
掲載日:2017年08月07日 試乗インプレ・レビュー
取材・写真・文/田宮 徹
フラットなワイドバーハンドルを採用するが、身長167cmの筆者がまたがると、ライディングポジションはやや前傾なイメージ。適度にリラックスでき、一方でスポーティな走りにも対応できる設定となっている。ハンドルバーは幅広だが、ワイドすぎるイメージはなく、積極的にマシンを操るのにちょうどよい印象だ。
ステップ位置は、シートに対して高めで、ステップバーに足を置くと膝は意外と曲がる。ただし、バックステップというわけではない。シート前側が絞られていることもあり、また車体が軽めであるため、足着き性に対する不安はない。
ハンドルを除いた車体はスリムで、また軽さも感じられることから、またがった瞬間から「これなら自信を持って操れる」という雰囲気がある。エントリーライダーやリターンライダーにも、これは大きな利点だ。エンジンは、MT-25に比べるとパワー&トルクが増されていて、2,500~3,000回転くらいでもなんとなく走っていけてしまう。
ただし、スポーティなライディングを楽しみたいなら、おいしいのは6,000回転から上。この領域から、力強さが増してくる。さらに、9,000回転を超えたところからひと伸び。スペックを見ると、最大トルクはちょうどこの9,000回転、最高出力は1万750回転で発生する。メーターにはシフトインジケーターが備わっているが、最高出力を発揮した直後の1万1,000回転で点滅する仕様となっている。
そもそもMT-25のベースとなったYZF-R25は、このクラスでトップクラスのパワーを狙って設計された。このエンジンをさらにボアアップしたYZF-R3用をベースとするMT-03のエンジンは、普通に市街地走行したり日本のワインディングを楽しむレベルにおいては、十分な性能と感じられる。もちろん、大排気量クラスと比べれば馬力ははるかに少ないが、その代わりに、シフトチェンジをしっかり繰り返しながら高回転域まで使うことができる。ベテランライダーが乗っても、操る楽しさにウキウキできるはずだ。
車体はそれほどカチッとしておらず、前後サスペンションやコーナリングの挙動にはやや不愛想なところもあるが、車重が軽いことから大きな問題には感じられない。突出している要素はないが、全体のバランスがよいという印象だ。旋回時は、ライダーにややハンドル舵角を感じさせながら、くるりと向きを変える。タイトなワインディングではとくに、優れたポテンシャルを発揮する。
MT-25と共通化され、車重すら同一となる車体は、バーハンドルのおかげもあって自在に振り回して乗れる。これは、タイトなワインディングだけでなく、市街地の移動などでも長所となる。ハンドルをいっぱい切ったUターンもお手の物。クラッチの操作もしやすく、ミスしてしまいそうなイメージが湧かない。
YZF-R3がABS仕様なのに対して、MT-03はABSを備えていない。これがさらなる車体の軽さにつながっている反面、ブレーキ操作にはより注意が必要だ。フロントブレーキのタッチはしっかりしていて、リアブレーキの操作はわかりやすい。ブレーキそのものはコントローラブルで、ワインディングの下りで後輪をロックさせかけたような状態になったときも、車体の軽さとバランスのよさがライダーに余裕をもたらしてくれるので、それほど焦る必要はない。
MT-25と比べれば、馬力は16%ほどアップ。わずかな違いと考えることもできるが、この少しの差がタンデムや高速道路の追い越しなどで効いてくる。カウルがないぶん、YZF-R3と比べると高速巡行は苦手だが、ワイドなバーハンドルのおかげで市街地の取り回しは上回る。つまりMT-03は、同じヤマハのシリーズで比べたときに、車検取得は必要だが余裕があり、カウルはないが自在感はあるというわけだ。
4機種のうちどれを選ぶかは、どのようなものを愛車に求めるかによって、当然ながら変わってくる。YZFとMTのどちらにするか、249cc仕様と320cc仕様のどちらをチョイスするか、ぜひ大いに悩んでもらいたい。
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