掲載日:2021年03月30日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
HONDA REBEL 1100 DCT
レブルシリーズのスタイリングは、シンプルでカジュアルな中に、低いシート高とライダーの股下でくびれを持たせたナロースタイルが基本だ。レブル1100はその共通イメージを踏襲しながらさらに重厚感をプラスし、迫力あるフォルムとなっている。パッと見たところでは250 / 500と同じように見えるが、ところどころにシリーズのフラッグシップとしてのこだわりが見える。たとえばフューエルタンクは他の排気量モデルに見られる下部の繋ぎ目となるフチがない「フランジレス製法」でより丸みを帯びたフォルムとなっていたり、カラーリングもエレガントなグロスカラーを採用。さらにさりげなくツートーンとすることで陰影を生み出し、造形に深みを持たせている。
フロントサスペンションのインナーパイプにはダークネイビーの酸化チタンコートを施し、高級感を演出。ボトムケースは2ピース構造で、ダンパーにはカートリッジ式を採用することで路面追従性を高めている。スイングアームはレブルシリーズの特徴である丸パイプ形状を継承しているが、パワーに見合うよう50.8mmという極太のサイズを採用した。リアサスペンションも別体式タンクを持つピギーバックタイプとし、スポーティな走りにも対応している。
エンジンは、1082cc水冷4ストロークOHC直列2気筒で、アフリカツインと同系のもの。これに、パワーモード、Hondaセレクタブルトルクコントロール(トラクションコントロール)、エンジンブレーキ制御という電子制御が組み合わされる。これらは「スタンダード」「レイン」「スポーツ」という3種のライディングモードによって最適な状況に設定されるほか、乗り手が任意に設定できる「ユーザー」モードも備えている。DCTモデルに関しては、そのシフトタイミングも最適に制御されるという。
このほかにもクルーズコントロールやグリップヒーター、USBタイプCソケット、ETC2.0車載機などを標準で装備し、まさに「全部入り」の盛りだくさん仕様だ。燃料タンク容量も13Lあるため、日常使用からロングツーリングまで、幅広いシチュエーションでライディングを楽しめるマシンとなっている。
レブル1100の実車を目の前にすると、ロー&ロングの車体はさすがにリッターオーバーマシンらしい重厚感がある。ところが、取り回しで押し引きしてみると、あれっと思うほどに軽いのだ。跨ってスタンドを払い、車体を起こしてみても「軽い!」と声が出るほど。アメリカンクルーザーというと、どっしり重くて鉄の塊のような車体という先入観があったが、それをあっさりと覆してくれた。スペック上でも、たとえばヤマハのBOLTの車両重量が252kgなのに対し、レブル1100はDCT仕様で233kg、マニュアルミッションなら223kgと軽いことがわかる。さらに700mmの低シート高とタンク後端が絞り込まれた形状のため、身長170cm、足短めの筆者でも両足がべったり。これなら小柄なライダーや大型バイク初心者でも不安が少ないはずだ。
ポジションに関しては、見た目のイメージよりもニュートラル。ハンドル幅はワイド目だが、ステップは足を投げ出すクルーザースタイルではなくミッドコントロールとなっており、自然なライディングポジションを取れるようになっている。
DCTモデルはクラッチ操作が不要なため、右手のスイッチでDモードに入れれば、あとはスピードに応じてバイクが勝手に最適なギアを選んでくれる。エンジンは直列2気筒だが、270度位相クランクによる不等間隔爆発のため、低速でのんびりと走ってもズドドドド……となかなかの鼓動感を味わわせてくれる。混雑したシティランにおいて左手でクラッチを操作しなくていい、というのは本当に楽だ。
リッターオーバーのエンジンを持つため、市街地での信号ダッシュが余裕なのはもちろんのこと、高速道路でもパワフルな走りを見せてくれる。特に4~5000回転以上にアクセルを開けると、まるで興奮した雄牛のような猛ダッシュで、ハンドルバーをしっかり掴んでいないと振り落とされんばかりの加速力を見せてくれる。ライディングモードは「スタンダード」で十分で、逆に「スポーツ」だとギクシャク感が目立つように感じた。ライディングモードとクルーズコントロールを上手く使えば、ストレスなく、かつ疲れずにクルージングを楽しめるはずだ。
郊外のちょっとしたワインディングに乗り入れて驚いたのは、そのバンク角の深さだ。クルーザーモデルはちょっと元気に走っただけでステップが接地することが多いが、このレブル1100は35度のバンク角を確保しているという。「スポーツ」モードにして走ってみると、前後サスペンションの路面追従性がかなり高いことや、ペダル類が操作しやすい位置にあることなどもあり、クルーザーの常識を覆すような、パワフルでスポーティな走りを楽しむことができた。
所有欲を満たす高級感とパワフルなエンジン、イージーライディングを可能にするDCTと、安全と快適性をもたらす電子装備の数々……これでメーカー希望小売価格が121万円(税込)となると、トータルで相当満足度の高いマシンと言えるだろう。
レブルシリーズの共通のフロントマスク。4灯のLEDヘッドライトの周囲にはリング状の光がアクセントを添える。ホンダ伝統のウインカーポジションも採用。
各種インジケーターをオフセットし、反転液晶を採用して見やすさを追求したメーター。ライディングモードやシフトポジションなども表示される。デザインはクロノグラフをイメージしたという。
グリップ左側にはモード&セレクトスイッチやグリップヒーター&ハザードスイッチ、DCTのパドルシフトなど多くのボタンが並ぶ。右の黒いレバーはパーキングブレーキだ。
右グリップにはDCTの切り替えスイッチのほか、クルーズコントロールのオン/オフ、速度設定スイッチなどを装備する。
フロントサスペンションのインナーパイプにはダークネイビーの酸化チタンコートが施され、高級感の向上と足元の印象を引き締めている。鍵穴はハンドルロックのもの。
エンジンは水冷4ストロークOHC4バルブ直列2気筒の1082cc。アフリカツインと同系だが最高出力は64kw(87PS)/7,000rpmで、トルク重視の中低速向けにリチューンされている。
リアサスはツインショックで、分離加圧式のピギーバックタイプを採用。リアブレーキのディスク径は256mmだ。
シートは前後独立し、前席はシングルサドルタイプでお尻をしっかりホールドしてくれる。パッセンジャーシートは簡単に取り外すことが可能。
シート下には約3Lの収納スペースを確保。また、3AのUSB TYPE-Cソケットも装備する。
シート下に収納されている車載工具はご覧の通り。最低限必要なものが入っている。
DCT仕様にはチェンジペダルがない(公式HPによればオプション設定もない模様)。ステップ位置はかなり幅広で、ニーグリップしようとすると若干内股になる感じだ。
ステップの内側には左右ともにガードが設けられている。慣れないと発進時、ついここに足を載せてしまうこともあった。
レブル250/500は前後16インチだが、1100はフロント18インチ。サイズは130/70B 18M/C 63Hで、ダンロップのD428を履く。ブレーキディスク径は330mmと大きい。
丸パイプ状のスイングアームは50.8mm径とかなり太め。リアのタイヤサイズは180/65B 16M/C 81Hとワイドなものを採用。
テールランプ周りはシンプルなデザイン。灯火類はすべてLEDとなっている。
ライダーは身長170cmで足は短め。シート高は700mmでレブル250/500よりも10mm高い値だが、両足でもかかとまでべったりと地面に足を着くことができる。
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!