【KTM 1290スーパーデュークGT試乗記】とんでもなくスポーティな大陸横断ツアラーだ

掲載日:2020年07月17日 試乗インプレ・レビュー    

衣装協力/KUSHITANI 取材・文/佐川 健太郎 写真/星野 耕作 

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KTM 1290 SUPER DUKE GT

KTMのラインナップの中で唯一スポーツツアラーのジャンルに位置付けられているのが「1290 SUPER DUKE GT(スーパーデュークGT)」である。GTとは“グランドツーリング”の略で、快適な長距離移動とスポーティな走りを両立したマシンのこと。これをKTMが料理すると、果たしてどんな味に仕上がるのか。2020モデルを試乗してみた。

KTM 1290スーパーデュークGT 特徴

LEDライトとTFTメーターに電制も進化

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KTMのスポーツネイキッド、DUKEシリーズの最上級モデルである1290スーパーデュークRをベースに、より長距離ツーリング性能を高めた派生モデルとして2016年に登場したのが1290スーパーデュークGTである。

具体的な装備としては、大型スクリーンや23ℓ大容量フューエルタンク、クッション性の高いシートと快適なライディングポジションが与えられ、さら電子制御にはライディングモードやトラクションコントロールに加え、前後連動ABSやクルーズコントロール、セミアクティブサスペンションなど独自の最新テクノロジーを導入。純正パニアのマウントシステムを採用するなど“旅バイク”としての性能が高められていた。

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2019モデルではマイナーチェンジにより、最高出力は従来の173psから175psへとアップ。高さ調整可能なハイスクリーンとともに「R」と共通イメージのLEDヘッドライトを採用した精悍な顔立ちとなり、サイドカウル内にはバンク角に応じてコーナーの先を照らすLEDタイプのコーナリングライトを新たに追加。メーターも6.5インチのTFTフルカラーディスプレイが採用された。また、ダウンシフターの他、前後連動ABSやトラクションコントロールもバンク角センサーを備えたボッシュ製MSR(モーターサイクル・スタビリティ・コントロール)にアップグレードされるなど、電子制御もさらに進化・熟成している。なお、2020モデルは2019を踏襲する形で、カラー変更のみとなっている。

KTM 1290スーパーデュークGT 試乗インプレッション

猛々しい風貌に反してとっつきやすい

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巨大なフューエルタンクに鋭利な刃物を思わせるヘッドライトやサイドカウルの造形、そしてステルス戦闘機のようなエッジの立ったボディワークなど、一見して只者ではないと分かるオーラが漂っている。風貌はまさにビースト、それも巨獣である。

しかしながら、乗ってみると印象はだいぶ違う。ライディングポジションは大柄ではあるが、ハンドル位置は近く、上体が起きたゆったりとしたフォーム。シート高も835mmとスポーツネイキッド並みで、Vツインらしいスリムな車体は足着きも悪くない。そして、取り回しはサイズ感から想像するよりだいぶ軽く感じる。意外にも第一印象はとっつきやすいのだ。走りもそう。全域で豊かなトルクを発生する75度挟角を持つVツインエンジンは、そのイメージとは対照的に穏やかでマイルド。鼓動も尖っていない。排気量1301ccとビッグクルーザーでもおかしくないキャパシティで、街乗りレベルから高速クルーズまで余裕しゃくしゃく。一定ペースで淡々と流すような走りも、とても得意である。

しかし発想がレース的なところがKTM

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と、ここまでは「GT」としての姿。忘れてはいけないのは名前の前半、「1290スーパーデューク」としての顔だ。ライディングモードを最強の「スポーツ」にセットして、アクセルを全開にすれば、最高出力175psの炸裂するパワーで背中をど突かれたように強烈に加速する。ただし、回転上昇は極めてスムーズでハンドリングにも影響を与えない。そもそも1290系の通称LC8エンジンはショートストロークの高回転型で、Vツインであっても変にガツガツドコドコはしていないのだ。そこに「Ready to Race」を標榜するKTMの横顔が透けて見える。つまり、味わいではなく、あくまでも走りの性能重視なのである。

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空力に関しても同様。いたずらに大きなカウルを付けて防風するのではなく、ヘッドライトと一体化されたコンパクトなサイドカウルと縦長のスクリーンによって空気の壁を切り裂いていく。よく見ると、スクリーン上部は左右に分かれていて、上体をあまり伏せなくてもライダーの肩越しに風を受け流してくれる設計になっている。ジャンルとしてはスポーツツアラーなのだが、空力ひとつとっても発想がレース的なのだ。

安全・快適に距離を伸ばしてくれる

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ハンドリングも巨体に似合わず軽快で、例えるなら兄弟車の1290スーパーデュークRを若干重厚にして、モーションをゆったり目にした感じだろうか。ただし、「R」は2020モデルで全面刷新されてフレーム構造も見直されているため、比べるとしたら2019モデルが近いと思う。

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一方、「GT」は従来からの1290スーパーアドベンチャー系の伝統的なトレリスフレームを踏襲しているため、やや腰高でガチッとした筋の通った剛性感があり、重心の高さを生かしたダイナミックなコーナリングが持ち味だ。実は以前、「GT」をサーキットで試乗したことがあるが、並み居る高性能スポーツネイキッドを余裕で追い回せるポテンシャルを見せつけてくれた。タイヤをハイグリップに換装すれば、さらに攻められると思った記憶がある。潜在的なスポーツ性能はやはり「R」譲りだ。

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そして、最新の電子制御がこのマシンの価値をさらに高めている。コーナリング対応の前後連動ABSとトラクションコントロールのおかげで滑りやすい路面でも鬼に金棒だし、シフトアップ&ダウン可能なクイックシフターとMSR(過大なエンブレによる後輪スリップを防ぐ)が難しいワインディングでのシフト操作の負担とミスを軽減してくれる。また、スイッチひとつで出力特性を変えられるライディングモードや、同じく乗り心地を最適化できる電子制御サスペンションが、あらゆる道での移動距離を快適に伸ばしてくれるはず。しかも安全に。

大陸横断ツアラーにスーパースポーツ並みの走りも求めたい。そんな欲張りな人へのKTM流の回答が1290スーパーデュークGTなのだ。

KTM 1290スーパーデュークGT 詳細写真

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最高出力175ps、最大トルク141Nmを発生する水冷75度VツインDOHC4バルブ排気量1301ccエンジンは1290スーパーデュークRや1290スーパーアドベンチャー系にも採用されるKTM最強のパワーユニット。軽量クランクにチタンバルブ、ツインプラグを採用。アンチホッピングクラッチを標準装備する。

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フロントブレーキはBrembo製モノブロック4Pラジアルマウントキャリパー&φ320mmダブルディスクを採用。前後連動コーナリングABSが強力無比かつ繊細なコントロールで乗り手をアシストしてくれる。

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エキゾーストシステムは腐食に強い軽量ステンレス製で、車体下にサブチャンバーを採用することで長さを抑えたコンパクトなレイアウトを実現。もちろんユーロ4適合だ。リアブレーキはBrembo製 2Pキャリパー&φ240mmディスクを採用。「R」同様のアルミ製モノアームがホイールデザインを際立たせる。

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コンパクトだが整流効果の高い新デザインのウインドスクリーンを採用。片手で9段階に調整可能なアジャスターを装備する。ヘッドライトは中央を分断するヒートシンクを挟んで左右6灯LEDタイプの「R」と共通デザインにアップグレード。サイドカウル内側にLEDコーナリングライトを新たに装備した。

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ステルス機のようなエッジを強調した樹脂製カバー内に大容量23ℓフューエルタンクを装備しロングライドに対応。ハンドルもセミアップタイプのバーハンドルでライディングポジションも快適だ。

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しっかりとクッションの厚みと面積をとったシートが長距離移動での快適性を確保。前後分割タイプでタンデムシートも本格的だ。グラブバーと純正パニア搭載システムを標準装備。

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WP製電子制御サスペンションを採用。セミアクティブタイプで積載負荷や路面状況に合わせて自動調整するだけでなく、スプリングプリロードや減衰力も選択可能で「コンフォート」、「ストリート」、「スポーツ」の各モードを手元のスイッチで簡単に調整できる。左側(白)がコンプレッション、右側(赤)がリバウンドを調整。

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リアショックもフロント同様WP製セミアクティブタイプを採用。KTMオレンジカラーのメインフレームは軽量かつ剛性バランスに優れる1290アドベンチャー由来のクロモリ鋼管トレリスタイプ。シートにつながるサブフレームはGT用に強化されている。

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6.5インチTFTフルカラーディスプレスを新採用。時計、気温、速度、回転数、水温、燃料残量、シフトポジションなどの基本情報の他、ABS、MTC(トラクションコントロール)、AWM(アンチウイリーモード)、ライディングモード、電制サスのモードなどを表示。手元のスイッチでモード画面を順次呼び出して瞬時に設定することができる。

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スロットル操作はライドバイワイヤーによる制御。キーレスによりメインスイッチは右グリップ下のスイッチでON。エンジン始動はキルスイッチと共用の赤いスイッチで行う。左グリップには各種モード切り換えなどを行うスイッチの他、クルーズコントロール用のレバーも配置。

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ステップ位置は3段階に調整可能。シフトアップとダウン両方の操作に対応するクイックシフターを標準装備。ワインディングだけでなく街中でもとても重宝する。

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