
掲載日:2017年07月16日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/山家 健一 衣装協力/HYOD
イタリアの国旗をモチーフにしたナショナルカラーに「aprilia」のロゴがこれでもかと言わんばかりに大きくプリントされた車体。戦闘機のようなスパルタンなデザインと炸裂するV4エンジンの咆哮。誰が見てもレースの世界からやってきた凄い性能を持ったマシンであることは一目瞭然だ。ある意味、その存在意義がとてもストレートに分かりやすいマシンと言える。
RSV4の真骨頂は、やはりV4エンジンだ。つい最近までアプリリアのMotoGPマシンもこのエンジンがベースに使われていたことからも、潜在的なパフォーマンスの高さは折り紙付きである。元々V4というレイアウトはレース用パワーユニットとして理想的な形と言われてきた。軽量コンパクトでマスを集中化しやすく、Vツインのスリムさとトラクション性能、直4の滑らかさと高回転パワーを併せ持ったエンジンとされている。
2017年モデルでは吸気ファンネルの改良やピストンの軽量化、バルブタイミングの最適化など少なくない見直しにより、ピークパワーは変わらないもののエンジンフィーリングはさらに滑らかに洗練された。もちろん、エンジンを空吹かしすると噛みつかれそうな迫力だし、カタパルトで射出されたかのような爆発的な加速力は健在だ。ただ、不思議なことにスロットル開けしなのツキはとてもマイルド。パワー特性も右手に忠実なリニアさがあって、ドライバビリティは非常に良い。よく考えればそれも当然で、扱いにくいマシンで世界タイトルを何度も取れるはずがない。
スーパーバイクレプリカと聞くと、気難しくて普通のライダーではとても扱えないと思われがちだが、実はそんなことはなく、特に現代のマシンは電子制御テクノロジーによって人間が苦手とする部分をきれいに補ってくれる。たとえば、前述のスロットル微開領域での繊細なコントロールや限界時のタイヤのグリップ感覚などだ。2017年モデルでは統合された電子制御パッケージ「APRC」がさらなる進化を遂げ、ライダーサポートがさらに手厚くなっている。
大きな変更点としては、コーナリングABSが入ったことで理論上はフルバンクでフルブレーキングが可能な設定となっている。もちろん、そんな真似は自分自身のリミッターが効いてしまって無理だし、ことさら公道では試すべくもない。ただ、こうした機能が付いているだけで大きな安心感になるし、実際に思いもかけぬパニック時などは安全マージンを大幅に高めてくれるはずだ。
ダウンシフターも便利なことこの上ない。クラッチを使わずにシフトダウンできるので、例えばコーナー進入に向けてブレーキングしながらギアを落としていく場合などでも従来のようにブリッピング(空吹かし)したり、半クラを長めに当ててエンジンブレーキを緩和させたりする必要がない。驚きなのはブリッパー機構搭載で勝手にブリッピングして回転数を合わせてくれる。さらにはスリッパ―クラッチがバックトルクを吸収してくれるので、コーナリング中に連続してギアを落とすことも可能なのだ。他にもクルーズコントロールによって高速クルーズでの快適性も高まっている。
最新のAPRCは3種類のエンジンマップや8レベルのトラクションコントロールと3段階のABSなどを含め、ここに挙げてもキリがないほど多様な設定が可能になっている。それをコントロールするのが左手元にあるスイッチボックスで、2017年モデルではそのデザインが刷新された。スイッチの配置は一見複雑に見えるが、主にはジョイスティックで操作できるので、慣れれば意外と簡単だ。また、セッティングの状態は大型のフルカラーTFTディスプレイによって表示されるので視覚的にも理解しやすく、ブレーキ入力やスロットル開度、バンク角などの各種パラメーターもリアルタイムに表示されるなど、まるでMotoGPマシンか戦闘機を操っているような雰囲気が楽しめる。
ハンドリングはこの上なくクイックでシャープ。ライディングポジションもハンドルが低くシートは高め、前後サスペンションは高荷重型でビギニングでの沈み込みも少ないなど、レーシングマシンそのものといった雰囲気。自分が知る限り、公道マシンの中でも最もスパルタンなキャラクターと言ってもいいだろう。その割り切り感がまた気持ちいい。
これだけのパフォーマンスを持ったエンジンと車体であるのにも関わらず、最新の電制パッケージによってライダーが楽に安心して乗れることが、RSV4 RFの最大のメリットと言えるだろう。
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