【スズキSV650X試乗記事】熟成のVツインを積むモダン・カフェレーサー

掲載日:2018年03月07日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川健太郎  写真・動画/山家健一  衣装協力/HYOD

スズキ SV650X ABS 試乗インプレッション

鼓動をともなった滑らかなエンジンの伸び感

スズキ SV650X ABSの試乗インプレッション

まず見た目がユニーク。ネオレトロの一派ではあるが、自分にはモダンなテイストに見える。そして失礼ながら写真で見るより実車のほうが断然カッコいい。鈍く光るメタリック調のカラーにも金属的な質感があるし、ビキニカウルも小ぶりだが表情豊かで、サイドカウルと一体で見せることで往年のロケットカウルの形が現れてくる。カフェスタイルに欠かせないセパハンも絞りや垂れ角も絶妙。シートもリヤ側は素材と色の工夫でシングルシート風に見せるなど、よく考えられている。よく見ないと分からないような、こうした地味なこだわりの中にデザイナーの美学を感じてしまうのだ。

スズキ SV650X ABSの試乗インプレッション

特筆すべきはエンジン。最近の国産では珍しくなったVツインは初代SV650から現行のVストローム650まで長きにわたって使われ続けてきた傑作エンジンだ。非常にトルクフルで4,000~10,000rpm過ぎまでワイドレンジかつフラットにパワーが出てくる。輪郭のはっきりした鼓動をともなった滑らかな伸び感が気持ちいい。2,000rpmの低速域でも味わいのあるパルスを楽しみながら流すこともできるし、さらにUターンのような極低速でも粘りがあって扱いやすい。

スズキ SV650X ABSの試乗インプレッション

これにはちょっとしたトリックがあって、発進や低回転時にエンジン回転数をわずかに上げてくれる「ローRPMアシスト」がサポートしてくれることも大きい。どうしてもストップ&ゴーが多くなりがちな市街地走行では大変便利なシステムだし、立ちゴケのストレスを低減してくれることは大いに有難い。ワンプッシュで始動できる「イージースタート」も含め“速く走るためではない”こうした一般ユーザーに寄り添った電子制御にスズキの良心を感じるのだ。

スズキ SV650X ABSの試乗インプレッション

軽快でナチュラルな走りが気持ちいい

スズキ SV650X ABSの試乗インプレッション

ライポジは見た目以上に前傾している。セパハンの末端がドロップして手前に絞られたスポーティな設定だ。故にSTDと比べてハンドルがやや遠めで、ハンドル切れ角も僅かに少ない。ステップ位置はSTDと変わらないが、シートのフィーリングはやや硬めでウレタンが少し薄いような感じ。シート高は何故かノーマルより5㎜高いが前部が絞られてスリムなので足着きは良い。

スズキ SV650X ABSの試乗インプレッション

ハンドリングはひと言で軽快だ。リヤタイヤが160サイズということで、通常の大排気量モデルと比べると細めであること、加えて車体を単気筒並みのスリムさに抑えられるVツインであることも相まっての軽さだろう。とりわけ、倒し込み初期の抵抗が少ない感じで、スッと寝かせると丁度いいバンク角に落ち着く。
車重は197㎏と特別軽くはないし、ホイールベースも1,450㎜と極端に短くはないためか、軽快さの中にも適度な落ち着きもあって走りにゆとりがある。コーナーリングも“パキン”と鋭く曲がるというよりは滑らかに旋回していく感じで、自分がイメージしたとおりのラインを描けるナチュラルさがいい。

スズキ SV650X ABSの試乗インプレッション

サスペンションに関してはやや硬めの印象を受けたが、これはシートのソリッド感と関係しているかも。あるいは寒さでサスペンションのオイルが固いせいかも。自分の感じ方なので確証はないが、ぱっと乗ってそう感じた。ブレーキはフロントがダブルディスクで素直かつコントローラブルなフィール。ガッツリ効くタイプではないが車体が軽いので必要十分だろう。ABSの介入も比較的早めで安心感がある。

スズキ SV650X ABSの試乗インプレッション

「X」はSV650の優れたキャラクターを継承しつつ、個性的なスタイリングとちょっとしたスポーツマインドで味付けしたモデルだ。実際にサーキットでもそこそこの走りができてしまうと思う。ワンクラス上の自分を主張したい人、街乗りから軽めのスポーツライディングまで幅広く楽しみたい人にもおすすめしたい一台だ。

スズキ SV650X ABSの詳細写真は次ページにて

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