【スズキ GSX1300R 隼(ハヤブサ) 試乗記】アグレッシブ&スムーズな性能は、まさしく正常的進化

掲載日:2021年05月26日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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SUZUKI GSX1300R HAYABUSA

地上最強のアルティメットスポーツバイクとして、世界中で高い人気を博した伝説の名機、「GSX1300R 隼」。約13年ぶりにフルモデルチェンジが施され、念願の新型隼が登場した。

デビュー当時から高い注目度を誇った隼
その人気は3代目となった今も変わらず

1990年代後半、国内のバイクメーカーは技術の粋を結集させた市販量産車の最高速争いを行っていた。その中でも爆発的な加速、時速300キロの壁をゆうに超える最高速、さらに高いコーナリング性能も備えたアルティメットスポーツバイクとして君臨した1999年の隼デビューはとてもセンセーショナルなものだった。まず一度見たら忘れられない艶めかしい有機的なスタイリング、そして他を凌駕する圧倒的高性能を誇る物だった。その運動性能の高さに目を付けたヨシムラジャパンは、隼をベースにしたスペシャルマシンで全日本選手権や鈴鹿8耐に参戦したことも知られている。

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欧州では加熱するハイスピードスーパーバイクマーケットに時速300キロリミッター装着義務など規制が掛けられる程だったが、すでにファン層は熱くなっており、2008年にはフルモデルチェンジを受けた2代目隼が登場。その後も継続して販売されてきたが、それから長い時間を置き、今年、ついに3代目隼が登場したのだ。世界中が注目する中、試乗する機会を得たので、詳報をお伝えする。

スズキ GSX1300R ハヤブサ 特徴

スタイリングから中身までキープコンセプト
待たせた期間の分、内容を煮詰めてきた

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かなり前から噂には上がっていたものの、なかなか詳しい情報が入ってこない中、今年初頭に突如として発表された新型隼。広報写真を見た際に、まずは隼らしいスタイリングでありながらも、しっかりと新しさを表現できていることに驚かされた。一方で徐々に明らかになっていったスペックなどの内容をみると、最新モデルらしい電子制御システムこそふんだんに採用されているものの、基本的に従来モデルを踏襲した物となっており、やや肩透かしを食らった感を抱いたことも告白しておこう。実際に周囲の業界関係者からも同様の声が聞こえていた。しかし、それはあくまでも机上の話、実際に乗ってみるまでは何とも言うことはできないし、触れてこそ意見を述べることができるため、我々のような職種が存在できるのだ。

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開発メンバーからは新型隼に搭載されるエンジンには、様々な案が挙げられていたと話が出ている。6気筒、過給機付き、大排気量などが想定され、走行テストまで行われたこともあったが、どれも隼という看板イメージとは異なる物であったこともあり、結果的にはコンセプトキープしながら入念なブラッシュアップが行われ、完成に至ったということなのだ。

スズキ GSX1300R ハヤブサ 試乗インプレッション

過給機でも6気筒でもなく、じっくりと熟成
その結果、さらなる官能的世界へと導いた

実車を目の前にし、一周よく見て回る。誰がどこから見ても即座に隼だと分かるデザインには、さすがと言わずにはいられない。自然に目に入ってくる「隼」ロゴのフォントさえも新しいものとされており、こういった細部のこだわりこそが、今回の新型の開発に心掛けられていたものだと伝わってくる。なおネットなど一部でその形状が話題となったシングルシートカウルはオプション装備として用意されている。

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エンジンを始動し、ゆっくりと走り出す。従来モデルと比べ装備重量は2kg軽減した264kgという数値となっているが、実際のところエンジンを停止した状態で取り回しをすると重く感じることには違いない、しかし一度走り出すと、それが急変したように軽く感じられるから不思議だ。大きな体躯や前傾姿勢を強いられるライディングポジションなどは、市街地での走行シーンなどではネガティブと捉えがちだが、乗車した感覚はコンパクトであり、前後タイヤの位置がつかみやすいので、想像以上に安楽に走らせることができる。トルクの出方もピーキーなものではなく、低回転域から、ぎゅっとパワーを絞り出す方向性なのでとても扱いやすい。なお、ライディングモードはA、B、Cのプリセット(フルパワー、スタンダード、レインと考えてもられば良いだろう。)と、パワーだけでなくアンチリフトコントロールやクイックシフトの設定、エンジンブレーキの効き、モーショントラックコントロールの5種の電子制御システムを細かく任意設定できるユーザーモード、U1、U2、U3が用意されている。

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エンジンやタイヤ、駆動系にしっかりと熱が入ったことを確かめてから高速道路へとステージを変える。初代、2代目のどちらもかなりの回数乗ってきたことがあり、隼の高速での素晴らしさを何度も体感してきたが、それに輪をかけて乗りやすく、安定しており、速い。まず空力がさらに進化しているフロントカウルからサイドパネルにかけて追加されたリブパーツが効いているのだと思うが、カウルに伏せた状態にすると、ライダーに風がほとんどあたる感じがしない。ハンドリングに関しては、オーバーステア気味と思えるほどにフロントタイヤが弧を描いてコーナーをパスしてゆく。安全マージンが高いとも考えられるが、しっかりと乗りこなすのは手強いという印象を受けた。

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2代目隼の完成度の高さは素晴らしいものだった。もはやこれ以上の性能はいらないと誰しもが感じていたことだろう。しかしバイク業界におけるテクノロジーの分野の進化は、他の例に漏れず日進月歩であり、ここ数年は従来モデルの乗り味に、やや古さを感じていたことも事実だ。そんな中、満を持して登場した新型隼はイメージを凌駕する素晴らしさがあったのだ。

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1/1000秒単位でバルブリフトの制御を行えるようになった現在の技術を使えば、さらなるパワーアップなども可能であるところを、あえて最高出力を抑えつつ、その分の余力を5000~6000回転の日常的に使用する回転域におけるパワーにまわしてるところなどは、スペックの数値では見えない部分でありながら乗れば確実に伝わってくる点であるし、隼のアイデンティティーとなっており、新型でも踏襲された5連メーターだが、走り出すと、前後ブレーキを使用時の入力具合、左右のコーナーリング時のバンク角、スロットル開度などをリアルタイムで表示することなど、ライディングを楽しむための付加価値的要素も加えられている。

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当初は、電子制御システムを細かく設定することができるユーザーモードが3つも用意されていることに疑問を感じたが、この新型隼に乗ってみて、長く付き合うことになるであろう1台だと感じ、そう考えると、例えば5年、10年乗り続けた際、使い方や自分自身のライディングスキルにも変化が現れ、それに合わせたセッティングを行うことができるのは、とてもメリットになると思えた。

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初代から2代目が発表されるまでに約9年、2代目から今回の3代目が登場するまでに約13年の年月が流れた。そう考えると、いつまで乗っても色あせないモデルであるし、長く乗れ、その分愛着も湧いてくる。あたらめて地上最強のアルティメットスポーツバイクとして登場した新型隼は、コストパフォーマンスも優れていると思う。個人的には、カウルやホイールなどをカーボン製とし徹底的に軽量化を追求し、さらにエンジン特性も過激なものとしたスペシャルバージョンを限定生産すれば面白いと思ったがいかがなものだろうか。

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スズキ GSX1300R ハヤブサ 詳細写真

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1339cc水冷直列4気筒エンジンは、扱いやすさを徹底的に追求した結果、ピーク時の出力とトルクは引き下げられたものの、実際には速くなったと感じられる。サイドパネルに取り付けられたメッキパーツは視覚的なワンポイントとなるだけでなく空力にも影響する。

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タイヤは隼専用に開発されたブリジストン・S22を採用。ブレーキはブレンボ社のStylemaキャリパーがセットされている。ドライ路面での性能の良さはもちろんのこと、雨天走行の場面にも見舞われたが、タイヤの感触をはじめ高い安心感があった。

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隼の特徴の一つとしても上げることができる左右2本出しのマフラー。ユーロ5もクリアしている上に、サウンドも心地良い。サードパーティからリプレイス品も出てくることが考えられるが、デザインのまとまりを考えると、ノーマルがベターに思える。

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中央のメインヘッドライトケースこそ、従来モデルを踏襲しているように見えるが、その脇のエアインテークやウインカーを兼ねるLEDポジションライト部分の形状など大きな変化がみられる。それでいながらもまごうことなき隼の印象を与えるのは流石。

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シート高は800mmとなっているが、数値以上に足つきは良く思えた。フラットかつ厚手のシートは、スポーツライディングにも長時間に及ぶロングツーリングにも適していると言える。パッセンジャーシートも座面が広く、タンデムツーリングも快適だろう。

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隼のアイデンティティーにもなっている5連メーターを新型でも採用している。中央に備わる液晶パネルに「11°」と表示されているのが見えるだろうか、これはサイドスタンドを使用している状態で、左に11°傾いていることを表す。このバンク角の他、スロットル開度やブレーキの入力度なども表示する。

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フォークとセパレートハンドルのセット部分や、トップブリッジ上の化粧カバーなど、コックピット周りも入念にデザインされていることが伝わってくる。なおオートクルーズ機能が標準装備となっているので、高速クルーズなどで是非活用したい。

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クラッチレバー操作をせずとも、シフトアップ、ダウンを行うことができる双方向クイックシフトシステムを採用。入力反応に対するモード設定が2パターン用意されているが、その違いは微妙なものに感じられた。

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20リットルの容量を誇る燃料タンク。ボリューミーではあるが、内ももで自然に挟み込める形状となっており、コーナリング時などに体も預けやすい。なおカラーはブラック、ホワイト、シルバーの3色を基本とし、アクセントカラーやホイールカラーを変更できるカラーオーダープランが用意される。

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フロント周り以上に大きくデザインが変更された感じのあるテールセクション。従来モデルでは縦長にセットされていたブレーキランプは水平方向に配置されたことで、見新しい印象を受ける。赤いウイングパーツのアクセントも効いている。

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ブレーキは前後連動システムを採用しており、フロントブレーキを作動させると、リアも合わせて作動する。リアブレーキは単体で使うことができる。190サイズのリアタイヤは、その太さを感じさせないほど、シャープな切り返しを楽しむことができた。

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ミラー形状、スクリーン、サイドリブなど、すべてにおいて、保安部品をつけたままでも最高の空力を追求して設計された新型隼。ライダーを包み込むかのように走行風を切り裂き、高速道路では最高の安定感を得られる。

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パッセンジャーシート下には、標準装備となるETC2.0の車載器がセットされているほか、多少の工具が収められている。ユーティリティスペースとするには少々狭い印象だ。

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