
掲載日:2018年02月05日 試乗インプレ・レビュー
取材協力/本田技研工業 写真/ホンダ 取材・文/青木タカオ
アメリカホンダのスタッフが先導するテストライドは、およそ440マイル(約700km)の道のりを2日間かけて走るというものだった。出発前は真っ直ぐに続くフリーウェイを80mph(129km/h)くらいで延々と突き進むようなクルージング主体のものだと勝手に想像していた。というのもテキサスの高速道路といえば、全米1の最高制限速度85mph(137km/h)の区間もあると聞く。グランドツアラーなら、そういうシーンでこそ持ち味が発揮すると思っていたからだ。
ところがどうだ。案内されるのは片側1車線のカントリーロード、さらにはワインディングまで続くではないか。この巨体をどうやって操れと言うのだ……そう焦ったが、ゴールドウイングツアーは思いのまま動いてくれるではないか。ハンドリングにクセがなく、コーナーでは狙ったラインを外さない。車体は素直に寝ていくし、自在に操れてアグレッシブにライディングを楽しめてしまう。
まず、フロントサスペンションがいい。このフォーク、じつは従来のオートバイのようなテレスコピック式フォークではなく、4輪車によく見られるダブルウィッシュボーン式をホンダが二輪車用に独自開発したものなのだ。衝撃の吸収と転舵を操るパートを分担させたことで、大きな車体も何のその。負荷をいくら掛けようとも踏ん張り続けるし、それでいてステアリングフィールにストロークが干渉しない。大きな段差を乗り上げようとも、車体は落ち着き放っているといった印象だ。
もちろん硬くて動かないということは決してなく、走り出すと低い速度から柔らかくストロークしてくれ、乗り心地の良い前後サスペンションになっている。そして、どこからでもアクセルを開けていけるのは“シーン別ライディングモード”のおかげ。素のままでもトラクション性能は高いのだが、こちらの舗装は粗悪で荒れていて、なおかつ天候が不安定で雨で濡れているエリアもある。路面はスリッピーで、1.8リッターエンジンの強力なトルクを一気に掛けるのは、躊躇わなければならない。
しかし、トルクコントロールをONにしておけばタイヤの空転は食い止められた。ライディングモードは「ツアー」「スポーツ」「エコノ」「レイン」と4種あり、状況に合わせて手元のスイッチで選んでおけばいい。トルクコントロールの介入度、パワーフィール、シフトチェンジタイミング、プリロード、ブレーキを巧みに制御してくれる。
ゴールドウイングツアーでは、7速DCT(エアバッグも搭載)仕様車とスタンダードともいえる6速マニュアルミッション車のどちらかを選べるのだが、ライディングモードと相性がいいのは、クラッチレバー操作とギヤチェンジの要らないオートマチック感覚のDCT(Dual Clutch Transmission)設定車だ。ライディングモード任せのイージーライドは、今回のようなツーリングシーンではじつにありがたく、このコンフォート性こそ新型ゴールドウイングの真骨頂だと思う。
4月2日から新販売網のHonda Dreamより発売されるゴールドウイングツアー。ライディングはエキサイティングだし、車体はどこをとってみても上質感に満ちあふれていて、さすがはホンダのフラッグシップモデルと唸るばかりであった。
従来からのファンもきっと満足できるはずで、テキサスでの試乗会でも「聞きつけてきた」というベテランのゴールドウイング乗りがご自慢の愛車で見に来ていたが、「こんなのを待っていた」とのこと。「娘に会いにロスまでいつも走りに行くんだ。途中、ガソリンスタンドがないから携行缶に燃料を入れておくのは忘れない」と言っていたが、きっとまた新型に乗り換えて、広いアメリカ大陸をゴールドウイングで縦横無尽に走るのだろう。
そんなコアなファンからも早くも称賛の声が上がっている一方で、これまで大型バイクに乗ってこなかった若い人たちにもススメしたい。高性能で快適だし、スマホのアプリも使えるし、そしてなんといってもSFアニメに出てきそうなムードもいい。賢いところはたくさんあるが、取り回しに苦労しないよう「ウォーキングスピードモード」があって、駐車場での取り回しに苦労しないよう微速での前進&バックが手元のスイッチ1つでできてしまうのだ。もうオジサンたちだけに乗らせておくのは、もったいない!
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