楽しい。

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ワインディングもマッチングが良いステージだった。新セッティングが施されたというフロントフォークは、何も触らずとも良く働いてくれ、フロントの接地感をしっかりとインフォメーションしてくれる。逆にリアサスペンションは、若干動き過ぎると思える場面もあり、好みに応じてダンパーを調整したいと思えた。とはいえ、左右に車体を寝かせてコーナーをパスしてゆくのは快感であり、多幸感すら覚えるものだ。

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乗り出した当初、新型XSR900は、どこにポイントを置いて考えながら走れば良いのか悩んだものだった。それは制限速度以下の域ではフロントフォークからのピッチングが多少感じられたり(ネガなものではなく、あくまでもその先にある路面を追従する性能から来るもの)、かといってスロットル操作を過多にすれば大幅に速度オーバーをしてしまう。しかし色々とテストをした中で発見があった。ライディングモードを一番弱い4にセットした状態で取材時に同行したクルマと伴走したのだが、これがピッタリ合ったのだ。クルマの流れに合わせて走らせることが気持ち良い。これは大きなメリットだと思える。

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バイク、その中でも大排気量モデルとなってくると、クルマのペースと合わせて走るのはなかなか難しく、ストレスすら感じることもある。しかし一般的なクルマの流れに乗って走らせることにストレスを感じなければ、それこそ毎日乗って楽しいということになる。XSR900はファッショナブルなだけでなく、ストリートクルーズも楽しめながら、いざという時には強烈な走りを得られる本格スポーツネイキッドに成熟していた。

バイクは仕上がっている。後はライダー側が乗る際の恰好にも気を使ってあげたいところ。これが新型XSRのポイントかもしれない。

ヤマハ XSR900 詳細写真

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ストロークを延長し排気量888ccへと拡大された新型3気筒エンジン。ピストン、コンロッド、クランクシャフトなどすべて新設計となっている。低回転から高回転域までパワフルであり、フィーリングも良い。

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新型MT-09でもフューチャーされていた新たな技術で作られた鋳造軽量ホイールを採用。フルアジャスタブルタイプのフロント倒立フォークは新セッティングが施されている。

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剥き出し感満載のデザインとされた左右シンメトリーサイレンサーを車体下部にセット。これは新型MT-09と同様のもので、心地よいトリプルサウンドをライダーへと伝える。

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新形状ヘッドライトはLEDを採用。ケースやステーなどディテールのデザインにこだわりが感じられる。なつかしさがありながらもモダン、相反する両者を上手く纏め上げている。

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タンデム側がボリューミーな形状となり、従来モデルと大きく印象を変えているシート周り。高さは810mmと数値的には大きいものの、足つき性は良い印象。やや後ろ気味に座ることで、スポーティなライディングポジションとなった。

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フルカラーとなったTFT3.5インチメーター。トラクションコントロール、ライディングモード、シフトインジケーターが、一桁の数字表示であるために、どれがどの数値なのか迷うこともあったが、走りに遜色がある物ではない。

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スイッチボックスは新型MT-09と共通。ハンドル位置はMT-09と比べ低く、前方へセットされている。バーエンドミラーはヤマハ初の採用となった。

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シートが上から覆いかぶさるようにセットされたテールランプ。スタイリッシュでありながらも、他車からの視認性も高いテールセクションは、デザイナー陣のセンスが光っている。

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寝かされた格好で、リンクを介してセットされるリアモノショックは、動きが良くインフォメーションも多く、クイックリーでありながら、粘りのあるコーナリングを楽しませてくれる。

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ポジションを変更できるフットレストと、アップ&ダウンどちらも対応したクイックシフターの組み合わせは、いつ、どこを走らせてもスポーティな気分にさせてくれる。ヒールプレートの形状、大きさも良かった。

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MT-09と比べてホイールベースは延長されている。これはトレーサー9GTのスイングアームを採用しているからであり、リセッティングしたフロントフォークとの相乗効果で、安定性と軽快なハンドリングをもたらす。

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タンデム側のフットレストの動きも独特。これは、たたんでいる状態でのデザインを損ねないように考え抜いたステップで、パッセンジャーの足の置き場所も良い印象だ。

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上面を水平基調とし、丸みを帯びた形状の燃料タンクは、ネオクラシックモデルとしてのキャラクターを助長する大きなポイントとなっている。ゴロワーズカラーを連想させる車体色も魅力の一つだ。

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車体下部のフェンダーにシートオープナー用のキーシリンダーが備わっている。シート下には割とユーティリティスペースが確保されており、携帯電話や財布などを入れておくこともできそうだ。

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