掲載日:2020年04月17日 試乗インプレ・レビュー
取材協力/MVアグスタジャパン写真/和歌山利宏、MVアグスタジャパン 文/和歌山利宏 まとめ/H&L PLANNING
MV AGUSTA BRUTALE1000 Serie Oro
MVアグスタのブルターレは、F4を基本としたネイキッドモデル(F3がベースのブルターレ800もある)だ。そして、今回、イタリアでいち早く試乗が叶った新しいブルターレ1000は、前作・ブルターレ1090の後継モデルではあるが、ただ排気量を1078ccからF4と同じ998ccとするだけにとどまらず、全くのオールニューとして開発されている。
その意味では、もはや現行型のF4がベースではなく、次期F4の先行型と言っても差し支えない。実際にも、充実した電子制御装置に加え、的を射た基本設計によって、高次元のコントロール性が実現されている。
フォルムこそブルターレ以外の何物でもないが、1090との共通部品は20%ほど、基本設計から大きく見直されている。
エンジンは、クランクケースの鋳造型こそ受け継がれるが、機械加工が異なり、フリクションロスの低減と潤滑方式の改善が図られる。潤滑方式はウェットサンプからクランクケース下部にオイル溜めを設けたセミドライサンプとなり、急加速時にも安定した潤滑を保てるものとしている。
フレームも前作とよく似たパイプワークながら、パイプの取り回しやパイプ外径、肉厚なども含め見直され、剛性バランスが改善されている。また、トラクションコントロール、ウィリーコントロール、ABSといった電子制御装置もコントロール性を重視し開発された。
試乗車は、限定版のセリエオロだが、普及版1000RRも性能や電子制御装置に差異はなく、オーリンズの電子制御サスも装備される。ただ、前後ホイールはオーロのカーボン製に対しRRはアルミ鍛造製で、その点がハンドリング面での違いとなる。
跨ってみると、マシンが意外なほど軽く、足着き性も良好。ただ、ハンドルバーはワイドで、ネイキッドとしては低く、前荷重で積極的に操ることを前提としている印象だ。
走り出すと、ハンドリングの素直さにまたまた嬉しくなる。ハンドル切れ角一杯での取り回しも、気負うことなくこなすことができる。軽くスラロームすると、軽快で、気持ちよく舵角が入ってくれる。これなら、普通にストリートスポーツとして楽しめるはずだ。
実際のコーナーでもフロントがニュートラルのまま、ラインをトレースしていく。電子制御サスもいい仕事をしてくれていて、濡れた路面でもしなかやかに動き、思い通りに姿勢変化してくれる。それでいて、強くブレーキングしてもしっかり踏ん張ってくれる。
エンジンに尖った印象はない。スロットルを閉じると自然な流れの中で回転が落ち、開ければスムーズに前へ出ていく。スロットルレスポンスのあまりのナチュラルぶりに、ますますリラックスした気分を保てる。アップダウン両効きのオートシフターも秀逸で、クラッチ操作なしでのスムーズなギアシフトと加減速が可能だ。
トルクは9000rpm過ぎのピークに向かってリニアに立ち上がるも、14000rpm辺りまでがフラットで唐突さはなく、208psも凶暴ではない。とは言え、この濡れた路面上において肝を冷やさせないのは、電子制御に負うところが大きいはずだ。
トラクションコントロールを最大に効かせた状態では、スロットルを開けていく高速コーナーでなぜか何も起こらない。でも、介入度を下げていくにしたがい、リアが細かく繰り返すスライドの幅が大きくなり、実際に発揮されるパワーも大きくなって、よりスピードに乗っていく。まるで、自身がグリップの限界でリアのスライドをコントロールしているような感覚である。
1速でフル加速を試すと、当然、トラコンによってトルクが制御され、ドライ路面でのような加速力は得られていないはずである。にも関わらず、8000rpmぐらいからフロントが浮き、わずかにフロントが離陸した状態が13000rpm過ぎまで持続する。強烈な加速Gが持続し、208psを思い知らされる。
新生ブルターレ1000の持つパフォーマンスネイキッドとしての凄さ、スーパースポーツらしいハンドリングだけでなく、ストリートスポーツとしての親しみやすさを実感させられたのだった。
スイングアームは1090から流用されるが、短くなったフレームのパイプワークを低く配置。キャスター角は1度立った24度となり、ホイールベースは23㎜短縮された1415㎜となった。
ブルターレらしい異形のヘッドライトはフルLED式。慣性計測ユニット(IMU)からの信号によって、バンク角に応じて照射角を変えるコーナリングライトを備える。
ラジエターの両サイドにモトGPマシンを思わせるウィングを装着する。スタイリングだけでなく、180km/hにおいて7kgのダウンフォースを発生し、ウィリー時の安定性に貢献している。
フロントキャリパーは、ブレンボのライジアルマウント・モノブロック式にあって最高位のスティルマ。ボッシュABSの9プラスを装備、コーナリングABSとアンチリアリフトアップの機能を備える。
オーリンズのφ43㎜倒立フォークは電子制御式。フォークトップに制御用の配線が見える。ステアリングダンパーもオーリンズの電子制御式で、速度によって制御される。
前後ホイールはカーボンファイバー製。多くの人が入手できることになる1000RRはアルミ鍛造製となるので、本インプレで書いた走りの印象とは、その点で異なる可能性もある。スイングアームは片持ち式だ。
リアショックユニットはオーリンズのTTXで、フロントフォークと同じく、走行状態に応じて減衰力が逐次電子制御される。
セミドライサンプとなったエンジン。ボアφ79㎜は現行F4と同じ。ブルターレ1090とも同じで、1090からストロークダウンされている。チタンコンロッドを採用、12.6から13.8に高圧縮比化するなど、大きく刷新されている。
フレームが鋼管トラス部とアルミ製ピボットプレートをボルト接合したコンポジットタイプであることは変わらないが、新設計を受けている。
インストルメンタルパネルは5インチカラーTFT式。4つのパワーモード、8段階トラクションコントロール、オンオフ可のウィリーコントロール、ローンチコントロールの状態も表示できる。Bluetoothを介しスマートフォンをダッシュボードに接続することもできる。
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